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初めての野営

しばらく馬車が進んでいくと、日が暮れる時間になった。

馬車が停止し騎士が話しかけてくる。


「ヴィンセント様、この辺で野営を始めます」

「分かった、準備を頼む」

「父さん、馬車降りてもいい?」

「あぁ、良いぞ。準備の邪魔しないようにな」

「は~い」


僕は馬車を降りて準備の様子を眺める。騎士たちが天幕を張り、枝を集め焚火の準備をしている。


「マリア、僕も何か手伝う事ってある?」


皆の働きを見ていたら少し動きたくなったのでマリアに聞いてみた。


「リオン様はここでお待ちください、すぐに騎士たちの作業は終わりますので」

「そっか~、少し歩いてもいい?」

「そうですね、少しなら大丈夫ですよ。お供します」


マリアの許可が出たので少し周辺を歩く。野営の準備をしているのは森の入り口で、地面に目を向けると様々な草花が咲いている。


「あ、これ万香草だ」

「本当ですね、こんなところで珍しい」

「う~ん、あんまり良い匂いはしないね」


偶然万香草を見つけたので匂いを嗅いでみたが凄く青臭かった。

その時ガサガサと草が鳴った。


「キュイ?」


音のなった草を眺めていたら大きなウサギが顔を見せた。


「リオン様!ジャイアントラビットです!」

「本当だね、倒したら夕飯が豪華になるかな?」


そんな事を考えながらすぐに魔術を構築し、水槍を撃ち込む。

水槍はジャイアントラビットの頭に命中し倒すことが出来た。


「お見事ですリオン様、すぐに騎士たちを呼びに行きましょう」

「分かった」


マリアと来た道を引き返して騎士に事情を説明し、ジャイアントラビットを解体するための人を借りて戻る。


「おぉ、これは立派なジャイアントラビットですね。すぐに解体します」


騎士たちがせっせと解体していくのを眺めていると一瞬で解体が終わった。


「すごいね、一瞬で終わっちゃった」

「これが仕事ですので」


またしばらくすると夕食の時間になり、僕が狩ってきたジャイアントラビットはシチューの具材になった。


「あら?このお肉美味しいわね」

「それ僕がさっき狩ってきたジャイアントラビットだよ」

「そんなことしてたの?」

「たまたま出てきたんだ~」

「お兄様凄いです!」


皆喜んでくれて良かった、シチューも凄く美味しい。

食事も終わり、焚火を眺めながらお茶を飲む。


「なんか火を眺めながら飲むと美味しいかも」

「そうだろ?野営の醍醐味だ」


お茶を飲んだ後は身を清める時間だ。

お風呂には入れないので専用の天幕で体を拭くことになる。

天幕に入り服を脱いで体を拭いていく。ちなみに今回はセラが手伝ってくれている、ありがたい。


「セラ、背中拭いてくれてありがとう」

「いえ、痒いところはありませんか?ハァ...ハァ...」

「大丈夫、気持ちいいよ」


背中を拭いてくれるのはありがたいんだけど、何故かセラの息が荒い。

大丈夫かな?もしかしたら体調が悪いのかも。セラたちも初めての遠出だし疲れがたまっているのかもしれない。


「セラ?体調悪かったりする?」

「いえ、まったくこれっぽっちも悪くありません。ハァハァ、むしろ絶好調です!」

「にゃん!!」

「ふぎゃっ」


そんな話をしていたら突然レーナがセラの後頭部を蹴り飛ばした。

セラがその衝撃で倒れこんでしまう。


「レーナ!?セラ、大丈夫!」

「いたた...大丈夫...で...す...」


僕がセラを抱えて問いかけると、何故かセラが目を見開いて固まってしまった。


「どうしたの?どこか痛い?」

「(ご、ご主人様が裸で、私を抱きしめていらっしゃる!?こ、これはチャンスなのでは?ここで押さねばいつ押すのセラ、覚悟を決めなさい!)」

「ねぇセラ?大丈夫?」


セラは未だに固まったままだったが、いきなり目を瞑り顔を上にあげた。


「ご主人様...どうぞ、優しくしてください...」

「何をしているのですか?セラ」


その時、またしても地獄のそこから響いていると錯覚するほどの声が聞こえた。

その方向を見るとマリアが経っていたが背後に鬼が見える。


「ま、マリア様...」

「また暴走しましたね、セラ」


僕は余りの怖さに声が出せない。母さんもそうだがどうして怖いときは背に幻影が見えるのだろう?


