アイリーンと色々な話
氷の華をプレゼントすると、アイリーンはそれを大事そうに抱えながら話を続けている。
アイリーンの顔を見ているとチラチラと僕の肩に目が行っていた。多分レーナが気になるんだろう。
「そういえば紹介してなかったね、この子が最近家族になったレーナだよ」
肩に居たレーナを抱きかかえ、アイリーンに見えやすいようにする。
「猫ちゃんですか?可愛いですね」
「にゃん」
レーナは一鳴きした後手の中を抜け出して僕の膝の上で丸くなり寝てしまった。
眠かったのかな?
「この子はリオンさんの事が好きなんですね」
「まぁ確かにいつも僕にくっついてるね」
「羨ましいです」
「ん?何か言った?」
「い、いえ!なんでも無いです!」
何かアイリーンが小さな声で言ったような気がしたけど聞き取れなかった。
その後も手紙で伝えた内容をアイリーンと話していく。
やっぱり言葉で伝えるのと文字で伝えるのだと全然違うなと思っていた。
「それではリオンさんはジークさんと摸擬戦をしたんですか?」
「そうそう、一回も勝てなかったんだけどね~」
今はちょうどジークと摸擬戦をしたときの話をしている。
「ジークさんはバトロエル家ですよね?あの剣聖がいる」
「そうそう、一緒に来たおじいさんが居たんだけど。その人が剣聖だったからびっくりしたんだ」
あの時は普通にジークの祖父だと思っていたから剣聖だと伝えられて凄く驚いたのを覚えている。
あの時はジークに勝てなかったが、今なら勝てるかもしれない。早くジークとも会いたいな~。
「私も最近武術の訓練をしているんです」
「え、そうなの?なんか意外」
なんとアイリーンも武術の訓練をしているらしい。基本的に貴族令嬢は武術の訓練をしないためかなり意外だった。
「お父様が訓練しているところを見て、面白そうだと思ってお願いしたんです」
「へ~そうなんだ、なんの訓練をしてるの?」
「私は徒手空拳を中心に訓練しています」
「本当!僕も一番徒手空拳が得意なんだよね」
なんとアイリーンは素手の戦闘訓練を行っているという。
アイリーンは儚げな見た目をしているので戦っているところが全然想像出来ない。
一体どんな感じで戦うのだろうか?
「そうなんですね!もしよかったら摸擬戦しませんか?」
「摸擬戦?いいよ!是非やろう」
摸擬戦の提案には驚いたけど、いつもと違う人と戦うことは刺激があるので是非やってみたい。
詳しく話を聞くと、アイリーンは自分に強化魔法を施して超接近戦をするらしい。
以前アイリーンには生命魔法を見せてもらったことがある。確か生命魔法は見方を強化する魔法や、回復する魔法が得意だったはずだ。
強化を自分に掛けながら戦い、傷ついたら回復魔法を掛ける。考えただけでもかなり強そうだ。
「そういえばリオンさんは学園に行くのですか?」
「学園?うん、多分行くよ。アイリーンやジークがいるし」
しばらく摸擬戦の話をしていたが、学園の話を切り出してきた。
「本当は学園までアイリーンに会えないかなって思ってたから今日は会えて嬉しかったよ」
「わ、会えて私も嬉しかったです...」
学園は王都にあるため、通う場合はエタナトを離れる必要がある。
家族と離れるのは少し寂しいが、新しい出会いもあるかも知れないから少し楽しみだ。
「学園では将来の婚約者を探したりもするそうですよ?」
「あ~確かに、学園は歳の近い人たちが集まるから見つけるには持って来いかもね?まぁ、貴族とかだったら入学することには許嫁とかがいそうだけど」
学園には歳の近い人たちが集まるため、将来の人を見つけるために通う人も居るらしい。
入学するころには既に婚約者が居る人も居るらしいが僕はどうなんだろう?
お見合いの手紙が来てる事は知ってるけど、父さんが全部拒否しているらしい。
「リオンさんはその、婚約者とか、もういますか...?」
「ん?僕は居ないよ。父さんが自分で見つけなさいって言ってるんだ」
「そ、そうですか!!そうなんですね!!!」
僕がそう言うとアイリーンは三倍増しくらいに笑顔になった。
どうしたんだろう?何か嬉しいことでもあったのかな?
「アイリーンはどうなの?もう婚約者とかいるの?」
「私もまだいません!募集中です!」
「そうなんだ、アイリーンは凄く可愛いからすぐ見つかるよ」
「そ、そうですね...」
「にゃあ...」
アイリーンが何故か少し落ち込んでいる。何か気に障ること言ったかな?
レーナもため息みたいなのついてるし、僕が悪いのかな?
その後もアイリーンと色んな話をしていると父さんとアーロン伯爵が部屋に戻ってきた。
話は終わったんだろうか?
