剣の訓練1
少し時間が進みます、あとちょっと短いです。
初めて魔法を使ってから二年が経過し、リオンは七歳になった。
その間も魔法を練習し、使える魔法の種類は増えたが威力は依然弱いままだった。
ある日魔法の練習をしているとヴィンセントが尋ねてくる。
「リオン少しいいか?」
「ん?どうしたの父さん?」
「ちょっと体を触らせてほしい」
「え゛っ」
その言葉に顔をしかめるリオンを見て慌てて弁明する。
「待て!そういう意味じゃない!そろそろ剣術を教えたくてな。体の下地が出来てるか確認したかったんだ」
「あ~なるほど、そういうことね。わかった」
「じゃあちょっと確認するぞ~」
「はわわわ」
そういって真剣に体を確かめていく。それをセラが顔を赤らめて見ていた。
「うん、この様子ならそろそろ剣を振っても大丈夫そうだな」
「本当!じゃあ教えてくれるの?」
「あぁ教えてやろう、どうする?今日からやるか?」
「うん!今日からやりたい!」
「じゃあ訓練場に行くか」
ヴィンセントとリオンは普段騎士たちが訓練している訓練場に足を運ぶ。リオンはそこで木剣を手渡される。
「まずこの木剣を持ってみろ」
「初めて持ったけど意外と重いね」
子供用の木剣を片手で木剣を持ったリオンはそんな感想を漏らした。
「まぁ木製の剣だからなぁ~、鉄製はもっと重いぞ?」
「そりゃそうだよね~、早く慣れないと」
苦笑いしながらリオンが言い、早く本物の剣を持てるようになろうと意気込む。
「よし、まずは基本の素振りから教えるぞ~」
「うん、分かった」
「頑張ってください、ご主人様」
ヴィンセントは張り切ってリオンに素振りを教えていく。
「まずは剣を両手で持って正面に構える、そして右足を少し出す」
「ん~、こんな感じ?」
「そうだ、そして剣を振り上げて下ろす」
ヴィンセントが剣を振るとヒュン!といい音がする。
「基本はこんな感じだ。いい素振りは今聞いて貰った音がするから、この音がするようになるまでひとまずは頑張れ」
「わかった!」
早速とばかりにリオンが素振りを始める。
「剣を上げて、振り下ろす。ん~?」
素振りをしてみるが、どうもしっくり来ないリオン。そこでヴィンセントの方を見る。
「父さん、もう一度素振り見せて?」
「はは、あぁいいぞ。何回でも見せてやる」
リオンは最初漠然と素振りを見ていたが一度振ってみて違和感を感じたため、今度はしっかりと素振りをしているヴィンセントを見る。
「(なるほど、腕だけじゃ無くて体全体を使うんだ)」
じっと見つめるリオン。重心の移動や腕の動かし方、剣の握り、腰の動かし方を見ていく。
「...っと、こんな感じだ。分かったか?」
「うん、何となく分かったから試してみる」
そう言って素振りを再開するリオン。
一度剣を振ると先ほどよりも様になっていた。
「(おお、さすがリオンだ。今の一瞬で修正したのか)」
「...もっとここはこうして」
さらにもう一度振るとブン!と音がする。その音を聞いてヴィンセントは「おや?」と首を傾げる。
「...重心の移動はもっと丁寧に」
リオンが剣を振るたびに音が鋭くなっていく。
最初はニコニコと眺めていたヴィンセントであるが段々と表情が真剣なものになっていく。
そして剣を二十回程振った頃にヒュン!といういい音がする。
「あ、今のいい感じだった」
もう一度振るとまたヒュン!といい音が鳴った
「父さん、どう?」
「あぁ、いいと思うぞ。もう少し続けてみろ」
「は~い」
「はぁ、ご主人様。カッコいいです...」
剣を黙々と振り続けるリオンを蕩けた顔でセラが眺めていた。
しばらく剣を振っているとヴィンセントが声をかけてくる。
「一旦やめていいぞ、休憩にしよう」
「は~い」
「ご主人様、こちらタオルと飲み物です」
「ありがとうセラ」
休憩に入るとセラがすかさずタオルと飲み物をリオンに渡す。
リオンは少し流れた汗を拭きながら飲み物を飲み、ヴィンセントの話を聞く。
「リオン、提案なんだが。俺の習ってた覇断流の型やってみるか?」
もう素振りは十分と判断したのか、新たな提案をするヴィンセント。
「え、いいの!やってみたい!」
「分かった、じゃあ休憩が終わったら教えてやろう」
それから十分程休憩をしてから訓練を再開する。
「頑張ってください、ご主人様」
「うん、ありがとう」
そういいタオルと飲み物をセラに渡すとヴィンセントが話しかけてくる。
「まず覇断流についてだが、簡単に言うと「剣に切れぬもの無し」って理念なんだ」
「うん」
「だから覇断流を極めると岩でも鉄でも何でも切ることが出来る」
「何でも...」
「そうだ、当代の剣聖なんか空切ってたぞ?」
「空を...」
その話を聞き唖然と空を眺め、空ってどうやって切るんだろう?と疑問に思うリオン。
そのころセラは二人が見ていないのを良いことにリオンの使ったタオルの匂いを嗅いでいた。
「...、スンスン。はぁ~リオン様ぁ...」
変態である。
「それじゃ、覇断流の基礎的な型を教えてくぞ~」
「お願いします」
そう言ってヴィンセントは覇断流の型を実演していく。
「まずは上段の振り下ろしから振り上げ、そのまま剣を右に持っていき左方向に横薙ぎ。そこから振り上げて斜めに振り下ろし...っとこんな感じだ。出来そうか?」
「う~ん、試してみる」
「分からなくなったら聞いてくれていいからな~」
リオンは覇断流の型を練習していく。何度かヴィンセントに聞き、実演してもらいながら着実に習得していく。
一時間もする頃にはある程度型を振れるようになっていた。
それからもリオンは時間を見つけては訓練場で剣の鍛錬を行っていた。
「どう?ベル。前よりも良くなってるかな?」
「凄いよご主人様!剣がシュバってなってる!」
すると訓練場で訓練をしていた騎士の一人が話しかけてくる。
「リオン様、随分と剣の振り方が洗練されてきましたね」
「そう?ありがとう」
「リオン様は剣以外の武器に興味はないのですか?」
「剣以外?あんまり考えたこと無かったな~」
「そうなのですか?では槍などどうでしょうか?突いて良し、払って良しのいい武器ですよ?」
その騎士は槍を得意武器としていたので槍のいい点をここぞとばかりに上げていく。その話を聞き、徐々に興味が湧いてくる。
「なんか話を聞いてると槍も面白そう...」
「おぉ!そうですか!、それでは私がお教えしましょうか?」
「う~んそうだね。少し教えてもらおうかな?」
こうして騎士から槍の使い方を教わるが、剣の経験があるためか剣よりも早い速度で槍をマスターしていく。
「お、おぉ。もう基礎的な振り方はバッチリですね。では実践的な型に参りましょう」
「うん、お願い」
槍を振っていると意外にも上手く振る事が出来たので段々と面白くなってきたリオンはより実践的な教えを受ける。
それを他の騎士が羨ましそうに見ていた。
クロノエル騎士団は実のところ、多種多様な武器を使う人が多い騎士団である。
そのため、リオンに自分の得意としている武器を教えたいと虎視眈々と機会を伺っていた。
この事が、リオンに予想外の成長を与える事になる。
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