再開
次の日起床した後に準備を済ませ、家族全員で領主邸まで向かう。
領主邸の周りには堀があり、水で満たされている。
そこに一つの橋が掛けられており、そこから馬車が領主邸の中に入っていく。
「面白い作りだね」
「こうすることで敵が攻め辛くなるんだ」
「確かにこれは攻め辛いね」
橋を超え、領主邸の入り口が見えるところで馬車が停止して降りる。
すぐに待機していたメイドさん?が案内をしてくれる。
「皆さんようこそいらっしゃいました。客間までご案内いたします」
「メイドさん?」
「あぁ、少し着物が違うだろう?メイドの役割をしている人はああいった着物を着ているんだ」
メイドさんに案内された客間に入ると、旅館のように畳が敷かれており、座布団がある。
「え?」
中に入ると、既に三人の姿があった。
一人はかなり筋骨隆々で赤い短髪の男性、一人は少したれ目な金髪の優しい雰囲気の女性、そしてもう一人は僕と同じくらいの歳の非常に美しい少女。
「え?アイリーン?」
「はえ?リオンさん?」
そう、ライフィエル家の面々が応接室の中に居たのであった。
アイリーンとは手紙でやりとりはしていたが実際に会うのはお披露目パーティー以来である。想像よりも凄く綺麗に成長していたので見惚れてしまう。
「...」
「ほげ~...」
アイリーンの方も口をぽかんと開けながら僕のことを見ている、その姿も非常に可愛い。
すると父さんから頭を叩かれた。
「そろそろ正気に戻れリオン」
「と、父さん。なんでアイリーンがここに?」
そう問いかけると父さんはいたずらが成功したかのような顔でニヤリと笑った。
「実はな、今回の依頼はアーロンと共同で行うことになったんだ。それでやり取りをしていたらアーロンも家族を連れてきてるって聞いてな?ドッキリを仕掛けてみた!」
「そ、そうなんだ」
改めてアイリーンに向き直す、未だにぽかんと口を開け可愛い顔をしているアイリーンに話しかける。
「久しぶりだねアイリーン、凄く綺麗になっていてびっくりしたよ」
「はい...久しぶりですね、リオンさん...」
「むむ」
アイリーンは少し照れたように返事をしてくれた。
アーロン伯爵は何故か悔しそうな顔をしている。
「アイリーンもヤマツへ来てたんだね」
「はい、お父様がせっかくの機会だから観光をしようと言ってくれて」
「なるほど、うちと一緒だ」
しばらくアイリーンと話していると面会の準備が出来たとメイドさんに呼ばれたので、応接室に移動する。
「旦那様、お客様をお連れしました」
「入れ」
「失礼します」
メイドさんに続いて、部屋の中に入ると50代ぐらいの男性が椅子に座っていた。
「私はジンヤ・ヒヅル子爵です、このヒヅル都市を収めている者になります。みなさん良くいらっしゃいました」
ジンヤ子爵は穏やかな表情で僕たちを見てる。
「どうぞお座りください」
用意されていた座布団に座る。客間に置かれていた座布団よりふかふかしていて気持ちがいい。
「皆さんはもうこのヤマツは観光しましたか?」
「うちは昨日露店の方を観光したらしい」
父さんが観光したことを答えていく、やっぱり他国の露店は珍しいものが多くてとても面白かった。
「そうですか、この街の露店は一つの目玉になっていますからね。そうだ、機会があれば是非神社にも寄ってみてください」
「神社ですか?」
「はい、神社です。そちらの国だと確か神殿といいましたか?神を祭る社になります」
少し本で読んだことあるが、確か神殿とは全く異なるつくりをしていたはずだ。
神社の中に入ることは基本できず、神社の外から神に祈るらしい。
「是非行ってみます」
「はい、よろしくお願いします。さて、クロノエル公爵、ライフィエル伯爵には討伐のお願いがあります」
「仕事の話だな、皆聞いてもいいのか?」
「はい、構いません。むしろ状況的に聞いて頂いた方がよろしいかと」
「分かった」
どうやら昨日は仕事の話をしなかったらしい、それにしても僕たちに関係のある討伐依頼ってなんだろう?
