隣国より嫁いで半年、そろそろお時間です!
後書き沢山書いているのでここで報告させて下さい。
ジャンル別日間異世界恋愛部門で1位にこの作品がなりました。
皆さんありがとうございます。嬉しくて泣いてます!
これからも頑張ります!
「まただわ」
ひとりでに声が漏れる、湯船の湯を替えていない。
「この湯は何日目かしら?」
毎日入浴毎に捨てられて湯船の清掃もやる筈だが其れすらも怠っている様だ。
浴槽は濁り指を少しつけるとヌルヌルして髪の毛も浮いていて見るからに不潔で汚い状態だ。
ため息を吐くと湯を全部抜く、シャワーでザッと流してからシャワーを浴びる事にする。
「こんな地味な嫌がらせして子供みたい」
私がこの言葉を投げかけるのは王妃様に向けてだ。
私は側妃、リアーナ。この国の第二妃である。
王妃、第二妃の二人しか居ないので自然と矛先は私へと向かう。
成りたくて成った訳でも無いのにこの扱いは何だろう?
部屋付きの侍女もいないこの状態で棚に有るタオルを自分で取る。
髪を豪快に拭いていると恐る恐る小間使いが一人入って来た。
「お着替えをここに置きます」
そう言って逃げるように去って行く、いつもの事だ。
この国のもっと身分の低い貴族子女でも入浴介助はして貰っているだろうに。
隣国より王妃になるべく嫁いでみるともう既に伯爵家令嬢を王妃として娶っていやがった。
相思相愛で婚約者として過ごしてきたからうんぬんかんぬん。
私は好きで此処に来た訳じゃないし、お呼びが掛からないなら好都合と思って割り切っているんだけど。
王妃様はそうはいかないみたい。
形ばかりで良いと言ってるのに何が不満なんだろう?
私じゃなかったら国許に連絡行ってまた長い長い戦争だよ。
つらつら考えてたら湯冷めしちゃう、シャワーだけだからうぅぅぅ寒い!
サッサと髪を乾かして寝よう。
バスタオルを胸で留めてドライヤーで自慢の銀髪を乾かし始める。
「何故そんな事をしておる」
そんな声が掛かる。
鏡越しに視線を上げると私の夫と思われる王様がそこに立っていた。
「風邪を引くからですわ」
淀みなく答える。
「とにかく何か着るんだ、何だその格好は」
仕方なく小間使いが用意した粗末な着替えに袖を通す。
「メイド達はどうした」
私のメイドは小間使いが一人だけ、今は夕食のカートを取りに行っている筈だ。
「一人おりますが夕食を取りに行ってます」
「一人だと?」
「えぇ、一人で十分だと王様の指示ではないのですか?」
ガラガラガラ⋯⋯。
その時小間使いがカートを押して入って来た。
「お前ノックはどうした」
「あぁぁ⋯⋯」
入るなり怒鳴られて小間使いは萎縮して頭を抱えて震え出した。
「その子は言っても余り意味を理解出来ない様です、何度も注意したのですが」
王様に従ってこの離宮に来た侍従達は唖然とする。
王様はカートに掛けられた布を取る。
「何だこれは?」
「私の夕食だと思います。毎日そんな感じですから」
カートにはパンが一個と具の少ないスープが少しだけ盛られていた。
「これは」
そこに居る一同が食い入る様に見て居る。
「この国では余程困窮している様ですね、上の者がこれでは下々の者は何を食べて居るのやら?」
「⋯⋯」
「所で豊かな水の国と伺いましたが水も節約するのですね、黙っていたら3、4日は浴槽の水も替えられませんし皆さんご苦労なさって居るのですね」
「⋯⋯」
「そうですよね、他国に向けても困窮を知られる訳にはいきません。派手に着飾っていてもそれは表向き、皆さんもご苦労が絶えませんね」
憐れみの視線で皆を見回し
「シャワーのみなので湯冷めしました、皆さんお引き取りを。風邪を引いても医者すら呼べないでしょうし」
そして王様に向けてペコリと一礼すると粗末なベッドに横になる。
小間使いを連れて皆ですごすご去って行った。
「これくらいの嫌味言っても良いわよね、もっと挙げればあったのに感謝して欲しいわ」
夕食には手を付けずそのまま眠りに就いた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
朝、目が覚めるとドアの傍にメイドらしき者達がズラリと並んで立っていた。
「リアーナ妃殿下、おはよう御座います」
「何事なの、そんな大勢で」
「王様の指示で参りました」
「まぁ、この国が困窮して居ることは既に知っています。急に取り繕わなくても国許にはもう手紙を何通も送っていますから今更結構よ」
「妃殿下、お召し替えを」
「この国に来てから自分で出来るようになったの、必要無いわ」
「そんな⋯⋯」
「さぁ、貴方達はこの国を立て直す為にやる事があるのでしょう?土木工事?其れとも農業かしら。其々持ち場に戻りなさい」
「こちらの担当になりましたので」
「国の実情が火の車だと分かっています。あなた方もこの国に生まれて可哀想に。随分と我慢しているのね、私の生まれた国ならこんな苦労は無かったでしょう。お腹が空いているのではなくて?」
「⋯⋯」
「そうだ、此処にいる者は全員首にしましょう。城も人員削減しなければ」
「そんな⋯⋯」
「王族一人にメイド二人もいれば交代出来て十分じゃないの。私は此処半年一人しかいなくても出来たわ。お陰で何でも一人で出来るようになったわ、祖国では二十人以上付いていたのにね」
すごすごと十人程が出ていく。
「あの者達の名前を教えて頂戴、クビリストに挙げておくわ」
「妃殿下お許し下さい」
「許す?そうね、こんなに国民が困窮して居るなら我が国が滅ぼせば良かったわ、温情が仇になったと言う事ね」
「誰が聞いているやも知れません、滅多な事は」
「お兄様に頼めば直ぐよ、私の心配?私には手出し出来ないの。傷一つ付けられないわ。やってみる?」
そう言ってにっこり笑ってやる。
最後に残った者も出て行ったのを確認してドアに鍵を掛ける。
念の為結界も張って。
そしてゲートを出して懐かしの自室へ帰る。
「姫様、お帰りなさいませ」侍従他ずらっと勢揃いして居る。
「ただいま、お腹空いちゃった。何時ものお願い」
毎朝、いや頻繁に帰っている、隣国に。
食事は此方で済ませている、毒でも盛られかねないから。例え水一杯でも飲まない。
実は私、魔法が使える。
結界からゲート、異空間庫も持っている、だから困る事はほとんど無い。
でも教える気も無い、いずれ滅ぼす予定だから。
城の人員も減らしておかないと被害が出るし。
なんて親切!今日も自画自賛しながらパンケーキを頬張るリアーナなのでした。
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感想を下さった沢山の皆さんありがとうございました。
お返事の時間が取れないので、一旦閉めさせて頂きます。
よく読んで今後の参考にさせて頂きます。
もしこれから書こうと思っていた皆さま申し訳ありません。
また時間が取れたら開けますので。<(_ _)>
これからも仲良くしてやって下さいませ。