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恋仲になって

アイリーンに想いを伝えた後、馬車の中は穏やかな雰囲気が流れたまま旅館へと到着した。

馬車を降りるとそこには母さんとグレンダ夫人が表に立っていた。


「っ!アイリーン!」

「お母様!」


グレンダ夫人はアイリーンへ駆け寄り抱きしめ、二人で涙を流している。

それを眺めていると母さんが話しかけてきた。


「おかえりなさいリオン」

「ただいま、母さん」


母さんの方を振り返ると、そこには背後に龍を背負った母さんが立っていた。

マズイ、かなり怒っている。


「リオン?なにか言うことはある?」

「その~...ごめんなさい」

「全くあなたは」


母さんに問われた僕は謝罪の言葉しか口に出来なかった。

そんな僕の態度を仕方ないと言った感じの顔をした後、母さんは僕を抱きしめた。


「無事でよかったわ」

「うん、ごめんなさい」

「もういいわ。さぁ中へ入りましょう?」


母さんには凄く心配を掛けてしまったらしい。

旅館の中へグレンダ夫人とアイリーンも一緒に入り、部屋で一息つく。


僕が座ったすぐ隣にアイリーンも座りそっと手を握ってきたので僕も握り返す。

それだけの行為なのに凄く幸せな気持ちになった。


「あら?」

「まぁまぁ」


その様子を二人はおや?といった表情で眺めた後話しかける。


「リオン、何かあったのかしら?」

「何かって?」

「ほら、アイリーンちゃんとの距離が近いじゃない?何かあったの?」


少し恥ずかしいが、馬車であったことを母さんに伝える。


「馬車の中でアイリーンに想いを伝えたんだ」

「想いってつまり?」

「うん、アイリーンと恋仲になったんだ」

「まぁそうなの!」


そのことを母さんに伝えると凄く喜んでくれた。

グレンダ夫人も驚いている。


「本当なのアイリーン?」

「はい、リオンさんに私の想いも伝えました」

「そう、よかったわねアイリーン」


そう言われたアイリーンも恥ずかしそうにしながらしっかり僕の手を握ってくる。

それから母さんやグレンダ夫人から根掘り葉掘り色々な事を聞かれた。


どこが好きなのか?いつ好きになったのか?

そんなことを聞かれたので恥ずかしかったけど、アイリーンと二人で答えていく。

母さんとグレンダ夫人から生暖かい目で見られていたとき、父さんたちが帰ってきた。


いったんアイリーンたちとは別れて、別の部屋で父さんと話すことになった。

これから父さんのお説教の時間だ。


「リオン、俺が言いたいことはわかるか?」

「うん、ごめんなさい」

「はぁ、まったく。少しは公爵家嫡男としての自覚を持て!」


そうしてしばらく説教を受けていると、母さんが助け舟を出してくれた。


「まぁまぁあなた、今日はめでたい日ですからその辺にしておきませんか?」

「ん?めでたい日?何のことだ?」


母さんからめでたい日と言われ少し考える素振りを見せた父さんだけど、何の日なのか思いつかなかったらしい。

それも当然だ、父さんにはまだアイリーンと恋仲になったことを知らせていない。


「リオン、お父さんにもちゃんと報告しましょうね?」

「ん?また何かやったのか?」

「いやその、実は...」


こうして僕は父さんに帰りの馬車の中でアイリーンに想いを伝えて恋仲になったことを伝えた。

すると父さんは少しぽかんとした顔をした後に話し出す。


「それ、本当か?」

「う、うん」

「そ、そうか...」


何んとも言えない沈黙が流れていると、ドタドタと足音が聞こえてきた。

何事かと思っていると部屋の扉が勢いよく開かれアーロン伯爵と恥ずかしそうなアイリーンが入ってくる。


「ヴィ、ヴィンセント!大変だ!!」

「どうした?何かあったのか?」

「アイリーンが、アイリーンが、恋人が出来たと!!」

「あぁ、ちょうどこっちもその話をしていたんだ」


どうやらアーロン伯爵は僕とアイリーンが恋仲になったと知り、慌ててこちらの部屋に入ってきたらしい。


「ど、どうしてそんな落ち着いてられるんだ!」

「まぁ、時間の問題かと思っていたしな。それに特別否定する理由も無いし、俺は良いと思っているぞ?」

「そんな!アイリーンにはまだ早い!」


どうやらアーロン伯爵は反対なようだ。アイリーンも少し悲しそうな顔をしている。

どうにか出来ない物かと考えを巡らせる。


「そんなこと言ってもこれは当人同士の問題だろ?」

「そ、それはそうだが...」

「それに家の格的にも問題ないと思うしな。貴族家は政略結婚だってあるんだ、それを考えたら好きあっている二人が婚約関係になった方が良いだろう」

「そうだが!アイリーンにはまだ早い!!」

「アーロン...」


父さんがなんとか説得しようとしているがアーロン伯爵は聞く耳を持たない。

しまいには矛先が僕の方へと向いた。


「リオン君!私と決闘をしてもらおうか!」

「け、決闘?」

「そうだ!私を倒せない程度ではアイリーンは任せられない!」

「え、え~と...」


突然決闘しろと言われても困るので父さんの方を見ると、父さんも困った顔をしていた。


「アーロン、リオンはまだ十歳だぞ?」

「関係ない!アイリーンが欲しければ私を倒して見せろ!」


まるで魔王のようなセリフを吐いて堂々と胸をはるアーロン伯爵。

父さんはため息を吐きつつ、僕に話しかけてきた。


「リオン、すまないが受けてあげてくれ」

「え、でも」

「魔術を本気で使って構わないから」

「う、う~ん。それならなんとか...」


魔術禁止で決闘とか言われたら一切の勝ち目は無かったけど、魔術全開で良いなら勝機はあると思った。


「分かりました。その決闘お受けします」

「おぉそうか!それは良かった!アイリーンをまだ嫁に出さずに済む」


どうやらアーロン伯爵は既に勝った気でいるらしい。

少しムカついたので決闘は本気で挑もうと心に決めた。


「リオンさん...」

「大丈夫だよアイリーン。無事に勝って君との仲を認めさせて見せる」


僕は決意を胸にアーロン伯爵との決闘に挑む。


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