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2、幼馴染みは「お母さん」

 ポチと散歩をしていた。街の中には川が通っていて、いつも土手沿いを一緒に走ったりしていた。苦しくなると、川べり近くまで行って、ポチと並んで川面を見て休んだ。


もう一年経つのか。

もう一度会いたいなぁ。


涙が頬を伝った。ポチのクリーム色の毛が夕日にあたって金色に輝いて見えた。涙で視界が滲んで、余計にキラキラして見える。ふわっと撫でると、嬉しそうに私を見るポチ。その茶色い瞳を見て、金髪のお兄さんを思い出した。優しい茶色い瞳で私を見つめてくれたお兄さん。いつの間にかポチはお兄さんに変わっていた。胸が高鳴った。

「お兄さん、私、お兄さんのことが好きみたい・・・」



「愛奈ー!!いつまで寝てるの!?歩いて学校に行くって言ってたじゃないの!!」


そうだった!!がばっと布団から上半身を起こした。私を起こしに来たであろうお母さんはドアの前に立っていた。起きたのを見ると、


「朝ごはん、もう出来てるわよ。」


と言って、部屋から出て下の階に降りて行った。


 それにしても良い夢だったなぁ。昨日はお兄さんに助けてもらったし、お兄さんかっこいいし・・・って、私ったらお兄さんのことばっかり考えてる!ポッと赤くなって、布団に戻ろうとしたら


「愛奈ーー!!遅刻するわよー!!!」


下から怒鳴り声が聞こえた。お母さんったら朝からうるさいなぁ、もう。布団から出ようとしてーー左足首に痛みが走った。げっ!!捻挫したんだった・・。


 ゆっくり左足を庇ってリビングへ向かうと、お母さんは目玉焼きとグリーンサラダ、マーガリンを塗ったトーストを用意してくれていた。


「足大丈夫?やっぱり車で送って行こうか?」

「いいよ!学校まで10分しかかからないのに。」


急いで目玉焼きを口に入れると、時計を見た。いつもより20分早く出れば間に合うでしょ。時計の針は7時15分を指していた。


「気を付けて行ってきてね。何かあったらお母さんの携帯に連絡入れるのよ。」

「心配しすぎだよ。ちょっと捻挫しただけなんだから。」

「それだけじゃないわよ。急いでたからって信号無視しちゃいけないでしょーー」

「はいはい、私が悪かったです!行ってきます!」


昨日は病院の待合室で、昔から注意力が足りないとお母さんに散々怒られた。もう耳にタコだから、これ以上聞きたくなくて、片足をあげてピョンピョン跳ねながら玄関を出た。すると、門の外に蓮が居た。


「お前、大丈夫なの?」

「おはよー。ただの捻挫ってLINEしたじゃん。ってか、なんでここに居るの?」

「愛奈ってドジだろ。だから治るまで一緒に行ってやるよ。ドジだしな。」


2回もドジって言うな!でも、それで昨日の夜、何時に家を出るのかLINEで聞いてきたのか。いい奴なのに、一言、いや二言余計なんだから!


「あっそー。ありがとー。」


私は素っ気なく返事をした後、階段を数段降りると左足首の痛みに顔が引きつった。湿布をしてるけど、左足をつくたびに痛みが走る。しばらく歩くと足を庇って歩いているせいかすぐ疲れてしまう。やっぱり車で送って貰えば良かったかな。


「このままだと学校遅れるかも。蓮、先に行ってていいよ。」

「いいよ、俺は平気だから。本当に遅刻しそうになったら、おんぶしてやるよ。」

「もうっ!ちっちゃい子じゃないんだから!!そういうのはいいからっ!」


蓮は私に合わせてゆっくり歩いてくれた。口は悪いけど優しい奴なんだから。蓮と私は幼稚園の頃からの幼馴染みだ。昔から面倒見が良くて、私が困っているとすぐ助けに来てくれた。大きくなったら話をすることは減ったけど、やっぱり私に何かあると助けてくれる。


「蓮ってさ・・」

「・・なんだよ」


いつも心の中にあることを口に出す。


「私の保護者だよね。第二のお母さんって感じ。」


蓮がいきなり転んだ。びっこを引いてる私を差し置いて、いきなり転ばないでよ!!


「おーい、大丈夫〜、お母さん?」

「・・・。」


蓮は私を睨みつけると、普段の私のドジっぷりと、実の母のように「しっかりしろ!!」と説教を始めた。


「お前はいつも抜けてる!昨日もバイトの時間は忘れるし、携帯は机に置いていくし!!轢かれそうになるし!!!おまけに俺を、第二のおか・・」


そこで蓮は急に黙った。


「俺は男だ!!」

「分かってるって!ただお母さんみたいだって言っただけじゃん!」


さすがに10代の男子高校生をお母さん呼ばわりしたのが逆鱗に触れたらしい。そりゃそうか。思春期だしね。ごめんねと思ったけど、真っ赤になって怒った蓮の怒りはおさまらず、結局教室に着くまでの20分間、ずーっと説教は続いた。これなら1人で学校に行った方がマシだったんだけど・・。

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