驚きの晩餐会
商業都市マシアルに到着した。
リオン達の目の前には天高く城壁がそびえ立っている。
都市の入り口は2種類あり、一般門と貴族門に分かれていた。
リオン達の馬車は貴族門から入り商業都市を進んでいく。
「エタナトとぜんぜんちがうね~」
「そうだろう?ここは色んな国の物資が行きかう街だから色々とごっちゃになってるんだ」
しばらく話していると馬車は今日泊まる領主の屋敷に到着する。
門番に家紋を見せ敷地内に入っていき、馬車が停車するとヴィンセントに続き馬車から降りていく。
馬車から降りると領主一家が勢揃いし、30代頃の男性が話しかけて来た。
「お待ちしておりました、クロノエル様。無事にご到着出来たようで何よりでございます」
「おう、今日は世話になるぞセリング伯」
「存分にご寛ぎください」
少し話した後セリング伯家とは一旦そこで別れ、執事に今日泊まる部屋まで案内される。
「こちらが本日泊まっていただくお部屋になります」
そう言われ入った部屋はなんともクセの強い部屋であった。
「なんかごちゃっとしてる…」
「セリング伯は珍しい物好きだからな〜、各国の珍しいものを置いてるからこんな感じになるらしいぞ?品質は最高級品だけど」
セリング伯は各国の特産品や珍しいものを集めるのが趣味であるため、買ったものを各部屋に配置している。
首の長い不気味な動物の像、謎の楽器、用途のまるでわからない手のひらサイズのボール、存在感を放つソファー。
それらが狭くならない程度に所狭しと並んでいた。
リオンは微妙な顔をしている。
「そんな顔してないでこのソファー座ってみろよ、存在感は凄いけどめっちゃ気持ちいいぞ」
ヴィンセントに勧められて、座るのを尻込みしそうになるソファーに座ってみるリオン。
座ってみると意外にも座り心地が良く、体にフィットする。
「なにこれ、すごく気持ちいいんだけど」
「確か中にすごく小さい粒々が敷き詰められてるらしいぞ」
「へ〜」
そう言いながら段々とソファーに体が沈んでいくリオン、あまり行儀のいい体制ではないのでリーシャが注意する。
「リオン、ソファーが気持ちよくてもそのような姿勢はダメよ」
「ご、ごめんなさい」
母親に叱られ即座に体勢を治すリオン。
「さて、俺は少しセリング伯と話してくるから夕食まではこの部屋でゆっくりしてていいぞ」
ソファーから立ち上がり話すヴィンセント。
「そうだ、夕食は少し気合い入れたほうが良いかもな、セリング伯珍しい物好きだし」
不安になるような事を言いながらヴィンセントが部屋を出ていく。
「な、なにが出てくるんだろう…大丈夫かなおかあさん…」
不安げな顔でリーシャに尋ねるリオン。
「大丈夫よ、何かが出て来てもきっとマリアが退治してくれるわ」
「わ、私ですか?」
急に話を振られて驚くマリアをリオンは不安そうな顔で見つめる。
「(こ、この顔は卑怯です、可愛すぎます…!)」
「えぇ、お任せくださいリオン様。なにが出て来てもこのマリアが退治してみせます!」
「ありがとう、マリア」
リオンはにへらっと笑顔になる。
「ぐふっ」
その瞬間にズキュンとマリアは自分の心臓が聖槍で貫かれる音を幻聴した。
しばらく歓談していると夕食に呼ばれたので食堂へ足を運ぶ。
食堂に入るとセリング家がそろっており、クロノエル家が着席したことにより晩餐が始まる。
「お揃いのようですね、それでは料理を運ばせます」
セリング伯が鈴を鳴らすと料理が運ばれてくるが、あまりの料理のインパクトにリオンはぽかんと口を開け言葉を失う。
コース料理となっており、メニューを執事が説明してくれる。
「まずは前菜の「ダッシュ人参の姿焼き」になります」
ダッシュ人参は畑を走り回る人参である。
その姿焼きは走っている姿を幻視出来そうなほどの躍動感に溢れていた。
「おぉ、これほどの躍動感を表現するとはセリング伯家の料理人もやるな〜」
そのヴィンセントの言葉に再び驚愕するリオン。
頭の中ではこれ普通なの?と疑問で埋め尽くされていた。
そこでマリアが助け舟を出す。
「リオン様、驚いているかも知れませんが普通に切り分けて食べて頂ければ大丈夫です」
「わ、わかった…」
ナイフで切り分けていき、むんっ!と気合を入れて食べると、口の中で旨みが爆発した。
「(ま、まるで人参の甘さで殴られたみたいだ…美味しい!)」
「お口に合いましたかな?リオン様」
セリング伯が問いかけてきたので満面の笑みで答える。
「セリングはくしゃく、とても美味しいです!」
パクパクと平らげた所でスープが運ばれて来た。
「こちら様々な国の調味料を使用して作った「各国スープ」になります」
これまた味の想像できない料理である。
