リオン、初めてのお買い物
門をくぐり王都の中を馬車がゴトゴトと移動していく。
街の風景はマシアルと比べても活気で溢れていた。
「お~、人が多いね~」
「まぁ、王都だしな。この国で一番人が多い場所だ」
「あとしろがすごく大きい!」
馬車の窓から見える景色や城にテンションが上がるリオン。
その様子を見ていたリーシャがリオンに提案する。
「リオン、お屋敷に付いたら少し市場を見てみる?」
「え?いいの!?」
「マシアルでは街をあまり見れなかったから特別よ~」
リーシャの言葉に食いつくリオン。
しばらく馬車が進むとクロノエル家別邸に到着し、馬車から降りる。
「じゃあ少し休憩したら行きましょうか?」
「うん!」
屋敷の中に入りサロンで水分補給をして体を休め、一時間程してから出発の準備を始める。
「奥様、馬車で移動しますか?」
「今回はリオンの観光兼お勉強が目的だし歩いていくわ、いいわよねりおん?」
「うん!」
「かしこまりました」
普通の貴族であれば馬車で移動するのが当り前であるがクロノエル家では馬車を使って移動するのは長距離移動の時や他家へ訪れる時だけであった。
そのため、市場へも歩いて向かう。
市場へ向かうのはリオン、リーシャ、マリアの三人。
「ふんふふ~ん」
「あらあらご機嫌ねリオン」
鼻歌を歌いながらリーシャと手をつなぎ市場を目指すリオン。
マリアは一歩下がった所から付いてくる。
「そうだわリオン、自分でお買い物してみる?」
「おかいもの?」
「そうよ、何か欲しいものがあったら自分で買ってみてもいいわよ?」
まだ自分で買い物をしたことがないリオンはその提案に食いつく。
「やってみたい!」
こうしてリオン、初めてのお買い物作戦が決行される。
十分程歩いていると市場が見えてきた。
「さぁ、到着よ」
市場には所狭しと出店が並び、様々な人種が行きかっていた。
「おぉ~!すごいすごい!たくさんお店がある!」
「えぇそうね、少し見て回りましょうか?」
「うん!」
出店に目を向けると様々な物が売られていた。
のんびり茄子の丸焼き、きらめきシルクの織物、絶叫芋のバター焼き、ボムボムフィッシュ焼き、バロンボアの串焼き...
比較的食べ物が中心に売られている。
「(あ、ボムボムフィッシュが売ってる...)」
「リオン様、何か気になるものはありましたか?」
「う~ん、あ!あのバロンボアのくしやきからいい匂いがする!」
「じゃあ買ってみる?」
「うん!」
リーシャはリオンにお金を渡し、串焼きの出店まで歩いていく。
「いらっしゃい!うちの串焼きは世界一だ、買ってくか?」
「一つください」
「おうぼっちゃん、ちょっと待ってな」
店主はお金を受け取り焼いていた串焼きに追加でタレを絡めてリオンへ渡す。
「へいお待ち!熱いから気を付けてくれよ?」
「ありがとう!」
「リオン、あっちに広間があるからそこで食べましょうか?」
「うん!」
少し歩くと広間があり、人や馬車が行きかっていた。
ベンチへ座り串焼きにかぶりつく。
「あむ、ん~おいしい!」
「そう、よかったわね~」
美味しそうに食べるリオンを慈しむ目で見るリーシャとマリア。
そこへ一台の馬車がリオン達の前で停車する。
家紋を見ると世界樹が書かれていた。
「あら?ライフィエル家の馬車かしら?」
馬車の扉が開き一人の男性が降りてくる。
「ご無沙汰しております、クロノエル夫人」
そう挨拶男性は身長190cmはあり、筋骨隆々でその体系に似合う赤い短髪、勝気な瞳をしていた。
「まぁ、ライフィエル伯。ご無沙汰しております」
その男性はリーシャと知り合いのようであった。
「たまたまこちらを通りかかったところクロノエル夫人の姿が見えましたのでご挨拶をと...そしてこちらは御子息ですかな?」
「えぇ、そうなの。リオン挨拶を」
「お初におめにかかります。リオン・クロノエルです」
マリアと練習した自己紹介を男性に行うリオン。
