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ジークと模擬戦

ちょっと長いです。

少しの間を開け対峙するリオンとジーク。お互いを真剣な表情で見つめ合図を待つ。


「始め」


グランが静かに放ったその言葉を聞き、同時に駆けだすリオンとジーク。

その速度は互角であったが決着は一瞬で付く。


「ふっ」

「っ!!」


リオンは上段から剣を振り下ろそうとした。それを一瞬驚いた顔でジークは見たが、ジークの方が一瞬早くリオンの剣の持ち手に打ち込む。それにより剣を離してしまったリオンに剣を突き付ける。


「それまで!」

「いてて」

「ごめんリオン、大丈夫?」


手をさすりながら痛がるリオンを心配して声を掛ける。


「ちょっと痛いけど大丈夫、それより凄いよジーク!」


自分と同い年ながらも明らかに自分より鋭い剣を見たリオンは、摸擬戦には負けたがキラキラした目でジークを見つめる。


「本当に僅差だったけどね。リオンも凄かったよ、かなり驚いた」

「えへへ」


二人が落ち着いたころでグランの講評が始まる。


「まずはジーク、リオンの剣に驚いておったな?それはいかん。常に冷静を心掛けよ」

「はい、わかりました」

「次にリオン殿は少し動きが硬いですな、摸擬戦は普段しますかな?」

「あまりしないかな?」

「では基礎は出来ている用ですし摸擬戦中心に鍛錬を行っていきましょうぞ。実戦に勝る訓練はありませんので」


グランはジークにアドバイスを行い、リオンには訓練方針を提案する。


「分かりました」

「リオン、手は大丈夫なの?」

「少し痛いから直してもらってから摸擬戦するよ」


そういい、近くに控えていた治療師の元へ足を運び治療してもらう。

その近くにいたベルが話しかけてくる。


「リオン様、手大丈夫?」

「うん、少し痛いけど大丈夫だよベル」

「そっか、よかった~」


治療をしてもらいながらしばらくベルと話す。治療が完了し二人の所へ戻るとグランが声を掛けてくる。


「少し休憩したらもう一度模擬戦を行いますぞ」

「よろしくお願いします」


こうしてリオンの訓練が始まっていく。

既に何度目かの摸擬戦が行われている。


「ふっ!」


ジークの剣は相変わらずキレが凄まじく一瞬でも気を抜くと攻撃を受けてしまう。


「なんの!」


摸擬戦の回数を重ねるごとに、どんどんジークと切り結べる時間が増えていく。

ジークの剣を弾き返し、出来た隙に剣を差し込む。しかしそれはジークが意図的に作り出した隙であった。


「かかったね」

「えぇ?」


振られたリオンの剣をジークが絡めとり剣を弾き飛ばす、そしてリオンの首筋に剣を寸止めする。

リオンは何が起こったか分からないという表情で唖然としていた。


「そこまで」

「ジーク、何今の?」

「ふふ、ただのちょっとした技だよ。リオンもすぐ出来るようになると思うよ?」


そしてグランからの講評が二人に行われる。グランの目から見ても二人は摸擬戦をするごとに成長をしており教えるのがとても楽しくなっていた。


「まずはジーク、剣の巻き取りは見事であったが。そこで勝ちを確信してはいかんぞ?常に可能性を考え気を緩めるな」

「はい」


確かにジークは剣を弾き飛ばしたとき、リオンの顔が驚いたのを見て気が少し緩んだ。

それを指摘され真剣に頷く。


「次にリオン殿、実戦における剣が徐々に洗練されてきていますがまだ荒いですな。斬りかかる時の踏み込みも、もう一歩進んでいればまた違った結果になっていましたでしょう」

