ゲームセンター
掲載日:2026/02/11
小さいころから通っているゲームセンターの入り口には、イメージキャラクターのオブジェが三体、並んで立っている。合成繊維の毛は湿気を吸って逆立ち、色褪せた目はガラス玉のように光を返していた。
その中の一体だけは仕掛け物で、人が近づくと内部からぶぶっ、と低い音がして、がく、がくと首を振り、「いらっしゃいませ」と割れた声を吐き出す。ぴ、ぴ、ぱ、と筐体の電子音に紛れ、その声はいつも半拍遅れて耳に届いた。
最近はゲームに夢中で、そんなものを気にする余裕もなかった。ある日、待ち合わせで入口に立ち、久しぶりにそれを正面から見た。動かない。空調の風で毛先がさわさわ揺れるだけだ。静寂が耳に詰まり、きーんとした。
気になって検索をかける。店名、キャラクター名、動く人形。どれを組み合わせても、それらしい情報は出てこない。
チェーン店のはずだ。後日、別の店舗に行くと、そこには二体しかいなかった。店員に聞こうとしたが、なぜか言葉が出なかった。笑顔の間に、ぽっかり空いた空間。床には、ずずっ、と何かを引きずったような擦れ跡。
元の店に戻ると、三体は変わらず並んでいた。ただ、動かない一体の口元から、じわりと古い機械油の匂いが滲む。耳元で、かす、と息をこすった音がした。遅れて届くはずの声は、もう、すぐそこに、あった。




