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第二章〜夏は嫌いだ〜

この作品はフィクションです。

「えー、今日で学校も終わり明日から夏休みに入るわけだが、お前らも分かっているとおり変なことをしないように」


テストから一週間。


今日から魔法高も夏休みに入る。


他のほとんどの学校は二学期制を採用しているらしいが、この学校は相変わらずというか昔と変わらずに三学期制になっている。


まあ三学期制の方が好きなんだけど。


薫は胸の内で1人言葉を漏らしていた。


「特にッ」


とそのとき、ビシッという効果音が聞こえてきそうなぐらいの勢いで、西条が薫を指さした。


「秋津 薫ッ」

「はい?」

「と、その愉快な仲間たちッ」

「俺たちはその他かよ!」


という結城の突っ込みを無視して、西条は言葉を続ける。


「お前たちは入学してから何かと騒がしいからな、特に気を付けるように」


と言われても、薫は巻き込まれてばかりなのだから気を付けてもあんまり意味がないような気がしていた。


「分かりました」


それでも一応、返事をする薫であった。


「分かればいい。それじゃあ期末テストの評価を返す。名前を呼ばれたら取りに来い。まずは秋津からだ」


名前を呼ばれた薫は席を立ち、評価を受け取りに行った。


西条から紙を受けとると、そこには綺麗にCの文字が並んでいた。


その中で3つだけEの文字があった。


「普通科目はいたって平均的にできていた。だが魔法基礎と魔法応用、それに魔法実技が目立って悪い。魔法実技は仕方ないとしても他の2つはどういうことだ?」

「この評価通り、出来ないってことですよ。俺は体を動かすタイプなんで座ってるのは苦手なんです」


薫の言う意味が分からなかったのか、西条は首を傾げた。


しかし「まあいい、次」と言ってさっさと切り替えていた。


そして全員に配り終わり、教室が感激と悲観に包まれているところに、西条の無慈悲な声が響き渡った。


「みんな知ってると思うがE評価が3つ以上ある奴は夏休みに補習があるからな」

「え……」

「マジ?」


同時に、薫と結城がフリーズした。


「お前さん……まさか」

「そういうお前こそ…」


2人は互いに結果を見せ合い、そしてため息をついた。


薫は魔法基礎、魔法応用、魔法実技。


結城は魔法応用、国語、魔法実技がE評価だった。


「国語がE評価って何だよ……」

「うっせぇ! そういうお前さんも魔法の専門校に通ってんのに全滅じゃねぇか!!」

「ま!魔法なんて出来てナンボなんだよ!机上で評価する方がおかしいんだよ」

「それなら俺の国語だって日頃から喋って使ってんだから必要ないだろう!」

「はいはい、2人とも落ち着いてね」


言い合いが加熱してきた2人をなだめたのは、当たり前というかなんというか、もちろん歩夢だった。


「どっちにしてもドングリの背比べだよ」

「そういう北川はどうだったんだ?」


歩夢は自信ありげに「はい」と言って、評価の紙を差し出した。


だがそこには何故かDの文字しか並んでいなかった。


「分かってるとは思うけど私は狙ってD評価とってるから。本気を出せば全部Bはとれるよ」

「うっ……」

「ぐぅ……」


と2人して言葉につまった。


「じゃあそういうことだから補習頑張ってね」

「あ、でも」


そこで薫は何かに気付き、ニヤッと笑いながら歩夢に喋りかけた。


「北川って四階のプロテクショナーだから一緒に補習受けないとダメなんじゃないか?」


その言葉に、ピタリと歩夢の動きが止まった。


「さすがにこういうときだけ付いてこないってのは無しだよな、四階」

「まさしくその通りだ、お前さん」

「うぐぅ……」


と今度は歩夢が言葉につまる。


「ま、一緒の部屋で寝てるぐらいだ。きっと補習にも来るだろう」

「ちょっ! なんで秋津君がそのことを知ってるの!?」

「え? 冗談で言ったつもりだったのにマジだったの?」

「ふぇ?」


今度は可愛らしい声を出して固まった歩夢だったが、すぐに顔が沸騰したかのように真っ赤に染まった。


その口は何かを言いたげにパクパクと動いていたが、言葉が出てくることはなかった。


「おい、そこのうるさい3人」


そのとき、それまで黙って見守っていた(?)西条が3人に声をかけた。


「お前らはこの後少し残れ。北川は帰っても構わんが」

「はい、分かりました」


薫がそれに返事をすると、結城たちを見た。


「何か悪いことしたか?」

「いや、俺はしてねぇ。歩夢じゃねぇのか?」

「私もしてないよ。秋津君は?」

「俺も違うはず……」


3人は顔を見合せ、わけがわからないと首を傾げるのだった。