「分かりました」


講評が終わると既に夕方と呼べる時間に差し掛かっていた。


「今日はこの辺にして起きましょうか」


グランの言葉に二人が頷き、礼を言う。


「「ありがとうございました」」

「うむ、さぁ疲れを癒しに戻りましょうぞ」


屋敷に戻った後、汗を流しジークと二人でお茶を飲みながら部屋で休憩する。

リオンはバトロエル家の話をジークから聞いていた。


「少し調べたんだけどバトロエル家って魔物が多い地域にあるんだね」

「うんそうなんだ、だからあまり父様と母様が離れられないんだ」


バトロエル家は代々魔物の脅威から領地を守ってきた。そのため、領主は中々領地を離れることが出来ない。


「じゃあジークも魔物と戦ったことあるの?」

「うん、あるよ。比較的弱い魔物だけだけど」

「すごいな~」

「本当に弱い魔物だけどね?リオンも戦えば勝てると思うよ」


ジークは領地で既にゴブリンやコボルトといった魔物と戦っていた。


「魔物の多い危険な領地だから、積極的にお見合いしないと相手が見つからないんだって」

「あ~なるほど、そういう事だったんだ」


貴族の女性としては、やはり安心できる領地に嫁ぎたいと思うのが普通であるためバトロエル家の領地は些か人気がない。

そのため、積極的にお見合いをしないと行けないのだがそういったお見合いに限って家柄やお金しか見ていない女性が来るので色々と苦労しているジークであった。


「もうお見合いじゃ無くて学園に行ったときに自分で見つけようかなって思ってるんだ。リオンも学園いくよね?」

「ん~、多分?行くと思う?」


正直なところ、リオンは既に学園で習う基礎的な学習を終わらせていた。

だから学園に行くメリットをあまり感じていなかった。


「そうなの?リオンが学園に来るなら楽しそうだなって思ったんだけど」

「確かにジークと一緒なら楽しそうだなぁ~。うん、行こうかな学園」


こうしてリオンは学園へ入学することを前向きに考えるのであった。


次の日の訓練でリオンにグランがある提案をしてくる。


「リオン殿、ヴィンセント様から聞いたのだが他の武器を使って摸擬戦をしてみませんか?」

「他の武器を使って?いいの?」

「えぇ、ジークもいい経験になるかと思いますので」


ジークは普段グランや父親としか摸擬戦をしていない。そして二人とも剣を使うため他の武器種との摸擬戦の経験が少なかった。


「それじゃやってみようかな?」

「えぇ、よろしくお願いします。何からやりますかな?」

「う~ん」


リオンは訓練場にある木製の武器を眺めながら何から使うか吟味する。


「まずは槍から行こうかな」

「ではそれでお願いします」


こうしてリオンは色んな武器を使って摸擬戦を行っていった。

まずは槍から試し、間合いの長さでジークを翻弄した。


「突き、からの薙ぎ払い!」

「くっ、間合いに入れない...」


槍のリーチを活かして一方的に攻撃していくリオン、ジークはそれを冷静に対処する。

段々と目が慣れてきてジークの動きに余裕が出てくる。リオンが突きを放つと同時にジークが踏み込む。


「ふっ!」

「ここ!」


懐へ潜り込んだジークが下段から攻撃をし、対処できなかったリオンは倒れこんでしまう。


「いたた」

「それまで!」


その後も色んな武器で摸擬戦を行っていく。

弓、斧、刀、薙刀と色んな武器を試している中、ジークが一番苦戦したのが暗器であった。

リオンが腕を振ったと思ったら針が飛んできて、接近してきたリオンの手にはいつの間にか短剣が握られている。

そして超近距離戦になった時のリオンの動きのキレは今までよりも一段上だった。


「よいしょー!」

「くっ」

「ここで蹴りだ!」


リオンは蹴りと叫んでパンチを繰り出す。


「それパンチじゃ、うわ!」


そして放った拳の軌道上に針が飛び出すが、間一髪で回避するジーク。


「う~ん惜しい」


そう言いながらもしっかりと蹴りを放つが崩れた体制ながらもジークは受け流す。

そして蹴りを受けたと思ったらリオンの靴から木製の針が飛び出してくる。


「あぶなっ!」

「これも効かないか~」

「な、なんて卑怯な攻撃なんだ...」


その後も攻防が続いたがリオンの暗器切れにより摸擬戦が終わる。


「う~ん結局ジークに攻撃当たらなかったな~」

「はぁ、はぁ。今までで一番疲れたよ...」


それを真剣な表情で眺めていたグランが話しかけてくる。


「今の動きを見ていたのですが、リオン殿には素手の戦闘に他を上回る才能がありますな」

「そうなの?」

「はい、今までで一番ジークが苦戦しておったので」

「確かに、暗器抜きにしても一番強かった」

「そうなんだ、えへへ」


