ヤマツの旅館
ヤマツの門を通り街中を馬車で移動している。
窓から見える景色はどれもエタナトとは違っていて、特に服が独特だった。
「面白い服を来てるね」
「あれは着物って言うんだ。一枚の布になってて腰に帯を巻くことで固定してるんだ」
「へ~なるほどね」
しばらく馬車を進むと今日から泊まる宿へ到着した。
馬車から降りて宿を見てみると、かなり大きい。
「ここが今日の宿?」
「あぁ、こっちでは旅館って言うんだぞ」
「旅館か~」
少し歩いて旅館の入り口にたどり着くと、女性が出迎えてくれた。
この女性も着物を着ている。
「クロノエル様、ようこそいらっしゃいました。長旅でお疲れかと思いますので御存分におくつろぎください。私はこの旅館で女将を務めますツバキと言います、よろしくお願いしいたします。」
「あぁ、しばらく世話になる」
そのままツバキさんについて行って旅館の中に入る。玄関をくぐると少し段差があってからエントランスがあり、受付などを行っていた。
「本旅館では基本的に土足禁止となっておりますので、お手数ですが靴をお脱ぎ頂いてこちらのスリッパを履いてください」
なんと旅館全体が土足禁止らしい、面白いな~。
僕は靴を脱いでから用意されたスリッパを履く。ふかふかな出来をしているので足が気持ちいい。これだけでも少し癒される。
「スリッパが気に入ったのか?」
「うん、気持ちいいねこれ」
スリッパの感触を楽しんでいると、女将が説明を続ける。
「お部屋には浴室もございますが、別途大浴場がございます。どちらも温泉が通してありますのでいつでも入ることが可能でございます」
「温泉?」
「はい、温泉とは様々な効能がある湯になります。本旅館の温泉は大変お肌に良く、入るだけでツヤツヤのピカピカになります。女性のお客様に大変人気となっております」
温泉という言葉に首を傾げていたら女将が説明してくれた。
なるほど、肌に良いのかと思っていたら女性陣の目つきが鋭くなっていた。少し怖い。
「お肌に良くてツヤツヤのピカピカに?」
母さんがそうつぶやき、今にも入りたそうにしている。
他の女性陣も声には出さないが大変入りたそうな雰囲気が出ている。
「ねぇあなた、疲れもあることだしまずはお風呂にしない?」
「言うと思った...いいぞ、まずは風呂に入るか」
案の定母さんが父さんにおねだりしてお風呂に入ることになった。僕も初めての温泉だから興味がある。
せっかくだから大浴場の方に行き、男湯と女湯で分かれる。
「そういえば、リオンと風呂に入るのも久しぶりだな」
「確かに、僕が小さい頃は一緒に入ることもあったよね?」
「あぁ、メイドに任せる事もあったが出来るだけ俺たちでやりたかったからな。良く入ったもんだ」
そんなことを話しながら浴室に入ると、壁際に体を洗う場所が並び、中央にとても大きなお風呂が目に入った。
「へ~、これは凄いね」
「あぁ、大したもんだ」
早速体を洗っていく。いつもはメイドたちに手伝ってもらってるけどたまには自分で洗うのも良いね。
「よし、入るぞ~」
「は~い。うわ、凄い」
温泉の湯は白く濁っており、浸かると凄く気持ちが良かった。
しばらくお湯を楽しんでいると父さんが話しかけてくる。
「そういえば道中コボルトに使った魔術凄かったな、いつの間にあんなの作ったんだ?」
「光剣雨ね、ちょっと前に作ったんだけど本気で使うと範囲が広すぎて使い辛かったんだ」
光剣雨は最初雨のように剣を降らしたら強いのでは?と考えて作った魔術だ。
訓練場では一~二本で試してたんだけど、本数を増やすと被害が大きくなるから中々試せなかった。本気で使うとああなると分かったのでコボルトの襲撃はありがたかったな。
「とんでも無かったもんなあれ、俺がリオンぐらいの歳でも出来なかったぞ」
「そうなんだ、なんか意外」
「はは、俺も最初から最強だったわけじゃ無いからな~」
父さんが凄く強いことは知っているので、弱かった頃など想像できない。
「リオンは学校に行きたいか?」
「学校?そうだね、アイリーンやジークが行くって手紙に書いてあったし行きたいな」
「そうか、友達に会いに行きたいか」
勉強面では余り学校に魅力を感じないが、アイリーンやジークが行くと言っているので行きたい気持ちはある。
「リオンが学校に行ったら家が寂しくなるな~」
「そう?」
「あぁ、なにより出発の日にエレナがめっちゃ泣きそうだ。あいつリオンに凄く好きだし」
「僕もエレナと離れるのは少し辛いな」
「そうか、お互い様だな」
そんなことを話していると父さんが少し真剣な顔で切り出してくる。
「なぁリオン、好きな人とか出来たか?」
「好きな人?どうだろう...あんまりわからないな」
物語では読んだことあるけど、僕にはまだ書いてあったような感情は分からない。
「そうなのか?セラやベルとはどうなんだ?」
「ベルは友達って感じかな。セラは...うん、最近スキンシップが激しくてドキドキすることがある」
「はは、確かに最近凄いよなセラ」
好きって気持ちはまだ分からないけど、最近のセラの行動には良くドキドキさせられる。
これが恋なのかな?それとも違うのかな?
