遊びに来たライフィエル家
今日は二話投稿します。
王都に来てから6日が経過した、この日はライフィエル家が遊びに来る日である。
約束の時間が迫っているため、お出迎えのためにクロノエル家は庭先に向かう。
「よかったなリオン、アイリーン嬢が遊びに来てくれて」
「うん!たのしみであまりねられなかった!」
「はは、そうか」
そんな話をしていると馬車が一台敷地内に入ってくる。
クロノエル家の前で馬車が止まり扉が開いた。
中からアーロン、アイリーン、女性と三人降りてくる。
「クロノエル家の皆さま、今日はお招き頂き感謝します」
アーロンが代表してお礼を言うがヴィンセントが顔をしかめる。
「今日は公の場では無いし堅苦しいのは無しにしよう」
「一応な、ではそうしようか」
友人ではあるが一応格上の家柄なため、クロノエル家礼を尽くした対応をしたのだがヴィンセントの一言でそれはすぐに終わる。
それからアーロンはリオンの方を向きながら女性の紹介をする。
「リオン殿、こちら妻のグレンダだ」
「初めましてリオン殿、グレンダ・ライフィエルと申します」
そう紹介された女性、グレンダは金髪のくせっ毛で少したれ目な可愛らしい人だった。
アイリーンは間違いなく母親似である事が分かる。
「初めましてグレンダ夫人、リオン・クロノエルです」
そういいリオンは礼を返す。
「リオン殿の話はこの親バカダメ男から聞いていますよ?」
「おやばかだめおとこ...」
グレンダの容姿からは想像できないような雑言が飛んできたため少し驚いてしまう。
「む、グレンダよ...」
「今日はよかったらアイリーンと仲良くしてください」
アーロンが何か言おうとしたが聞こえていないのか、聞こえたが無視したのか話を続ける。
「はい、わかりました」
そう言いアイリーンの方へ向くリオン。
「パーティーぶりだね、アイリーンさん」
「はい、パーティーぶりですねリオンさま」
「そのふく、とっても似合っててかわいいね」
「あ、ありがとうございます...」
アイリーンはリオンの言葉に少し顔を伏せながら照れる。
「むむむ!」
「あらあら、アイリーンったら照れてるわね」
「私が育てましたっ」
その様子にアーロンは難しい顔をし、グレンダは「良いもの見たわ~」とご満悦で、リーシャは胸を張っていた。
「そ、そういえば約束したとおりペットをつれてきたんです」
「あ、そうなんだ!よかったら見せてくれない?」
「はい、ちょっと待ってくださいね」
そこでヴィンセントが話しかける。
「まぁ積もる話もあるだろうから庭園に移動しよう。席を用意してあるんだ」
「うん、わかった」
リオン達は庭園の席まで移動し着席すると改めてペットを見せてもらう。
ライフィエル家のメイドが鳥かごを持って席に近づく。
「こちらがエメラルドバードのココちゃんです」
アイリーンが鳥かごを開けて手を伸ばすと、その手にココちゃんが飛び乗る。
そして見やすいようにリオンの前まで持っていく。
「うわ~本当にきれいなみどりいろだね」
「はい、それにとってもかしこくてかわいいんです」
「キュイ?」
ココはリオンの方を首を傾げながら見つめている。
リオンがそっと手を伸ばすとぴょんと手の上に飛び乗った。
「キュイ!」
「うわ~ちっちゃくてかわいい!」
リオンが指で優しくココを撫でると、もっとここを撫でろと体を擦りつけてくる。
アイリーンは警戒心の強いココがすぐに懐いた事に驚いたが、それよりも優しくココを撫でるリオンの姿に見惚れていた。
「ほげ~」
「いつからココちゃんをかってるの?」
「...はっ!えっと、私がさんさいのころからかってます」
「そうなんだ、じゃあもう二年はいっしょにいるんだね~」
しばらくココの話をしていたがリオンが思い出したように切り出す。
「あ、そういえばアイリーンさんってもうまほうが使えるんだよね?」
「はい、かんたんなものですけど」
「よかったら見せてくれない?」
「いいですよ」
リオンのキラキラした目に少し照れながら了承するアイリーン。
ココを鳥かごに戻した後、手で器を作り魔法を行使する。
「せいめいよ、心いやすたまとなれ、ライフボール」
詠唱が終わるとアイリーンの手の中に緑色の球が浮き上がる。
リオンがキラキラした目でライフボールを見つめる。
「うわ~すごいね!なんか見てるといやされる...」
「はい、そういった効果のまほうなので。見てると心いやされるんです」
それを見ていたヴィンセントがアーロンに話しかける。
「凄いな、完璧な魔法行使だ」
「あぁ、凄いだろう?アイリーンは天才なんだ」
魔法をみて満足したリオンがアイリーンに話しかける。
「アイリーンさんは何かしたいことある?」
