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第六話

北天に生まれし武神


――戦いの中でしか自分を証明できなかった少年神の物語


北方天界、多聞宮。


天界には四方を守護する

四天がいた。

東を守る持国天。

南を守る増長天。

西を守る広目天。

そして北を守る多聞天。

多聞天は四天の中でも最も厳格で、最も強く、最も孤独な神だった。


その多聞天に、ひとりの御子が生まれた。


名を――毘沙門。

生まれた瞬間から、彼の体には戦の火が宿っていた。

赤子の泣き声は雷鳴のように響き、握った拳からは火花が散った。


 多聞天は言った。

「この子は、北天を継ぐ者だ」

毘沙門は幼い頃から父の戦いを見て育った。

魔族が天界を襲えば、多聞天は宝棒を振るい、雷のごとき一撃で敵を粉砕する。


毘沙門はその背中に憧れた。

「父上のように強くなりたい」

しかし父は厳しかった。

「強さとは力ではない。心を鍛えよ」


だが幼い毘沙門には理解できなかった。

「敵を倒すには力が必要だ」

その思いは年を重ねるごとに強くなっていった。


やがて彼は決意する。

父を超える強さを手に入れるために。

毘沙門は天界を離れ、神々すら恐れる修行の地、ヒマラヤ氷峰へ向かった。


吹雪は刃のように肌を裂き、氷は骨を凍らせ、夜は魂を蝕む。

それでも毘沙門は歩みを止めなかった。


まだ知らなかったのである。

真の強さとは何かを。

そして、その答えが氷峰の奥深くで待っていることを。

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