剣聖がやってきた
しばらくリオンに剣を教えていたヴィンセントはあることに気が付く。
「(あれ?俺の教えられること減ってきてね?、奥義とかはまだ早いし...。あの人に手紙だすか)」
ヴィンセントはある人物に手紙を書くことを決めた。
その頃リオンはエレナと遊んでいた。
「おにいたま、これ!これ!」
エレナは三歳になっており、可愛い盛りである。
「ん?どうしたのエレナ。これは?」
「おにいたま!」
エレナが渡してきた紙には何か棒のようなものを持った人のようなものが書かれていた。
「これ僕かい?凄いじゃないか、良く描けてるよ」
「えへへ~」
そういいながらエレナの頭を撫でる。それをセラが羨ましそうに眺めていた。
「(私もご主人様に頭なでなでされたい...でも、そんなこと頼めないし...)」
「セラ、お茶のお代わりを貰えるかな?」
「はい、ただいま」
リオンのカップに紅茶を注ぎ、差し出す。
「どうぞ」
「うん、美味しい。いつもありがとう、セラ」
「っ!」
そういいリオンがセラの頭を撫でた。まさか撫でられると思っていなかったので少し驚いたが喜びの方が勝り、しっぽがぶんぶんと振られる。
「~~~っ!」
「(しっぽ振ってるセラも可愛いな~)」
「おにいたま!わたしも!」
「ん?ごめんよエレナ。よしよし」
両手に花状態を少しの間楽しんでいると扉がノックされヴィンセントが入ってくる。
「リオン、大体一週間後に...なにやってるんだ?」
「ん?二人を愛でてる」
「そ、そうか」
少しリオンの将来が心配になったが気を取り直して話を進める。
「大体一週間後くらいに剣を教えてくれる先生が来るぞ」
「うん?今父さんが教えてくれてるよね?」
「あ~、そうなんだが。より高度なことをな?教えてやろうと思ってな?」
少し苦しい言い訳をしながら話す。
「お~なるほど、誰が来るの?」
「それは来てからのお楽しみだ」
いたずらを隠すような表情でそう話すヴィンセントに少し不思議に思ったが、両手が忙しいため気にしないことにする。
「おにいたま~」
「ご主人様...」
クロノエル家は今日も平和である。
一週間が経過したころ一台の馬車がクロノエル家に到着する。
出迎えのために庭先に出ていたリオンは馬車に剣が交差している家紋があることを見て誰が来たのかピンとくる。
「(もしかして)」
馬車から二人の人物が降りてくる。
「クロノエル様、お披露目パーティー以来ですな」
「あぁ、よく来てくれた爺さん」
「今日からよろしくお願いします」
「おう、ジーク君もよろしくな」
クロノエル家に来たのはグランとジークであった。ジークに再び会えたリオンのテンションが上がる。
「ジーク!久しぶり!」
「手紙ではやり取りしてたけど、こうして会うのは久しぶりだねリオン」
「うん!来てくれて嬉しいよ」
「あなた、席を用意してあるのだからそちらで話しましょう?」
「おぉ、そうだなリーシャ」
そんな話をしながら応接室に向かう。部屋に入り座ったところでグランが話し出す。
「リオン殿、わしが一週間ほどリオン殿に剣を教えまする」
「そうなんだ、よろしくお願いします?」
「はは、不思議そうな顔をしているな」
なぜグランが剣を教えるのか不思議そうに思っているのをヴィンセントは笑って見ていた。
「うん、剣が凄いって話は聞いていたけど」
「爺さんはな、なんと当代の剣聖なんだ」
「剣聖!!」
剣聖とはこの国で一番の剣士に送られる称号であり、グランはこの称号を30年近く保持したままである。
「クロノエル様から手紙をもらいましてな、リオン殿に教えることが無くなってきたのでわしの方から剣を教えてやってほしいと」
「そうなの父さん?」
「いや、その。まだあるぞ?まだあるがリオンにはまだ早かったりする事で...」
苦しい言い訳である。
「ジークに関し得てはいい経験になると思い連れてきたのだ、これから一週間よろしくお願いする」
「よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げるジーク。
こうしてバトロエル家が一週間滞在することになった。
その日は長旅で疲れていることもあり、ゆっくりと過ごす事になる。
リオンとジークは庭園でお茶をしながら話していた。
「じゃあ、その子たちがリオンの手紙で書いてあった新しい専属メイドなんだ」
「うんそうだよ、セラとベルって言うんだ」
そう言い二人を紹介する。
「初めましてジーク様、セラと申します」
「ベルだよ~」
「こらベル、ちゃんと敬語で話しなさい」
「は~い...」
「はは、元気が良さそうだね」
ベルは相変わらず敬語が苦手なためあまり外のお客の対応はしないのだが、今回はリオンの友人ということで同席している。
「そういえばリオンの方ってさ、婚約者の話とか出てる?」
「婚約者?前に少しだけ話し合った事があったかな?」
「そっか~」
バトロエル家ではすでにジークの婚約者の話が出ており、ジーク自身もお見合いをしていた。
「最近お見合いとかしてるんだけどさ、なんか怖いんだよね」
「怖いって?」
「なんか僕のことじゃなくて家柄を見てる感じ?まだ僕と同じ七歳なのにそーゆー所を見てるのが怖いな~って」
「あ~なるほど」
バトロエル家は辺境伯のため格式が高い、そのためお見合いをする相手の家は家柄目当てで来ることが多かった。
「確かに家柄目当てで来る人は怖いかもね~」
「リオンも気を付けたほうがいいよ?公爵家だし」
「うん、でも僕は両親から自分で見つけなさいって言われてるんだ」
リオンは両親から自分の好きな人が出来たら報告するように言われていた。
「それって誰でもいいの?」
「両親曰く平民でも構わないって」
「へ~、すごいねそれは」
そんな少し将来の事を話しながら時間が進んでいった。
次の日訓練場にはリオン、ジーク、グランの姿があった。
「早速ですが、始めましょう」
「はい!」
「ではリオン殿、剣を振ってみてくだされ」
グランに言われ剣を振り始めるリオン。その素振りを見たジークが驚く。
「(凄いなリオン、まさかここまでとは)」
「ふ~む、なるほど。リオン殿、剣を振り始めてどれくらいですかな?」
「大体半年くらいかな?」
「(ジークに迫る剣の才があるのう)」
そのまましばらく剣を振っているとグランがある提案をしてくる。
「リオン殿、もういいですよ。提案なのですがジークと摸擬戦をしてみませんか?」
「摸擬戦?」
「はい、リオン殿にもいい経験になるかと」
「なるほど。ジーク、あの時の約束が果たせるね」
リオンとジークはお披露目パーティーの時に剣が使えるようになったら摸擬戦をしようと約束をしていたため、それが果たせると喜んでいた。
「うん、そうだね。楽しみだよ」
「では二人とも、少し距離を離して向き合ってくだされ」
両者が向き合い、互いを観察する。
「(凄いなジーク、隙がない)」
「(リオンが使えるのって剣だけなのかな?なんか剣気意外にも感じるけど...)」
準備が整ったのを確認してグランが声をかける。
「それでは両者礼」
「「よろしくお願いします」」
二人の摸擬戦が始まる。
ジーク君、ヒロインより先に再登場です。
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