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「あっちぃ~・・・・」
まだ少し早いと感じる猛暑に朝から愚痴る少女
薄着の部屋着にみをつつみ、頭は寝起きの為か髪がぼさぼさになっている。
「おはよ~由紀、顔洗っておいで朝ごはんはできてるから、学校しっかり食べて行けよ。」
「・・・は~い」
寝ぼけ眼をさすりながら娘の由紀は洗面所に向かう。
「お父さんもう行くから!戸締り頼むよ~!!」
「はーい」
あれから15年たった、父親の自分が言うのもおかしいが、すっかり高校生になった娘、由紀は妻に似てかなり美人さんになった。
朝は少し弱いが、仕事終わりの俺に夜ごはんを作ってくれてたり、もういつ嫁に行っても恥ずかしくない、、、
いや、やらんけど
娘はなぜか、男運がない
まじで、ない
なぜ高校生でそんなダメンズにモテるのか分からないが、勘弁してほしい。
クラス1の問題児ヤンキーや、ギャンブル中毒大学生、他にもいろいろ声をかけられたりしているらしい。
・・・ダメンズぶっ殺すぞ
友達には恵まれているみたいで、友人達が必死に防御しているらしい。
おかげで高校では高嶺の花のような扱いらしい。
・・・ナイス友人!!!
そんなことを考えながら会社への道を歩いていく
「あっちぃ~・・・」
娘と同じ気持ちになりながら襟元をパタパタさせて少しでも涼しくなろうと試みる。
クールビズも当たり前の世の中で上着着用を義務付ける会社に、なんてお堅いお偉いさんなんだろうかと、ボヤいてみる
会社まであと10分程の交差点にたどり着き、会社に着いたらアイスコーヒーでも飲みたいな、なんて考えていると、物凄い勢いで走る車がこちらに向かってくる。
そんなに急いで危ないな~、と思いながら見ていると進路がおかしい気がしてきた。
「あれ?、車道飛び出すんじゃない?」
そうつぶやいた目の前にはもう車が迫っていた。
(あっ・・・こんな時動けないもんなんだなぁ)
そう思った瞬間、ドンッ!!と跳ね飛ばされる。
「・・・ッ!!!!」
声にならない声が漏れる。
全身の感覚が無い。
これは死ぬ。
直観が訴える。
こんなとこで終わるのか。
ふざけんな、まだ娘の晴れ着も見れてないんだぞ!!
天国の妻とも約束したんだ!!
娘を、由紀を守るって!!
頼む神様、仏様、何とかしてくれ!!
・・・蓮、助けてくれ・・・
「もう!しょうがないなぁ紅君は、私がいないとやっぱりだめなんだから」
薄れゆく意識のなか俺に話しかける蓮の声を聞いたきがした。