「こ、これはその、じ、事故なんです!」

「事故でもいけません。さぁ、お説教の時間です。行きますよ」

「待ってください!もう少し!もう少しこの幸せを!」


そんなことを言いながらセラはマリアに引きずられて行った。


「どうしてマリアはあんなに怒ってたんだろうねレーナ」

「にゃん...」

「ご主人様!代わりに私が来たよ~!」


セラが出ていったと思ったらベルが入ってきた。どうやらセラの代わりに入浴を手伝ってくれるらしい。


「ありがとう、あと少しだけどお願いするよ」

「はーい、ピカピカにしちゃうよ~!」


ベルに入浴を手伝ってもらい、レーナも洗ってあげた後天幕を出た。


天幕を出て少しすると就寝の時間になる。そこで母さんがある提案をした。


「せっかくの機会だから、家族みんなで寝ましょう!」

「お兄様!一緒に寝ましょう!」


エレナの目からお願い光線が発射される。僕はこれに勝てた試しが無い。


「しょうがないな、一緒に寝るか。いいよなリオン」

「うん、いいよ。久しぶりに一緒に寝ようかエレナ」

「はい!」


久しぶりに家族と並んで寝床に並ぶと、エレナが抱きついてくる。


「んん~、お兄様~」


そんなエレナを微笑ましく思っているとエレナが体の上に乗って寝息を立て始めた。

少し重さを感じつつも、その毛並みを撫でながら眠りについた。


それからも旅は進んでいくがいろんな事があった。


「お~、コボルトの大群だ。でもどうしてこんな大群で?」

「まぁおかしいのは確かだな」

「父さん、倒してみてもいい?」


馬車で移動している途中にコボルトの大群に出くわした、多分200匹くらい居る。

魔物の大群とは戦ったことが無かったので父さんに提案してみた。


「いいぞ、何かあったら俺がカバーするからやってみろ」

「ありがとう!」


早速馬車から降りてコボルトと退治する。どの魔術を使おうかな。


「作ったのはいいけど、使う機会無かったからこれにしよ。光剣雨」


僕は前に開発した、光の剣を雨のように降らせる魔術を発動した。

魔術を発動すると空に魔法陣が大量に現れ、その魔法陣一つ一つから光の剣が地面に向かって落ちていく。その光景は光の雨みたいで綺麗だった。

戦闘は数分経たず終わる。


「よし、こんな物かな」

「お兄様凄いです!凄いです!」


エレナは無邪気にはしゃいでいるが、その光景を見ていた騎士たちはぽかんと口を開けていた。


「俺たちがいる意味...」

「クロノエル家に仕えている時点で今更だろ...」

「確かに」



また別の日にはこんなことがあった。

ある街に入って宿を取り、僕は久々にお風呂に入っていた。


「レーナも綺麗にするからね~」

「にゃんにゃん」


レーナをゴシゴシと洗っているとガラッと扉が開かれる。


「失礼しますご主人様、ご入浴をお手伝いさせていただきます」

「うん、わかっ...た...」


いつものようにセラが入ってきたのだが、いつもと違いセラは衣服を付けていなかった。


「セラ、服は?」

「そろそろ私とご主人様の間に服は不要かと思い脱いで来ました」


初めてセラの裸を見て顔が熱くなるのを感じる。気が付いたらセラは僕の背後に立っていた。


「それでは、お背中を流させて頂きます」

「なっ!」


その言葉と共にセラが抱きついてくる。さらに僕の顔が熱くなる。


「どうですか?気持ちいいですかご主人様?」

「聖よ、悪しき物を縛り、捕縛せよ。セインアレスト」

「ふぎゅっ」


セラに抱きしめられ固まっていると、いつの間にかマリアが浴室に居て魔法を使ってセラを掴まえていた。


「ついにやらかしましたねセラ、いつかやると思っておりました」

「マリア様!これには正当な理由が!!」

「言い訳無用、行きますよ」


そのままセラは連行されていった。最近セラの行動が過激になっているのでドキドキする。


「また私が来たよご主人様~!」


セラと交代するようにベルが入ってくる。ちゃんと衣服を着ていた、凄く安心する。


「ベルはそのままでいてね?」

「ん~?何が~?」


そんなことがありつつも旅は進み、ついにヤマツの城壁が見えてきた。

城壁越しからでも、その独特な城が見える。


「あれがヤマツ城?」

「そうだぞ、独特だよな」


城壁に近づくと、門兵の格好も随分と違う。

腰には刀を刺し薙刀を握っていて、鎧もプロシオンの物とはだいぶ違う。

この街ではどんなことがあるのか凄く楽しみだった。


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