6・3人の乙女 その3
金髪の女性はパウダールームの天井を見てつぶやく。
「ドラゴンの声みたいだったよね~。空中騎士団かなぁ?」
黒髪の女性は少しため息をついて
「朝もペガサスが飛んでいたようだし、何か事件でもあったのかしらね。それにしてもあなた、驚きすぎじゃない?」
目線があったアンナは、少し怯えながら
「ごめんなさい」
と、しょんぼりして謝る。
その様子を見ていた金髪の女性は
「まあまあ、あたしもビックリしたし。ドラゴンの声なんてなかなか聞かないから、ビックリするよ~」
と慰めてくれたのだった。
黒髪の女性もなんだかアンナが可哀想になったのか、優しい声で
「まあ、そうね。私も驚いたわ。じゃ、とりあえず、リップ返して?」
と、ふんわりと手を差し出した。
細く長い指先には、シンプルな金色のリングが一つだけはめられていて彼女の上品さが際立つようだった。
アンナはうっとりをその手先を見て、そして、重大な事に気が付いて叫んだ。
「あ!!!!」
2人は怪訝な顔でアンナを見る。
「今度は何ぃ~?」
アンナは青白い顔で、2人に話しかける。
「嘘でしょ……リップが……私のリップがどれか分からなくなっちゃった」
アンナの手のひらには同じ、3本のリップ。
その時、パウダールームに今まで一番大きい声が響いた。
「え――――!!!!!」
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