5・3人の乙女 その2
「ごめんなさい」
パウダールームの通路をふさぐように立っていたアンナ達は、そっとその場を退いた。
その時、アンナは金髪の女性が持っていたリップスティックを右手にそっとつかみ、左手には自分のリップスティックを握った。
黒髪の女性は、鏡に向かい自分の顔を覗き込んだ後、ポーチからリップスティックを取り出す。
「うわあ!」
アンナの驚いた声に黒髪の女性は、怪訝そうに鏡越しに見つめる。
「何?」
アンナもまた鏡に向かい交互に自分が持っているリップスティックを指さし、嬉しそうに笑う。
金髪の女性も驚き声を出した。
「あれえ~? すご~い」
黒髪の女性は、ようやく理由が分かったみたいで、ああ……と声を出し
「同じリップスティックってこと?」
と、返答した。
「うん! あのね、私たちは『踊れる泉の妖精』シリーズの『桃色の羽』だったの。あなたは?」
黒髪の女性は、面倒くさそうにリップスティックに書いてある品番を見て答える。
「『踊れる泉の妖精』シリーズの……『桃色の羽』」
アンナは2人の顔を交互に見て喜ぶ。
「すごいっ! 3人とも同じ色ね」
金髪と黒髪の女性はこの先、何を話したらいいか戸惑い、その場を立ち去ろうとした。その時だった。空から耳をつんざくような獣の鳴き声が聞こえたのだった。
「グオォォオオオオ!!!!」
「きゃああああ!」
アンナは急な声にびっくりしてよろめき、ナオミにぶつかる。
「あっ」
その衝撃でナオミのリップが床に落ちてしまったのだ。
アンナは急いでリップスティックを拾う。
「ごごごごごめんなさい」
アンナの手にあるのは、3本のリップスティックだった。
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