「まぁなんにせよ、好きな人が出来たらすぐに伝えろよ?お前はクロノエル家の嫡男なんだ、その辺色々あるからな~」
「うん、分かった。すぐに伝えるよ」
「あと今リオンに一番近い異性はアイリーンちゃんか、あの子はどうだ?文通してるんだろう?」
アイリーンの話題になり少しドキッとする。
「アイリーンはそうだね、凄くいい子だと思う。文章も可愛いし、多分凄く綺麗に成長してるんだろうな〜。あと最近は魔法と体術を使って訓練してるんだって。今度あったら摸擬戦しようって話になってる」
「ふ〜ん?そうか、楽しみだな」
「うん、すごく楽しみ。早く会いたいな~」
そんな話をした後、お風呂から上がり部屋に入る。
部屋は畳というのが敷かれており、独特の匂いがした。
「まだ女性陣は戻ってきて無いか」
「そうみたいだね」
座布団という物が敷かれていたのでその上に座り畳を撫でてみる。
「へ~こんな触り心地なんだ」
「面白いかリオン?」
「うん。本では読んだことあったけど、実物を見るのはやっぱり違うね」
「そりゃ良かった」
「失礼します、緑茶をお持ちしました」
少しすると部屋に女将が部屋に入ってきてお茶を出してくれる。
出されたお茶は緑茶と言うらしい。確かに緑色をしている。
「お、悪いな」
「お熱いのでお気をつけください」
緑茶の入っているコップは円柱状を、手触りはザラザラとしている。
紅茶を淹れるカップとは全然違うな。少し冷ましながら飲んでみるとかなり美味しかった。
「緑茶ってこんな味なんだ、美味しい」
「俺も久しぶりに飲んだがやっぱり美味しいなこれ」
「父さんは前にヤマツへ来た事あるの?」
「あぁ、ちょっと旅をしたことがあってな。よく色んな国を回ったもんだ」
父さんは一時期旅をしたことがあるらしい。クロノエル家なのに良く旅が出来たなって思ったので聞いてみた。
「よく旅なんて出来たね?」
「まぁ武者修行ってやつだ、リーシャも一緒に旅をしたんだぞ?」
「母さんと?そうなんだ、意外」
母さんはいつも家でのんびりしている事が多いから旅をしなさそうな雰囲気がある。
「確かにリオンは今のリーシャしか知らないから意外に思うかも知れないけど、昔はな凄かっt」
「あなた?なんの話をしているのかしら?」
「り、リーシャ...戻ってたのか」
いつの間にか母さんが父さんの後ろに立っていた。全然気が付かなかった...。
「リオンに昔リーシャと一緒に旅をした話をしていたんだ、断じて変な話はしてないぞ?」
「そう?それならいいわ」
母さんには謎の迫力があった。
その後皆が戻ってきたので色々話しながら夕食の時間になり、ヤマツ特有の料理を楽しんだ。
「このスープ美味しいね、ミソが使われてるんだっけ?」
「みそ汁って言うらしいぞ」
初めてみそ汁を飲んだり。
「この野菜も美味しい、不思議な味がする」
「漬物だな」
漬物っていう野菜を食べたり。
「お兄様!このもちもちしたお菓子美味しいです!」
「確か大福だったかな?確かに美味しいね」
大福をエレナと一緒に食べたりした。
時間はあっという間に進み、就寝の時間になる。
布団に入りながら、明日はどんな事があるのか楽しみだった。