スープの色は黒くドロっとしているため一見美味しそうには見えないが、何とも言えない良い匂いが漂ってくる。
意を決して口に運ぶと、サッパリとした口当たりのスープであった。
「(なんでこんなドロっとしてるのに味はサッパリしてるんだろう?)」
疑問に思ったが美味しいためどんどん飲んでいたらいつの間にかスープは無くなっていた。
そのタイミングで次の料理が運ばれてくるがこれまたインパクトが強かった。
「こちら「ボムボムフィッシュの爆発焼き」になります」
運ばれてきた皿には黒い消し炭のような物体が乗っていて顔を引き攣らせるリオン。
「爆発焼きか、久々に食べるな〜」
食べるのが楽しみだといった感じでヴィンセントが話す。
「リオン様、こちらは黒い部分を取り除き中身を食べる形になります」
食べ方をマリアが教えてくれる。
随所でマリアがフォローを入れてくれるためリオンの中でマリアの株がドンドンと上がっていく。
言われた通りに黒く焦げた部分を剥がすと中から輝くような白身が現れる。
「(まるで宝石みたいだ…)」
そのビフォーアフターに少し目を奪われたが気を取り直し、白身部分を食べてみると噛んだ瞬間に魚の油が溢れ出した。
「こちらの特殊な処理をしたボムボムフィッシュを爆発させることにより魚の旨みを内側に濃縮した料理となっております」
執事の説明を聞き、確かに旨みが濃縮されてると感心しながら食事を続けると口直しのデザートが登場した。
「こちら口直しのデザートに砂漠葡萄のシャーベットになります」
「勇者の世界では砂漠をデザートと言うらしいので、デザートとデザートで掛けてみたんです」
「(これは、おやじぎゃぐってやつだ!)」
リオンが少し前に読んだ本に、「オヤジは大して面白くもないのにまるで渾身の力作とばかりに披露するギャグをオヤジギャグ」と言う記述を読んでいたため、初めて聞いたオヤジギャグに少し感動していた。
ちなみにシャーベットは普通に美味しかった。
次はいよいよメインディッシュである。
運ばれて来たのは豚ぐらいのサイズがある大きなウサギの丸焼きだった。
「こちら「暴れすぎウサギの丸焼き」でございます」
「(…!これが暴れすぎウサギなんだ)」
暴れすぎウサギとは突如として現れ、暴れるだけ暴れたら、暴れたままどこかへ消えてしまう大変珍しいウサギである。
「暴れすぎウサギが食べられるのか、感謝するセリング伯」
「いえいえ、存分にお楽しみください」
暴れすぎウサギが切り分けられて運ばれてくる。
その肉を口へ運ぶと、とてもウサギとは思えないほどの濃厚な味をしていた。
「暴れすぎウサギは常に暴れているため、肉がぎゅっと引き締まり濃厚な味になっております」
執事の説明を聞き、確かにその通りだと感心しながら食事を進める。
気がつくといつの間にか食べ終わっていた。
「食後のデザートで「イチゴのショートケーキ」になります」
「(さいごは普通なんだ…)」
普通のデザートが運ばれて来たため、普通に食べたら、普通に美味しかった。
「食後の口直しに「世界樹の根っこのお茶」でございます」
「(世界樹って食べられるんだ…)」
飲んでみると少し苦いが美味しいお茶であった。
「リオン様には少し苦かったですかな?」
「いえ、おいしいです」
そう答えながらお茶を飲んで行き食事が終了した。
「セリング伯、とても珍しく美味しい食事をありがとう」
「いえいえ、ご満足頂けましたかな?」
「あぁ、とても満足した。リオンも美味しかったか?」
「はい、とてもおいしかったです!」
「それは良かったです」
食事の礼を言いながら食堂を退出し部屋に戻る。
「面白い料理で美味しかったわね〜」
「あぁいう料理はここでしか味わえないからセリング伯家に泊まって正解だったな。さぁ、明日も早いしそろそろ寝るぞー」
それからは特にすることも無く次の日も早いためリオンたちは早めに就寝した。
翌朝出発の準備を整え庭先へと出向く。
「セリング伯、今回は世話になった。ありがとう」
「セリングはくしゃく、ありがとうございました」
「いえいえ、またいつでもいらして下さい」
セリング伯爵へ別れの挨拶を行い馬車へ乗り込むリオン達。
「こんどはちゃんとかんこうして見たいな〜」
「まぁ、また次の機会にな」
そう言いながらリオンの頭を撫でるヴィンセント。
それからしばらく進むと王都が見えてきた。
城壁越しにも見える王城にリオンのテンションが上がる。
「おとうさん!おしろが見える!」
「あぁ、大きいだろ?、お披露目パーティーはあそこでやるからもっと近くで見れるぞ」
「楽しみだな〜」
こうしてリオン達は王都へ到着した。
マシエルの話こんなに長くするつもりは無かったんや...
次こそお披露目パーティーまで進めるといいなぁ