「補習免除!?」


生徒たちが帰り、人気のなくなった教室に結城の嬉しそうな声が響いた。


まああれだけ悲観していた補習が免除されるとなれば誰だってそうなるだろう。


「でも何で俺たちだけ免除なんだ?」

「俺の一存だ。お前たちは魔法実技がE評価だったが、本当はB……いや、Aはもらえるぐらいの実力があるからな」

「ほほう。分かっているではないか」


結城はいやらしく微笑むと、西条をツンツンと肘でつついた。


「調子に乗るなッ」


その頭に、西条の見事なチョップが決まった。


「ぐおぉ……いてぇ」

「まったく。少し誉めるとすぐこれだ」


西条は大きくため息をつきながら、結城を呆れたような目で眺めた。


「けどいいんですか?」


そんな西条に薫が喋りかける。


「何がだ?」

「勝手に補習を免除することですよ。俺たちにE評価をつけた学校が補習免除を認めているわけがないですから」

「んな細かいこと気にすんなよお前さん」


と、西条のチョップによるダメージから復活した結城が、薫の肩に腕をまわしながら言った。


「先生がいいって言ってんだ。それに従って損はねぇだろ」

「そうは言ってもだな四階、勝手に補習を免除した先生が学校から怒られるかもしれないだろ」

「バーカ、先生もそれぐらい分かって言ってるはずだぜ。なぁ、先生?」

「そうか。俺が怒られるのはまずいな」

「ほれ見ろ。……って考えてなかったのかよ!!」


と、結城の綺麗な突っ込みがきまったところで西条はワザとらしく微笑んだ。


「冗談だ。補習を担当するのは俺になっているから出席したことにしといてやる。これで問題ないだろ?」

「まあ……そうですね」


薫は何か釈然としないものを感じていたが、これ以上西条の好意を断るのは失礼だと思い、納得したふりをした。


「そういうことでお前たちは補習免除だ。まあ受けたいなら出てきてもいいがな」

「絶っっっ対に出てこねぇ!!」


結城は胸の前で大きくバッテンを作ると、声高らかにそう宣言するのだった。






「と、いうわけでッ!」


この展開前にもあった気がする……


「第一回夏休み行動計画を立てたいと思います!!」


ここは寮の食堂。


そこにあるホワイトボードの前を陣取った結城は、デカデカとボードに”第一回夏休み行動計画”と書いた。


それだけでこいつが何を企んでいるのか丸分かりなのだが、まだあえて口を挟まない薫であった。


「今日から夏休みになったわけですが、俺たちは高校生……そう! 青春の真っ只中にいるわけだ!!」

「それでぇ?」


と、薫が非常にやる気の感じられない返事をする。


「その俺たちが青春を謳歌しないでどうする! そうだろお前さん!?」


だが結城はさらにヒートアップし、薫に話をふってくる。


薫は「知るかよ」と冷たく言い放ち、ツンとそっぽを向いた。


「かぁ〜。ダメだね、お前さん。学生は遊ばなきゃいけないんだぜ?」

「学生の本分は勉強だろ。都合良く解釈すんなよ」

「バーカ、勉強すんのは良い子ちゃんだけでいいんだよ。バカはバカらしく遊ぶのが一番。そう思うだろ、東雲?」


結城はそれまで黙って事の成り行きを見守っていた詩織にいきなり話をふった。


いきなりの問いかけに詩織は一瞬だけ驚いたあと、うやうやしく「うん、そうだね」と言った。


「ほらな、お前さん」

「どこがだよ。今の詩織すっごい不自然だったぞ」

「それでもいいから遊ぶんだよ。いや、遊べッ!!」

「何でお前の言うことを聞かなきゃなんないんだ。俺は別に青春を謳歌しなくても問題ないし、それに夏はそんなに好きじゃないんだ」

「ほう、そいつぁ初耳だ」


本当に嫌そうに喋る薫とは対照的に、結城はなおもおどけたように言う。


薫は諦めたのか、「はぁ」と大きくため息をつくとおもむろに席を立ち上がった。


「どうした?」

「興が乗らない。遊ぶならお前たちだけで遊んでこい」


薫は後ろ手にそう言うと、さっさとどこかへ歩いて行った。


「興が乗らないねぇ……どういう意味だ、歩夢?」

「あんたって本物のバカよね、感心しちゃうわ」

「お前には聞いてねぇよ、不満面ッ」

「そういう過去の話を引っ張ってくるところが器量が乏しいのよ」

「うっせぇ!…歩夢、器量ってなんだ?」

「はぁ……」


桐埜は大きくため息をつくと、薫に続いて席を立ち上がった。


「なんだあいつ?」

「はぁ…」


さらに歩夢も。


「な、なんだ?」

「むぅ……」


そして詩織まで。


「な、なんだなんだ?……って、何で東雲はあんなに悩んでんだ?」


奇しくも、結城の語学力の低さが垣間見えた瞬間であった。

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