ブラウン管の恋人? ~警視庁電脳犯罪対策課~【OAD版】 CASE04:量子力学世界の罠
第四回なろうラジオ大賞参加作品第三十弾!
「光莉ー! どこだー!?」
この世界に人が生まれたように。
電脳世界にて自然と生まれた知的生命体たる電人が起こした事件から半年。
そんな彼らとは異なる種類の電人だった光莉はなんやかんやあり生身を入手し、俺――有悟と本当の意味での第二の生を享受していた。
だがあの事件の後。
電脳世界をズタズタにした電人が全滅したのを機に、電人逹に代わり、世の中をさらに引っかき回さんと生まれた新たな犯罪組織が行動を開始し、俺達は再び電脳世界関係の事件に巻き込まれた。
どうやら俺達でなければ解決できない事件らしいが、もうちょっと光莉と平和な日常を堪能したかったぜ。
だけどその光莉が事件解決にノリノリで。
それに俺は強く意見できず……そして今に至る。
さっきまで俺と光莉は電身状態で犯人を追っていた。
だが犯人が逃げ込んだ先に入った瞬間、急に俺の中の光莉の気配が消え、さらに犯人の気配まで消えた。
『解るまいこの世界は。ここは我らが創った量子コンピューター内の世界ぞ』
『言わばより複雑な事が可能なコンピューター。普通のコンピューターとは異なる法則の世界ぞ』
するとどこからか犯人達の声が聞こえた。
まさか0と1だけの世界に、三つ目の選択肢――0と1の両方という、量子力学の量子の性質と似た選択肢を加える事によって、次元が違うほど格段に演算能力が上がった量子コンピューター内なのか!?
そしてそんな演算能力を用いて、俺達でさえも解析及び対策が難しい特殊な世界法則……同じ場所にいながら、別々の位相に存在しているような状態にでもしたのか。俺と光莉の電身――融合状態は、大ダメージ受けない限り、強制解除される事は絶対あり得んからな。
別々の位相に存在するからお互いを認識できないのだとしたら納得だ。
「だが悪いな。お前達は勘違いをしている」
知らない方のために一応解説するが、最新の研究によれば人間の精神集中は量子関係の現象の一種であり、そして量子力学の用語の中には量子テレポーテーションというのがあってだな。簡単に言えば双子の量子には、たとえ離れていてもお互いの状態を共有する性質があり……つまり精神を一つにした状態の俺と光莉は、その量子テレポーテーションのように、今この瞬間の情報のやり取りができるんだよ!
「『声は聞こえないし気配も感じない! でも気持ちは! 思いは一つ!』」
俺の、いや俺達の中で力が上昇する。
そして俺は光莉と呼吸を合わせ、大技を炸裂させた。
愛は時空を超えるのです!