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4・3人の乙女 その1


 レティシアのパウダールームでアンナは鏡を見ながらため息をついた。


 中央魔導取引所へ金の魔導石を引き取りに行き、レティシアに戻ってきたのは午後を少し過ぎてからだった。


(魔導石ってなんであんなに取り扱いに慎重なのかな。身分確認だけで1時間かかったよ)


結局今日は呪術式に参加する事はできなかった。午後は会議の書記と、魔導素材の原材料を測る仕事があり、アンナにとっては憂鬱なものだった。


(それになにより、午後は発表があるんだよねえ……)


アンナはその事を考えると、不安で不安でしかたなかった。

星付きの魔導士の実技試験の結果だった。まずは実技試験があり、その後に学力試験がある。2つの合計が130点以上だと、ハーフの星が与えられ、ようやくアンナも見習い化粧魔導士から卒業できるのだった。


(実技は大丈夫だと思う。たぶん、たぶん……!)


不安になったアンナは、鞄の中から小さい袋を取り出す。

その袋の中には、湖で踊る妖精の装飾が描かれた銀色の小さなリップスティックが入っていた。

ケースには数字が書かれており、「5」と描かれていた。


(あと5回。でも……こんなドキドキのまま午後を迎えられない)


アンナはリップをそっと唇に載せる。

桜色の柔らかいピンクはベールをかぶせるようにアンナの唇を艶やかに輝かせ、最後にキラキラと氷が砕けるような音を立てて光った。


ケースの数字は雨で滲んだようにぐにゃりと曲がり、「5」の数字は「4」と変わる。


「あと、4回」

アンナは静かにつぶやいた。

このリップスティックには「元気」が出る魔法がかけられていて、塗った人の心を明るくさせる効果があった。

アンナは実技試験の本番も含めて、何か緊張する事がある時はこのリップスティックを塗る事にしていた。


鏡の中に映る自分は、どこかしら可愛く見える。肌も血色がよく、目も輝いている。

冴えない自分のはずなのに、捨てたもんじゃないんじゃないかと思えてくる。

なんて素敵な魔導具なんだろうと改めて思う。


「うん。がんばろ」


鏡に向かってつぶやいた時、後ろから甘い声した。


「あらっ、それって春の新作じゃん。たしか『踊れる泉の妖精』シリーズでしょ?」


リップスティックの品番を言い当てた声の主は、綺麗な金の髪と長い手足を持っている美しい女性だった。


「うっ、うん! そう」

「あたしもね、持ってるよ~。ほらあ」


そういって、化粧ポーチから取り出したのはアンナと同じリップスティックだった。


「本当だ! お揃いだね」

「うん。色も同じかな? あたしはね~『桃色の羽』だよ~」

「あっ! 私も私も! 元気になれるやつでしょ! 一緒だ!」


アンナは嬉しくなってつい金の髪の女性の手を握る。


そんな2人の後ろから、また声がした。

「どいてくれない?」

低い清廉そうな声、そこには褐色の肌と黒い髪を持った背の高い女性が立っていた。


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