お披露目パーティー1
やっとお披露目パーティーです。
王都に来てから二日が経過した。
その間にリオンは魔力操作をしたり本を読んだりしながら過ごした。
今はパーティーの準備を済ませ、待ち時間に面白かった絵本を読み返しながら時間を潰していた。
「この「いんがおうほう」と「しょぎょうむじょう」は面白かったな~」
因果応報と諸行無常は過去に召喚された勇者がこの世界に伝えた言葉であり、その意味を子供でも分かりやすいように絵本にしたものをリオンは読んでいた。
「(絵本に似つかわしくないタイトルですね...)」
「ねぇマリア、良いことをするとみらいで良いことが起きて、わるいことをするとみらいでわるいことが起きるんだって」
「え、えぇそうですねリオン様。良いことが起こるように普段から良いことをするように心がけましょう」
「うん、わかった」
リオンは最近覚えた知識を伝える事にハマっているので、絵本を読み理解したことをマリアに披露した。
そんな話をしているとヴィンセントが部屋に入ってくる。
「リオン~そろそろ王城に行くぞ~」
「は~い」
馬車に乗り込み王城まで移動する。
遠目で見ても大きかった城であるが近くに来ることでさらに大きく感じる。
「うわ~、ほんとうに大きいね」
「城の一番高いところは百メートルくらいあるらしいぞ?」
「え、そんなに高いんだ」
ほげ~っとした顔で城を眺めるリオン。
王城までの道は今日パーティーに出席する家の馬車が多く走っている。
リオン達の馬車も王城の敷地に入り馬車を降りる。
「クロノエル家の皆様、ようこそいらっしゃいました。会場までご案内します」
城の騎士が出迎え、パーティー会場まで案内をしてくれる。
会場までの道をキョロキョロと見回すリオン。
「リオン、城の中は面白い?」
リーシャが問いかけると不思議そうな顔をしながらリオンが答える。
「なんかまそが変なうごきをしてて面白い」
「どんな風に変なんだ?」
「あそことかあそこにまそが固まってる」
城の中には壁の近くや通路上、天井など不自然に魔素が固まっている場所があった。
「あぁ、城の中は常時色んな魔法が展開されてるからそれのせいかもな」
「なるほど」
そうこうしている内に会場へ到着する。
「こちらが会場になります」
「おう、案内ご苦労様」
「それではパーティーをお楽しみください」
そういい騎士が扉を開けてくれ、会場に入る。
シャンデリアが輝き立食形式のテーブルに多くの料理が並んでいる。
会場の中には既に多くの人が集まっていた。
その中をクロノエル家が進んでいくと、至る所で子供自慢の話が聞こえてくる。
「見てくださいうちの子供を、こんなにも衣装が似合っている」
「それよりも見てくれこの笑顔を、どんな宝石よりも輝いている」
「然り然り」
しばらく会場内を歩き、椅子が置いてある近くのテーブルの前で立ち止まる。
「よし、この辺でいいか。リーシャは疲れたらそこの椅子に座ってくれ」
「まぁ、あなた。ありがとう」
エレナを抱えているリーシャを思いやった場所取りに感激し、ヴィンセントを見つめる。
見つめ合い、二人の距離が近づいていく。
「んん!、リーシャ様、ヴィンセント様。場所をお考えください」
「う、うむ。そうだな」
「あ、あら。ごめんなさいね」
マリアの一声で二人は離れ、パーティーが始まるまで談笑を続ける。
会場に入って少し経った頃、国王が入場しパーティーの挨拶が始まった。
「今日は良き日である、皆の子供が無事五歳まで成長した」
王様の言葉が会場に響く。
「未来を担う子供たちがこれからも健やかに成長することを祈り、挨拶とする。グラスは持ったか?それでは、乾杯!」
こうしてパーティーが始まった。
「よしリオン。陛下に挨拶しにいこうか」
「わかった」
「マリア、少しの間エレナをお願いね?」
「お任せください」
リーシャはエレナをマリアに預け、王に挨拶をするため会場を移動する。
お披露目パーティーでは各家の子供を王様へ報告するのがメインイベントである。
既に何人か並んでいるため、リオン達もその列に並ぶ。
「次、クロノエル家にございます」
王の近くに控えている執事がクロノエル家を紹介する。
「陛下、お久しぶりでございます」
「おぉ!ヴィンセントではないか!よく来た。して、その子が息子かの?」
「えぇ、リオンご挨拶を」
王の前まで出るとそこには40代の覇気を纏った男性が座っていた。
リオンは先日マリアと練習した挨拶を行う。
「お初にお目にかかります、陛下。リオン・クロノエルと申します」
名乗ると同時に右手を胸に手を当て礼をする。