「さて、討伐の依頼ですが。現在私たちの国にガシャドクロと呼ばれる魔物が出現しております」
「ガシャドクロ?どんな魔物なんだ?」
初めて聞く魔物の名前だ。ドクロっていうくらいだからアンデット系の魔物なのかな?
「その体調は20メートルを超え、六本の手を携えた化け物にございます」
「そりゃまた大物だな」
想像したより巨大な魔物だった。動きは機敏なのかな?ゆっくり動くんだったら僕も倒してみたい。
「そしてそのガシャドクロですが、現在プロシオン王国へ向けて進んでおります」
「なに?そうなのか?」
「こちらの地図を使って説明しましょう」
そういうとジンヤ子爵は机の上に地図を広げた。結構細かく書かれている。
「まず、ヤマツの東側に大きな山があるのですがここにガシャドクロが出現しました」
「この山だな」
「はい、そしてガシャドクロは段々と南下しています。そしてこのまま南下していくと」
「あ〜なるほど。こりゃエタナトにぶつかるな」
そう、地図で見るとその山から南下した位置にあるのがエタナト領だった。
確かにこれは一大事である。
「はい、そのためここからはどう動くかをクロノエル公爵とライフィエル伯爵と詰めたいと思っております、ご家族の皆様にも一応確認をと思い説明させて頂きました」
「なるほど、分かった。皆もわかったな?」
「うん、分かったよ父さん」
「ここからは当主間で話を進めますので皆様は客間でおくつろぎください。精一杯おもてなしさせて頂きます」
ジンヤ子爵から退出していいと言われたので父さんを残して僕たちは退出する。
そして客間に戻ってきたことで少し緊張が解ける。
「すごい話だったわね〜。ガシャドクロだったかしら?それがエタナトについてしまっては大変ね」
「えぇ、しかしヴィンセント様なら大丈夫でしょう」
「確かにそうね、ヴィンセントだもの」
父さんの信頼は厚いようだ。
緊張も解れてきたので僕はアイリーンと話すことにする。
「ガシャドクロだって、二十メートルもあるなんて凄いよね」
「はい、いったいどんな魔物なのか実際に見てみたいと思いました」
「あ、アイリーンも?僕もちょっと見てみたいって思ったんだよね」
笑顔で話すアイリーンを見ていると少しドキドキしてくる。
しばらくガシャドクロの話をしていたが、アイリーンが魔術について聞いてきた。
「そういえばリオンさんは魔術?というものが仕えるようになったんですよね?」
「うん、そうなんだ。見る?」
「はい!見たいです!」
どうやら魔術が見てみたかったらしい、期待されてるっぽいし気合入れてやっちゃおうかな?
「それじゃあ行くよ?氷華」
「ふわぁ」
僕がそう唱えると、手の周りに魔法文字が現れて魔法陣を形成し光りだす。
その様子をアイリーンが目を輝かせて見ていた。
魔法陣が輝きを強くすると、段々と氷が出来始め華を形成する。
輝きが消えるころには立派な氷のバラが出来ていた。
「状態付与、固定、適温」
このままでは解けてしまい、凄く冷たいので華の状態を固定して、温度も適温に固定する。
そしてそれをアイリーンに差し出す。
「はい、どうぞ」
「え、いいのですか?」
「うん、アイリーンの為に作ったからね」
「あ、ありがとうございます...」
前にアイリーンは華や草が好きだと聞いていたので、氷の華を作ってみた。
どうやら喜んでくれたようだ。
「あら~、良かったわねアイリーン」
「はいお母様、とっても素敵なバラです」
アイリーンは手に持ったバラをうっとりと眺めている。
「ありがとうございますリオンさん、大事にしますね?」
その時見せたアイリーンの笑顔は何よりも美しかった。