初めてグランから褒められたので照れるリオン。その日から訓練方針が少し変わっていく。


「始めは剣を教えるために来ましたが、リオン殿は素手の方が得意な様子。なのでリオン殿、本格的に徒手空拳を学びませんか?」

「素手の戦闘は習ったことないからやってみたいかな、よろしくお願いします」

「では予定を変更してこの後は徒手空拳について教えましょう」


こうしてリオンは素手の戦闘訓練を積んでいく。グランに教えられ型や技を習っていくリオンだが、今までの武器以上に体に馴染みドンドンと習得していく。

グランもそんなリオンが面白いのか要らない技まで教えていく。


「リオン殿は身体強化の魔法は使えますかな?」

「あ~、なんか僕が魔法使うと威力弱くなっちゃうんだよね」

「なるほど、十全に身体強化が使えるとこのような技もあるのです」


そう言いグランは身体強化の魔法を施し、拳を下から振り上げる。すると風が巻き起こった。


「おぉ~、これはどんな時に使うの?」

「これは女子のスカートをめくりたいときに使いまする」

「え?なんだって?」

「ですから女子のスカートをめくりたいときに使いまする」

「....」

「お爺ちゃん...」


そんなグランを飽きれた目で二人は見つめた。

そんな日々が数日経ったある日、今日は最後の訓練日である。

この日ジークとの摸擬戦を再開した。

リオンは籠手を装着してジークと対峙する。


「それでは準備はよろしいですかな?」

「「はい」」

「よろしい、では始め」


その掛け声と共に両者飛び出すが、剣を持っていない分リオンの方が早い。

間合いに入らせまいとジークは剣を振るうがリオンはそれを籠手で受け流していく。

リオンは着実に間合いを詰め、ついに拳が届く距離まで近づいた。


「ここからは僕のターンだよジーク」

「くっ」


そこからリオンの怒涛の攻撃が始まる。剣で何んとか捌くが少しずつ攻撃がかすり始める。

ジークは焦ったようにしながら剣で捌き、ついに大きく剣を弾かれてしまう。


「もらった!」


リオンは渾身の一撃を放とうと大きな溜を作る


「甘いよリオン」


しかしそれはジークが作り出した意図的な隙であった。反動を利用してすぐさま体勢を立て直しリオンより一瞬早く攻撃を繰り出す。腹部に直撃しリオンは吹き飛ばされる。


「それまで!」

「ごめんリオン!大丈夫!?」

「ご主人様!?」


意図的に作り出した隙ではあったが寸止めするほどの余裕が無かったため剣を振りぬいてしまった。吹き飛んだリオンに慌てて駆け寄るジークとセラ。


「ごほっ、ごほっ。な、なんとか大丈夫」

「ご、ごめん。寸止め出来なかった...」

「直してもらうから大丈夫だよ、それよりまた引っかかった~」

「リオン様大丈夫ですか?すぐに直しますからね」


腹部が痛みはするものの、またしてもジークの作り出した隙に引っかかったのが悔しいリオン。控えていた治療師がすぐに治療を開始する。


「ご主人様、もう痛くないですか?」

「うん、もう大丈夫だよ」

「そうですか、よかった...」

「あはは、くすぐったいよセラ」


そう言いながらもセラはリオンのお腹を撫で続ける。そこにグランが来て講評が始まる。


「まずはジーク、策を練るならもう少し余裕を持て。もう少し威力が強かったら危なかったぞ」

「はい、ごめんなさい」

「それからリオン様」

「はい」

「リオン様は数日の間で随分と成長しましたな、驚きましたぞ。これからも摸擬戦を中心として訓練していけば良いと思いますぞ。」

「ありがとうございます」


こうして訓練最終日が終わった。ちなみにセラはずっとリオンのお腹を撫で続けていた。


次の日バトロエル家のお見送りをするためクロノエル家は庭先に集まっていた。


「ではクロノエル様、お世話になりました」

「こっちも世話になったな爺さん、リオンが随分と成長してそうで感謝する」

「リオン、この一週間凄く楽しかったよ」

「うん僕も凄い楽しかった」


各々別れの挨拶を告げていると馬車の準備が整う。


「でも、一回もジークに摸擬戦で勝てなかったな~」

「あはは、まだ僕のほうが一日の長があるからね」

「次は勝てるように頑張るよ」

「なら、僕はもっと頑張らないとね」

「じゃあまたね!!ジーク!」

「うん、また会おう!リオン!」


ジークとグランが馬車に乗り込み出発する。

こうしてリオンは徒手空拳という武器を手に入れ成長していく。


この土日スノボに行ったので体がバキバキでめっちゃ痛いです。

あと、PV1000突破しました!ありがとうございます!

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