「おぉ、立派な挨拶をありがとう。余はサイラス・プロシオン、このプロシオン王国の国王である」
リオンがサイラスを見ると、サイラスの体は魔素を纏っていることに気が付いた。
「うむ、リオンはいい魔力を持っているな。さすがヴィンセントとリーシャの息子、将来が楽しみである」
「ありがとうございます?」
いい魔力という言葉にリオンは首を傾げる。
「リオン、陛下は他人の魔力を感じられる体質なんだ」
「なるほど、そうなんですね」
「うむ、どうだ?凄かろう?」
「はい、とても」
「うむうむ、リオンはいい子であるな~」
王は慈しむ目でリオンを見た後、その手をリオンの頭にのせ撫でる。
実はこの王様、子供が大好きなのである。
「陛下、そろそろ時間でございます」
「む、そうか。もう少し話したかったが仕方ない」
会場には多くの家が集まっているため話せる時間は短い。
「まだパーティーは始まったばかりだ、ぜひ楽しんでいってくれ」
「はい、では失礼します」
「しつれいします」
王への挨拶が終わりその場所を後にする。
マリアの所へ戻ってくると一息つく。
「ふぅ、きんちょうした...」
「はは、でも立派だったぞ」
「えぇ、堂々とした良い挨拶だったわ」
家族で談笑をしていると、ある人物が子供を連れて近づいてくる。
「ご歓談中の所申し訳ありません」
「ん?おぉ!アーロンじゃないか!」
近づいてきたのはライフィエル一家であった。
「お久しぶりです、ヴィンセント様」
「俺とお前の中だ、堅苦しいのはやめて普通に話そう」
「む、そうか。ではそのように」
「で、何か用があったんじゃないのか?」
ヴィンセントがアーロンに問いかけるとそうだったとばかりに話始める。
「あぁ、うちの可愛い娘を紹介したくてなアイリーン。ご挨拶を」
「はじめましてクロノエル家のみなさま、アイリーン・ライフィエルともうします」
そう言いながら綺麗なカーテンシーを披露する。
流れるような金髪、少したれ目で綺麗な緑色の瞳、天使と見まがう容姿、リオンは少しの間見惚れてしまった。
「ほらリオン?見惚れてないで挨拶を返しなさい」
リーシャに促され挨拶を返す。
「は、初めまして。リオン・クロノエルです」
「は、はい...初めまして...」
リオンは挨拶した後アイリーンを見つめ、アイリーンはほげ~っとした顔でリオンを見つめる。
「何見つめ合ってるんだ?」
「むむ」
ヴィンセントは見つめ合っている二人を不思議に思い、アーロンは少し危機感を覚えた。
そこでリオンがはっとして再び話し始める。
「ライフィエルさんの」
「あ、アイリーンと呼んでください...」
「むむむ!」
その発言にアーロンはさらに危機感を覚える。
「あ、そう?それじゃあアイリーンさんって呼ばせてもらうね?」
「はい!」
アイリーンは花咲く笑顔で頷く
「アイリーンさんのドレス綺麗だね」
「ありがとうございます、リオン様もお姿も素敵ですよ?」
「あはは、ありがとう」
二人の話している姿を若干一名をのぞき微笑ましく見ている。
「アイリーンさんはおうとに来たの初めて?」
「はい、こんかい初めておうとにきたのですが人の多さにびっくりしてしまいました」
「あ~たしかに、ぼくもびっくりしたよ」
お互い王都が初めてだったため、そのことで話が弾む。
「おうとへはりょうしんと来たの?」
「えぇ、りょうしんとペットのエメラルドバードのココをつれてきました」
「エメラルドバード!きっとアイリーンさんの瞳のようにきれいなみどり色なんだろうね。見てみたいな~」
「あ、ありがとうございます...」
リオンはリーシャとマリアに女性はとにかく褒めろと教えられていた、その教えに乗っ取り相手を褒めながら話を進める。
「・・・、お前の息子はどういう教育をしているんだ?」
「うちの女性陣が張り切って教えてたぞ?」
「わたしが育てました」
アーロンがクロノエル家に物申したが、リーシャが胸を張ってそう言った。
「ココちゃんもアイリーンさんににて可愛いだろうな~」
リオンのその言葉に恥ずかしさが限界突破しそうなアイリーンが答える。
「で、でしたらごじつココをつれてあそびに行きましょうか?」
「え、いいの!?」
そういいながらリオンはヴィンセントの方を向き、遊びに来て欲しいと目で訴える。
「まぁ、ライフィエル家の都合が付くようであれば構わないよ」
「じゃあぜひあそびに来てほしいな」
「わかりました、よろしいですか?おとうさま」
「む、まぁリオン殿に今日来ていない妻の紹介もしたいし構わないぞ」
「ありがとうございますおとうさま!」
こうして後日ライフィエル家が遊びに来ることに決定した。
本作のヒロイン第一号はアイリーンです。