8・3人の乙女 その5
アンナの大声に2人は、ビックリして振り返った。
「なあに?」
「私、どうしても自分のリップがどれか知りたいの! お願い、協力して!」
「え~? 協力って言っても~」
泣きそうなアンナを目の前にナオミが冷静に聞く
「というか、あなたも職場に戻らなくていいの?」
「……! 今、何時?」
「13時55分ね」
「ひぃいい! 14時から試験の結果発表なの! ごめんなさい。あとで!」
アンナはパウダールームの出口に走って廊下に出た。
と思ったら、すぐ戻ってきて2人に叫ぶ。
「私、化粧魔導士のアンナ! まだ星が無いから見習いだけど!
ごめんなさい、私どうしても自分のリップを見つけたいの。後でまた連絡する!」
そう言って、大急ぎで去っていた。
残された金髪と黒髪の女性はしばらく、ぼーっとその様子を見ていた。
「化粧魔導士……? 化粧魔導士ってあの難しいヤツだよねえ。なんか、すっごく騒がしい子だよねえ~、イメージと違う」
「いるのよ、たまに。こんな老舗の魔導館になぜか採用されちゃう元気だけが取り柄の子。
上から目をつけられやすいのよね」
2人は見つめあって、突然起こった非日常に、くすくすと笑いだす。
金髪の女性は黒髪の女性に手を差し出す。黒髪の女性も呆れ笑いしながら手を握り返した。
「あたしはね~エレナよ。よろしくね」
「……ナオミ・ウォルターズよ」
エレナは、ぐーっと背伸びをしてあくびをしながらけだるそうに話す。
「あ~あ~、仕事に戻りたくないな~。なんだかめんどくさくなっちゃった~」
ナオミもくすくす笑いながら応える。
「そうねえ」
「ねぇ、2人で騒がしい子供の面倒見てたってことにしましょうよ。ドーナツ、好き? 魔
導館の前に新しいカフェが出来たじゃない? さぼっちゃいましょうよ」
ナオミは眉を寄せる。
「……あなたそれ、本気で言っているの?」
「固いこと言わない。10分休憩が30分休憩になるだけよ」
ナオミは声を低くして真剣なトーンでエレナを見る。
「それって……最高のアイデアね」
2人はくすくす笑いあって、一緒にパウダールームを出た。
ドーナツを食べながらの話題はもちろん、さっきまでいた見習い化粧魔導士のアンナだった。
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