「ていえんがすてきなので見てみたいです」
「じゃあ見に行こうか」
二人は席を立ち上がり庭園の方に歩いていく。
「マリア、二人についていってあげて」
「かしこまりました」
マリアが二人の後を追うとアーロンが切り出す。
「さてクロノエル夫人、この間の決着をつけようかと思うのですが如何ですかな?」
「まぁ、いいですよ。決着を付けましょう」
以前親バカバトルをしたが決着は後日という事になっていたのでこの場でその話をした。
まずはリーシャから話し出した。
「うちのリオンは赤ちゃんの時あまり泣かなかったの」
「ふむ、アイリーンは赤ん坊の時から凄く可愛かったのです」
話し出すと相変わらずお互いの背後に竜と虎が幻視できる。
「うちのリオンは言葉を覚えるのが早かったんですよ」
「アイリーンが初めてパパと呼んでくれた時は可愛すぎて天にも上る気持ちでした」
リーシャはリオンが如何に凄いかを話しているが、アーロンは何故かアイリーンが可愛いという話しかしていない。
「うちのリオンは言葉を自力で覚えたのです」
そう、リオンはリーシャやマリアの読み聞かせでほとんど言葉を理解してしまった。
最初は読み聞かせて居たのだがいつの間にか一人で本を読むようになっていた。
「うむ?それは些かおかしくないか?まぁ、うちのアイリーンの方が可愛いがな」
「あなたの話はそれしかないのですか?頭おかしいんじゃないですか?」
アイリーンが可愛いとしか話さないアーロンにグレンダは苦言を漏らす、意外に毒舌である。
一方その頃、リオンはアイリーンと庭園を歩いていた。
「本当によく手入れされていますね」
「ぼくも初めて見たときすごくきれいでおどろいたんだ」
仲睦まじく庭園を歩く姿はまるでデートのようであった。
また、アイリーンは花草に詳しく立ち止まっては話をしていた。
「まぁ、これは「ばんかそう」ですね」
「ばんかそう?」
アイリーンはしゃがみながら一つの草を撫でる。
万香草とは、生える土壌の状態により匂いが変化し、その名の通り万通りもの香りを放つ草である。
その説明をリーシャが行う
「....という草になるんです」
「へ~そんな草があったんだ。ぜんぜん知らなかったや」
説明しているアイリーンをリオンはニコニコと眺める。
「このばんかそうは色んな花の匂いがしますね、このじょうたいはすごくむずかしいと聞くのですごいです」
「たしかにアイリーンのようなやさしい良い匂いがするね」
今日もリオンは教えを守り、アイリーンを褒めていたがそのたびにアイリーンは恥ずかしそうにする。
その後の庭園を案内したり、席に戻ってお茶をしながらアイリーンと話したが楽しい時間というものはあっという間である。
「さて、そうそろ良い時間だしお暇するか」
「えぇ、そうですね。あなた、帰ったら少しお話があります」
「え?」
アーロンとグレンダのその話を聞き凄く寂しそうな顔をするアイリーン
「だいじょうぶ?」
「いえ、もうかえるのかと少しさびしくて...」
「アイリーン、ずっと会えなくなるわけじゃないわ」
「はい、でも...」
グレンダに頭を撫でられながら励まされたがアイリーンの顔は浮かない。
「う~ん、そうだ。なら文通してみたらどうだ?俺とアーロンもよく手紙でやり取りしてるぞ?」
ヴィンセントがそう提案すると目から鱗といった状態で目を見開く。
「ぶんつう...したいです!」
「じゃあ、ぶんつうしようか?」
「はい!ぜったいに送ります!」
「うん、ぼくもぜったいにかいて送るよ」
アイリーンに笑顔が戻る。
一行が庭先へと移動し、ライフィエル家の見送りをする。
「ヴィンセント、今日は世話になった」
「まぁ、こういった時しか会えないからな~。いや、もしかしたら将来もっと頻繁に会うようになるかも?」
いまだに話しているリオンとアイリーンの方を見ながらそういったヴィンセント。
「むむむ!、アイリーンにその手の話はまだ早い」
「あとはお互いの気持ち次第では本当にありえるからな~」
「リオン殿が悪いわけでは無いんだ、ただアイリーンにはまだ早い!!」
「あなた、口うるさいとあの子に嫌われますよ」
「き、嫌わr」
アイリーンに嫌われたことを想像したのか白目を向く。
「それでは本日はありがとうございました。失礼します」
「しつれいします」
グレンダがアーロンを引きずりながら乗り込み馬車が出発し、ライフィエル家の訪問が終わった。
夜リオンは部屋で王都であったかとを思い返していた。
「おうさまとおはなしして」
「アイリーンやジークと友だちになって」
「楽しかったな~」
楽しかった思い出を振り返り眠りにつく。
リオン達はエタナトへ帰還する。