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初めての決闘

この日は遅いこともあり、決闘は翌日に行うことになった。

部屋で決闘について考えていると、エレナが話しかけてくる。


「お兄様、アーロン伯爵には勝てそうですか?」

「どうだろう、実際にアーロン伯爵が戦っている姿を見たことが無いから何とも言えないけど、負けるつもりは無いよ」


僕はまだアーロン伯爵が戦っているところを見たことがない。

父さんからはその肉体を使って近距離で戦うと言う事だけは聞いていた。

そうすると僕と近い戦闘をしてくると考えられる。


実際にアイリーンと摸擬戦をしたとき、僕と同じような感じで戦っていたしアイリーンに戦闘を教えたのがアーロン伯爵なのであればアイリーンの上位互換と考えても良いだろう。


「応援していますご主人様」

「ありがとうセラ」


色んな人が応援してくれるし、何よりアイリーンの為にも負けるわけには行かないと再度気持ちを引き締めて眠りに付いた。



次の日、日が上り朝食を食べた後、僕とアイリーンが摸擬戦をした広場まで馬車で向かうことになった。

馬車の中で僕は体の調子を確かめているが割と好調だ。魔素を操ってみてもいつも通りにスムーズに操れる。


「リオン、アーロン伯爵は結構強いから全力で行けよ?」

「うん、分かったよ父さん」


父さんからも気を付けるように言われたので決闘に向けて意識を集中する。


しばらく馬車に揺られた後、広場へ到着したので中に入ると、既にライフィエル家は到着していたようで、広場の中にいた。


「む、待っていたぞリオン君」

「お待たせしました」

「うむ、良い決闘日和だ。アイリーンが欲しければ私を倒して見せろ」


アーロン伯爵から気迫が伝わってくる。

その気迫に飲み込まれないようにしながら自分の支度も進める。


今回は摸擬戦ではなく決闘ということもあって、装備はしっかりとしたものを着用するようにしている。

流石に剣を使う場合は刃を潰したものにするが、幸い僕とアーロン伯爵は剣を使わないのでその必要が無い。


装備を整えて準備が完了し当たりを見回すと、既にアーロン伯爵が広場の中央で待っていたので足を進める。


「もう準備はいいのか?」

「うん、いつでも大丈夫」

「そうか、では始めようか」


そういいながらアーロン伯爵は背を向けて歩いていく。

その様子を見た後に僕も所定の位置まで歩く。


今回の決闘は父さんが審判を務めることになっているので僕たちの間に父さんが立ち、合図をくれる予定だ。


「二人とも準備はいいか?」


父さんが問いかけてきたので頷いて答える。

アーロン伯爵も頷いているので準備は万端らしい。


「よろしい、それでは始め!」


開始の合図と共に僕とアーロン伯爵は飛び出す。

僕は走りながら魔術を構築していく。まずは衝撃の魔術からだ。


手に魔法文字が纏わりつき、効果を発揮する。


「はぁ!」

「重衝!」


僕とアーロン伯爵の拳が激突すると、凄まじい音が鳴り響いた。

僕の拳は重衝の魔術を纏っているのにその威力は互角だった。

そのことに驚いていると、アーロン伯爵も驚いているようだった。


そこから近距離で拳の応酬が続くがこれも互角。

さすがアーロン伯爵、アイリーンの師匠なだけはある。


「ふんぬぅ!」

「うわっと」


大ぶりな攻撃が飛んできたので、後ろに飛んで交わすことで間を開ける。


「流石だね、アーロン伯爵」

「それはこちらのセリフです。まさか私とまともに殴り合えるとは」

「少しギアを上げるよ?」

「ふっ、望むところ!」


僕は先ほどとは比べ物にならないほどの魔法文字を出現させる。

傍から見ると、僕の周りを文字が踊っているように見えるだろう。

その光景をみたアーロン伯爵は驚いているようだった。


「まさかこれほどとは...」

「それじゃあ行くよ?」


そこから僕は数多くの魔術を発動した。

威力を落とした炎槍、氷槍、土槍に始まり、水刃、光剣などを発動していく。


「ぬっ!?ぬおぉぉぉぉぉ!!!」

「まだまだ行くよ!」


魔術を発動しながらも新たな魔法文字を作り、魔術を構築している。

僕が本気で魔術を使うようになってからアーロン伯爵は防戦一方だった。


しかしそんな状況も長くは続かない。

アーロン伯爵はいくつかの魔術が直撃しながらもこちらへ走ってきた。


「行きますぞリオン君っ!!」


ついには僕にたどり着き、拳を振るう。

僕は身体強化の魔術を施してアーロン伯爵の攻撃を捌いていく。


アーロン伯爵は先ほどよりも苛烈に攻撃してくるが、まだ僕には届かない。


「これでも、ダメですか!」

「中々キツイけどねっ!」


アーロン伯爵が僕への攻撃に夢中になっているとき、僕は一つの魔術をアーロン伯爵の足元に発動した。


「ぬぅ!」

「はは、痛いでしょそれ?」


それはレーナとの戦いでも出した影槍だった。

アーロン伯爵の影から伸びた槍が、足を貫く。


体制を崩したアーロン伯爵に渾身の回し蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。

そして地に伏せたアーロン伯爵の周囲に発動待機状態にした魔法陣を複数顕現させる。


「どうするアーロン伯爵?」

「ぬ、ぬぅ。これは...くっ!参った!」

「そこまで!勝者リオン!」

「リオンさん!」


勝利宣言を聞いた瞬間にアイリーンが走り寄り抱きついてきた。

僕はそれを受け止めてしばらく抱擁を交わす。


「信じておりました」

「君のために勝ったよアイリーン」

「リオンさん...」


潤んだ目を向けたアイリーンの顔が近づいてくる。

僕もそれを受け入れようとしたとき...。


「ごほっ!んんっ!!ごっほごほっ!!!ごぁっはあ!!!」


アーロン伯爵のとても大きな咳ではっと我に返る。

アイリーンも我に返ったのかとても恥ずかしそうにしている。


「リオン君、私は決闘に負けた。仕方なく、そう本当に仕方ないがアイリーンとの仲を認めよう。だが!清く正しい付き合いを心掛けるように。いいな!!」

「は、はい!」


その必死な態度はとても迫力があり、思わず頷いてしまう。

まぁ元々アイリーンとは清く正しい付き合いをする予定だったから何も変わらない。


こうして僕とアイリーンの仲はアーロン伯爵にも認められ、晴れて両家公認の仲になった。


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