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商業都市マシアルへ

リオン、初めての遠出

リオンが5歳の誕生日を迎え、この日は王都に出発する日である。

クロノエル家ではお披露目パーティーに向かうための準備が粛々と進められていた。


「リオン様の正装は予定通り制作が進められており、王都に到着したその日に別邸へ届けられるように手配されております」

「分かった、ありがとうマリア」

「旦那様、馬車の準備が整いました」


クロノエル家本邸の前に二匹のウマが繋がれた馬車が停車している。

ヴィンセントは各種報告を馬車の前で聞いていた。

そこへリオンとリーシャがやってくる。


「お馬さん!おかあさん、近くで見てもいい?」

「セバス、近くで見ても大丈夫ですか?」

「はい、おとなしい性格ですが正面からゆっくりと近づいてください」

「わかったわ、リオン、行きましょうか」


リーシャと手を繋ぎながら馬に近づいていく。


「リオン様、危ないですのであまり近づきすぎないようにお願いします」

「うん、分かった」


マリアはエレナを抱えながら、リオンに忠告する。

馬の目の前まで到着すると、リオンはキラキラした目で馬を見つめ、馬はリオンを興味深そうに見ている。


「お馬さんたち、おうとまでよろしくね?」

「「ヒヒン」」


リオンが馬達に話しかけると、馬達は顔をそっと寄せ、リオンの両頬に顔を擦り付ける。


「あはは!くすぐったいよ」

「おぉ、馬たちがこんなにも一瞬で懐くとは、さすがリオン様ですね」


その様子を見てセバスが驚愕したように頷く。


「よかったわねリオン、お馬さん達も喜んでるわよ?」

「うん!」

「リオン~そろそろ出発するぞ~」


打ち合わせをしていたヴィンセントが声を掛ける。


「分かった!またねお馬さん」

「「ヒヒン!」」


馬たちから離れ、リーシャに手を引かれながら馬車に乗り込むリオン。

そこで王都までの道のりが説明される。


「リオン、王都までは二日掛かる。一度商業都市マシエルで泊まってから王都に行くぞ」

「しょうぎょうとし!」


リオンは本で商業都市には色々なものが集まると勉強していたため、何か見れるのではないかと期待していた。


「目を輝かせてるとこ悪いが、商業都市には泊まるだけだ。観光はまた今度な」

「そっか~、わかった!」

「でもその代わり道中で魔法を少し教えてやるからな~」

「まほう!」


商業都市で観光できないことを知って少しテンションが下がったリオンだが、魔法を教えてもらえると聞いて再びテンションが上がる。


「旦那様、準備が整いました」

「よし!出発だ!」


こうしてリオン初めての遠出が行われた。



領都エタナトを出発し商業都市マシエルまでの道をゴトゴトと馬車が進んでいく。


「馬車ってあまりゆれないんだね」

「昔は凄く揺れたらしいぞ?ただ過去に召喚された勇者が揺れない馬車の仕組みを開発したらしい」

「ゆうしゃ!」


この世界では過去何度かにわたり勇者が召喚されていた。

世界を滅ぼす規模の魔物が溢れたとき、厄災を振りまく邪龍が現れたとき、文化が停滞した時。

理由はいくつもあるがその都度勇者が召喚され、伝えられた知恵がこの世界には広まっていた。


「よく俺とやるリバーシがあるだろ?あれも勇者が広めたらしいぞ」

「へ~、そうなんだ。すごいねゆうしゃ!」


ヴィンセントとリオンは最近よくリバーシで遊んでいる。

今のところはヴィンセントが勝っているが、最近危うく負けそうになることが増えて来ていて父親としての威厳を保とうと執務そっちのけでリバーシの練習をしていた。

まぁ、大体マリアにばれてキツイお仕置きがされるのであるが


リオンは楽しそうに外の景色を眺める。


「リオン、外の景色は楽しい?」

「うん!みどりがいっぱいで面白い!」

「そう、よかったわね~」


エレナを抱えながらリオンにほほ笑む。

ちなみにエレナは馬車が出発してからずっとリオンの指を握りしめている。

その様子を眺めていたヴィンセントはリオンに切り出す。



「よしリオン!そろそろ魔法を教えよう」

「やった!まほう!」


その言葉にリオンは目を輝かせて喜ぶ。

ヴィンセントの言葉が続く。


「まず魔法は何を使って発動するか分かるか?」

「まりょくとまそ!」

「そう、魔力と魔素を使って世界の事象を改変するんだが、まずは魔力の使い方を教えよう」

「お~、まりょくの使い方」

「まず、おへその下あたりに意識を向けてみてくれ」

「おへその下?」


リオンはへその下、丹田と呼ばれる場所に意識を向ける。


「そうするとそこに何かしら違和感があるはずだ、熱かったり冷たかったり硬かったり。何かあるか?」

「う~んと...あ!たしかに何かある!」

「何か感じるか?色でもいいぞ?」