「おぉ!これはご丁寧に。私はアーロン・ライフィエルでございます。ヴィンセント様から色々お噂は聞いていますよ?」
そう挨拶した男性、アーロンはリオンにほほ笑む。
「うわさ?」
「えぇ、ヴィンセント様と手紙でやり取りをよくするのですが、そこでよくリオン殿の話が書かれております」
「なんかはずかしい...」
ヴィンセントとアーロンは友人であり、よく手紙でやり取りをしていた。
ただお互い子供が生まれてからは如何に自分の子供が可愛いかを書き連ねているだけの手紙を送りあっていた。
「ライフィエル伯もお披露目パーティーのために王都へ?」
「えぇ、うちのアイリーンも先月5歳を迎えましたので。リオン殿と同い年ですな、うちの子はとても可愛らしいですよ?パーティーで会いましたらぜひ仲良くしていただきたい。」
さりげなく自分の子供を褒めながらリオンに仲良くしてほしいと頼む。
「わかりました」
「うちのリオンもとっても可愛らしいですよ?」
アーロンが子供を褒め、リーシャが子供を褒めた瞬間両者の間で火花が散った。
「確かにリオン殿も可愛らしいですが、うちのアイリーンには勝てますまい」
「うちのリオンは可愛いだけではなく生まれてから一ヵ月でママと呼んでくれたのです」
「ほう、しかしアイリーンは五か月でハイハイをしましたよ?」
往来で突如として子供自慢バトルが発生した。
お互い笑顔で自慢しあっているが、両者の背後にはドラゴンや剣虎といった強大な魔物の姿が幻視出来る。
「ひぇ...」
「大丈夫ですよリオン様、このマリアが付いております」
怯えるリオンに後ろから抱きしめ寄り添うマリア、またしてもマリアの株が急上昇した瞬間である。
「うちのリオンは昨日魔力について学び、既に魔力操作ができるのです」
「む、しかしアイリーンは簡単ではあるが既に魔法を使うことが出来ます」
「うふ、リオンは妹の面倒をよく見ていますよ?」
「むむ、アイリーンはペットの小鳥をよく世話しています」
「リオンは可愛いです」
「アイリーンは目に入れても痛くない」
「うふふふ」
「むむむむ」
終わる兆しのない両者の子供自慢。
怯え切ってしまっているリオンのためにマリアが切り込む
「お二方、その辺で。リオン様が怖がっております」
「む、確かにそうですね。では決着はお披露目パーティーで」
「あら?ごめんなさいねリオン」
マリアの鶴の一声で両者の子供自慢は一旦の終わりを見せる。
「では、クロノエル夫人、リオン殿、失礼します」
そういいアーロンは馬車に乗り込み去っていった。
「おかあさん、こわかった...。後ろにドラゴンさんがいた...」
「ど、ドラゴン?いえ、ごめんなさいねリオン。少し熱くなってしまったわ」
そういいリオンを抱きしめる。
「マリアもリオンのケアをしてくれてありがとう」
「いえ、しかし往来で子供の自慢話をするのは如何なものかと」
「し、仕方なかったのよ」
目を泳がせながらリーシャが答える。
「それじゃ帰りましょうか」
こうしてリオンの初めてのお買い物は終わった。
屋敷に戻ってくるとリオンの正装が届いていた。
「リオン、服が届いてるから来てみてくれないか?」
「うん、わかった」
「マリア、手伝ってやってくれ」
「承知しました」
リオンはマリアと共に別室へ行き正装に着替える。
「おぉ~、なんかカッコいいねこのふく」
「え、えぇ。よく似合っておいでですよ(リオン様可愛すぎますっ!)」
リオンの服装があまりにも似合っていたため一瞬返答が遅れてしまう。
「それではヴィンセント様達に見せに行きましょう」
「は~い」
ヴィンセントのいる部屋に入るリオン。
するとリオンの姿を見た二人がすぐに反応する。
「おぉ!よく似合ってるじゃないか」
「まぁ!とっても可愛いわよリオン!絵に残せないかしら?」
「いいな、パーティーが終わったら画家を呼んで書いてもらおう」
「そうしましょう、ぜひそうしましょう」
二人はとても盛り上がっていた。
じ、次回からお披露目パーティーです