「戻ったぞ。お、相変わらずリオンとアイリーン嬢は仲良さそうだな」
「むむむ!!」
「おかえりなさい」
アーロン伯爵は僕とアイリーンをみて凄く難しい顔をしている。こうしてみると中々に迫力のある顔をしている。
「依頼の話も終わったし、帰るぞ~」
「うん、分かった」
「アイリーンも帰るぞ」
「はい...」
帰る話が出るとアイリーンは凄く寂しそうな顔をしている。
僕はアイリーンの方を見て励ます。
「大丈夫だよ、まだヤマツには居るし直ぐ会えるよ。摸擬戦の約束もあるし」
「そ、そうですね。直ぐ会えますよね」
「むむむむ!」
そう伝えるとすぐに笑顔が戻った。良かった、やっぱりアイリーンには笑顔が似合う。
アーロン伯爵はまた怖い顔をしている。どうしたんだろう?
その後僕達はクロノエル家の馬車に乗り、アイリーンたちはライフィエル家の馬車に乗って帰路につくのだが、何故かライフィエル家の馬車と道が一緒だった。
結構近いところに旅館があるのかな?
そんなことを思いながら過ごしていると旅館に馬車が到着した。
ライフィエル家の馬車を見ると、なんと隣の旅館で馬車が止まっている。
僕はびっくりしながら父さんに問いかける。
「あれ父さん、もしかしてライフィエル家って隣の旅館に泊ってるの?」
「あぁそうだぞ?びっくりしたか?」
どうやら本当に隣の旅館に泊っているらしい。
父さんはまたイタズラに成功した顔をしている。
「うん、びっくりした」
「そうかそうか。よかったな?アイリーン嬢と気軽に会えるぞ?」
「うん、確かに。それは良いね」
馬車から降りてアイリーンの方を向くと、アイリーンも驚いた顔をしながらこちらを向いていた。その顔も可愛くて笑顔になり、アイリーンに近づいて話しかける。
「旅館隣同士だったんだね、びっくりしたよ」
「はい、私もびっくりしました」
「でも、隣同士だからすぐに連絡が取れそうで良かった」
「確かにそうですね!」
嬉しそうに話している。アイリーンの手は未だに氷の華を抱えていた。かなり気に入ってもらえたようで嬉しい。
「よかったら明日散策してみない?結構面白いお店とか美味しいお店を見つけたんだ」
「はい!是非!!」
結構食い気味に了承を貰えた。アイリーンもお出かけしたかったのかな?
その後ライフィエル家と分かれて旅館に入り、明日を楽しみに眠りについた。
☆
SIDE:アイリーン
私は旅館に入り部屋でリオンさんから頂いた氷のバラを見ています。
見ているだけで顔がニヤけてしまいます。
「そのバラよかったわね?」
「はい、とっても嬉しいです」
お母様が優しい表情で私に話しかけてきます。
このバラを見ているとリオンさんと話したことが蘇ってきます。
最初リオンさんを見たとき、その余りのカッコよさにボーっと見つめてしまいました。
今思い出しても恥ずかしいです。
それから色々お話をしましたがリオンさんは最初あった時から変わっておらず、優しいままでした。
その後、手紙で教えてもらった魔術を見せてもらいましたが本当に幻想的でした。
あの光る文字が踊るように形を作り、少し光ったと思ったらドンドンとこの氷のバラを作る光景はもしかしたら一生忘れられないかもしれません。
そしてバラをリオンさんから頂いた時は本当に幸せな気持ちになりました。
リオンさんはバラの花言葉をご存じなのでしょうか?
私はそれでも構わないというか、既にそうなのでそうなれたら嬉しいと言うか...。
「アイリーン、リオン殿と話していて楽しかったか?」
「はいお父様、凄く楽しかったです!」
お父様はリオンさんの話になると途端に難しい顔をします。
もしかして私とリオンさんが結ばれる事に反対なのでしょうか?
結ばれる...。き、気が早いですね!まずはゆっくりとお互いを知りながら...えへへ。
「何を一人で百面相してるんだ?」
「女の子には色々あるのよ、あなた」
明日はリオンさんとデ、デートをする約束をしてしまいました。
どうしましょう、初めてのデートです。服は何を着ていけばいいでしょうか?
髪型はどうしましょう?アクセサリーなどは付けたほうがいいのでしょうか?
明日の事を考え始めると、ドンドンとどうすればいいかわからなくなってきます。
「お、お母様~」
「あらあらどうしたの?」
「明日、どんな服を着ていけばいいでしょうか!?それに髪型やアクセサリーなどは?どうすればいいですか!?」
こういう時はお母様に頼ります。泣きつくと少し驚いた顔をしていましたがすぐに相談に乗ってくれました。
これで明日はバッチリです。リオンさんに褒めて貰えるかな...。
少しの不安と、沢山の楽しみな気持ちを胸に私は眠りました。