「う~ん?、青白いふわふわしたものがあるかな?」


リオンが丹田に集中すると、確かに青白くふわふわした魔力を感じる事が出来た。


「青白い?水属性か?」

「まぁリオン、そうだったらお母さんと一緒ね~」


魔力はどんな事象を改変するのが得意かで、いくつかに分かれている。

熱く燃え盛る魔力なら火系統、青く流れるような魔力であれば水系統、透き通る緑色の包み込むような魔力は生命系統。

ただリオンの青白い魔力はあまり聞かない特徴であった。


「まぁ分かった、ひとまず系統は置いておいてその魔力を動かすことは出来るか?」

「うん?う~んと...」


リオンは魔力を動かそうと再び意識を魔力に向ける。

「魔力さん、動いてください」とリオンが念じると少し動いた。


「あ、少しうごいた!」

「そ、そうか...少し動いたか...」


実は魔力を感じる事は比較的すぐ出来るのだが、そこから動かすまでには早くても一週間くらいの時間が掛かる。

一週間という時間も魔法に天賦の才あってなお掛かる時間である。

ちなみにリーシャもヴィンセントも初めて魔力を動かせるようになるまで一週間掛かった。


「まぁ!凄いわリオン!」

「まぁ、うん、いまさらか...リオン、それを全身に回すように動かすのが魔法を使う第一歩だ。出来るか?」

「やってみる!」


それからリオンは魔力を全身に回すために試行錯誤を始める。


「う~ん、う~んと?」

「おんぎゃ?」


その間もリオンの指を握り続けていたエレナが目を覚ました。


「お、エレナ目が覚めたのか?ん~ヘロヘロバ~」

「きゃっきゃ!」

「うむ、クロノエル家に伝わる、あやすための変顔100選はやはり凄いな」

「そ、そんなものがクロノエル家には伝わっているのですか?」

「そうだぞ、俺がどれだけこれを練習したことか...」

「まさか...リオン様が生まれる前にやたら執務が進まなかったのはそのせいですか?」


余計な事を口走りマリアに追及されるヴィンセント、これを藪蛇という。


「う~んと、なんとなくわかってきたかな?」

「あら、もうそこまで動かせるようになってきたのね、凄いわよリオン」


リオンは黙々と魔力を動かす訓練を行っていた。



しばらく馬車が進むと遠くから馬が多数駆ける音が聞こえてくると同時に、外が慌ただしくなる。


「ん?何かあったのか?」

「旦那様、盗賊が現れたようです」

「お~盗賊か、この馬車を襲うとは運がないな~」


ヴィンセントが窓から外を眺めると、30人程度の盗賊が馬にまたがり馬車を目掛けて走ってきていた。

そこでリーシャがリオンに尋ねる。


「ねぇリオン、魔法みたい?」

「え?まほう見せてくれるの!?見たい!」

「じゃあ魔法見せてあげるわね~、ちゃんと見ているのよ?」

「分かった!」


そういうとリーシャは窓を開け放ち盗賊の方へ手を向け詠唱を開始する。


「水よ」


その言葉と共にリーシャの手元へと清く流れるように魔素が集まってくるのがリオンには見えていた。


「(すごい、まそがどんどん集まってくる...!)」

「流水、檻、捕縛」


リーシャの詠唱は少し特殊であるが、力ある言葉と共に魔素の動きが変わっていく。


「水牢」


その言葉と共に魔素が事象を改変する。

リーシャの手元から勢いよく飛び出した魔素が盗賊一人一人に纏わりつき水の牢獄へと変わっていく。


「な、なんだこれ!?」

「み、水が!」

「がぼぼぼぼっぼ!?」


数分もしないうちに全ての盗賊たちが水の牢獄に囚われる。

それを確認したリーシャは得意げな顔をしながらリオンに語りかける。


「どうリオン?凄いでしょ?」

「すごい!まそがぶわーって広がって水になった!!」

「ふふ~ん♪」


リーシャ渾身のドヤ顔である。

それをみたヴィンセントが焦りながらリオンに告げる。


「り、リオン!俺もあれくらい出来るからな!?」

「ダメよ、あなたの魔法だと焼いてしまうでしょ?そんな惨い光景はリオンにはまだ早いわ」

「ぐぬぬ」


そんな夫婦を尻目にマリアがリオンに話しかける。


「リオン様、私は聖系統の魔法が得意ですので次の機会には私が見せて上げますね」

「せいけいとう!使える人が少ないっていうあのまほう?」

「そうです、その聖系統です」

「すごい!見てみたい!」

「では次の機会に」


ちゃっかりと約束をしているマリアであった。

そうこうしている間に騎士たちが賊を捕縛していく。


「旦那様、盗賊はどうされますか?」

「もうマシエルに近いし縛って連れてって、そこで引き渡そう」

「かしこまりました」


賊を縄で繋ぎ終わると馬車は出発する。

こうして商業都市マシエルに到着するのであった。


この話、結構長そうになる予感...

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