5、好き宣言と不機嫌な幼馴染み
昼休みの時間、教室で机を向かい合わせてメグとのんちゃんとお弁当を食べていた。おにぎりをもぐもぐしながら、2人にお兄さんの格好良さを語った。
「金髪がキラキラしててさ、顔もイケメンで、いつも優しく話しかけてくれるの!穏やかなんだけど、大人の魅力も漂うっていうか」
「そんなにイケメンなの。一度会ってみたいわ。」
のんちゃんは苺ミルクのストローを吸いながら話を聞いてくれていた。メグが笑いながらのんちゃんに
「でもさー、今朝愛奈がこの話を杉本くんにしちゃったみたいでさ」
ブフオォォォ!!!ゴポゴポゴポ・・。急に吹き出したのんちゃん。しかも苺ミルクのパックからたくさん泡が出てきてる。ゲホッ!ゲホッ!!と激しい咳をして口の周りが汚れてしまったのんちゃんに急いでティッシュを渡すメグ。周りに居た子はのんちゃんを見てどよめいていた。
「なんて残酷な女・・・」
口の次に苺ミルクのパックを拭きながら、のんちゃんが私を非難するような目で見てくる。
「言っておくけど、蓮はマネージャーの美春ちゃんの事が好きなんだよ。多分あの2人付き合ってると思う!」
メグとのんちゃんは目を見合わせた。
「そんな話、聞いた事ない。」
「あのマネージャー、たしかにかわいいけどね。愛奈とは全くタイプが違うよね。」
とヒソヒソ話をする。
「とにかく、私と蓮はただの幼馴染みなんだから!た・だ・の!!」
放課後。メグとのんちゃんと教室を出ると、蓮が少し先の廊下に立っていた。
「あれー、蓮じゃん!」
「・・・。」
目は合っている。でも返事はない。中学生になってから学校で返事をしてくれる回数が減ったな。周りの人の目が気になるのかな・・・。私は視線を逸らして、そのまま通り過ぎようと思った。
「ちょっと待て。」
「・・・何?」
「話がある。」
メグとのんちゃんに待っててと言おうと思って振り返ると
「あたしたち、先に帰ってるねー!」
「頑張ってね、杉本くん。」
唐突にメグが横を通り抜け、のんちゃんは蓮に親指を立て、メグの後を追って行ってしまった。いや、のんちゃん、なぜ親指を立てたの?蓮の片眉がぴくっとした気がしたけど。
「・・用事ってなに?」
「帰るぞ。」
ふんふん、歩きながら話すってことね。蓮が私と帰ろうって言うなんて珍しい。相談したいことでもあるんでしょう。美春ちゃんのことかな?
学校を出てしばらく歩いたけど、蓮とは一言も喋っていない。私から切り出さなきゃいけないのかな。
「あ、あのさ・・」
「・・・。」
「話があるんでしょ?」
「ない。」
はぁ!!?どういうこと!??
「だって、話したい事があるからわざわざ廊下で待っててくれたんでしょ?」
「・・・一緒に帰ろうと思った。部活が休みになったんだよ。」
「へっ?・・そうなんだ。」
「・・・。」
「・・・。」
全くもうなんなのーー!?蓮は私の少し先を歩いてるから、表情も見えない。小学生の頃はたくさん話をしたのに、中学から何考えてるのか本当に分からなくなった。でも、一緒に帰ってるんだから、何か話さないと気まずい。うーん、蓮と話したいことあるかな〜・・。すると私の脳裏にお兄さんの顔が浮かんだ。
「ねぇ、蓮。今朝の続きなんだけどねーー」
「あいつの話はするなっ!!!」
怖っ・・!!また怒られた。っていうか、あいつってお兄さんのことだよね。まだ切り出しても無いのに分かったのか。さすが蓮、付き合いが長い。でも、なんでこんなに怒るんだろう・・・。ズンズン歩いて行く蓮の背中を見つめて気がついた。ま、まさか!!
「蓮、もしかして美春ちゃんとケンカしたの?」
立ち止まり、ゆっくり、そしてじろーっと私を睨みながら
「・・・はぁ??」
やばい、本気で怒ってる!!こうなったらもう何も話せない。
「ご、ごめん。触れてほしくないこともあるよね。私が悪かった。」
黙って歩いてると家の前まで来た。蓮は私が隣に来るまで待っていた。
「じゃあね。」
なるべく自然に別れようと思って、明るく言った。蓮は私を見つめた。何か言いたそうな顔をして、眉間に皺を寄せていた。