7・3人の乙女 その4
アンナの手のひらにある3本のリップスティック。
それが誰の持ち物かについて、パウダールームでは軽いパニックが起こっていた。
「あなたってばもう!」
「ごめんなさい。ああ……どうしよう。どうしたらいいの?」
「んん~。分かるんじゃない? これって、魔導具でしょ? ケースに残りの発動数が書かれているから」
「そっ、そうだよね。私はさっき魔導を使ったからあと『4』のはず……」
アンナはほっとした表情で3本のケースを確認する。だが、3つとも魔導の発動数は『4』と書かれていたのだった。
「嘘……」
「発動数までピッタリなんて……」
ケースに絵が描かれている妖精の表情がなんだか馬鹿にしているようにも見えてきた。
ほとんど同じリップスティック。どれだけ見ても違いが分からなかった。
「まったく一緒に見えるよね~?」
「とりあえず一本ずつ持って帰る?」
金髪の女性は過敏に反応する。
「えええ!? 絶対嫌。あたし、人の使ったリップスティックなんて使えない。無理ぃ!」
もっともな意見だった。
だが、その声にかぶせるようにさらに大きな声を出したのはアンナだった。
「そんなの絶対ダメ!!!!!!!」
アンナの大きな声に、2人の女性は驚く。
そして黒髪の女性は、困った顔をしてため息をついた
「……そうねえ。でも、とりあえず職場に戻らないと」
「もったいないけどさあ、それ捨てよっか」
話がまとまりそうになり、立ち去ろうとする2人の服の裾をぎゅっとつかみ、アンナは引き留めた。
「待ってー―――!!」
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