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銃撃戦

作者: 手鞠凌成

試しに書いてみた「ガンアクション」ものです。

  ズダダダダダ・・・・・・・


  銃声のリズミカルな音楽が荒野を奏でる。

  緊迫感がこの界隈の空気を締めていた。

  今や鉄くずとかした横倒れとなっているハンヴィーの後ろに一人の青年――ミランダが迫り来る銃撃を耐えている状態であった。


 迷彩服の軍服を身に纏い、上半身には紺色防弾チョッキ。そして腰にはマガジンポーチが幾つか付いたベルトが巻かれている。また、黒の革製のホルスターがぶら下がっていて、中にはガバメントM1911が収納されていた。


「………」

 

 ――音が、止んだ。

  弾倉(マガジン)が切れたのだろうか。様子を窺おうと、ちらっと顔を出す。

 

 その刹那、ヒューンと空気を切り裂く音が耳を掠める。


「え……?」

 

  戸惑っているのもつかの間、すかさず銃弾が地面に接触し、弾けた。そこからは延々の連撃である。

 

(ひいぃぃぃぃぃぃぃぃーーっ!!)

 

  恐怖がミランダの身体を一瞬で染め、瞬時に身を引っ込める。

 

  やっぱり、死ぬのは怖い。死ぬのはきらいだ!

 

  ブルブルっと身体を震わす。

 

  戦闘前に隊長が宣誓した、


『我々、防衛機動隊は死んでもなお! 諦めるな!! 死んでもなお!! 銃を発砲し続けろ!! この国に秩序と安寧を齎らすのだーーー!!」

 

 の言葉。


「はぁーーー」


  思い出し、盛大なため息をついた。


(すみません、隊長。僕には無理なようです・・・・)

 

  心の中で謝りつつ、どうこの状況を打破するかを思案することにした。


  ズダダダダダダダダダ・・・・・・・


  銃声は絶えることなく轟き続ける。


  ミランダは腕に抱えている自分の相棒――ヴィントレスを眺めた。

 

  またの名をVSS。

 

 口径9mmで7.62×39mmのSP―5を使用している。亜音速弾であり、発砲してもソニックブームは引き起こさず、音は出ない。更に消音器(サンプレッサー)は不要だという夢のような狙撃銃だ。

 

  通常の狙撃銃だと銃弾を放つ際、雷管を打つ事による火薬の爆発が音と衝撃となって空気を揺らす。


  それを、小さな"衝撃“だけで済ませてしまうのが恐ろしいところで、それこそ肝なのだ。

 

  また、この機能から、周りで『卑怯な銃』だとも呼ばれているが、ミランダにとっては何回も命を救ってもら恩人(?)でもある。

 

  ヴィントレスは面白い形状をしていて、筒状の銃身に、銃床(ストック)と一緒になったグリップ。

 

 そのため、頭から尻までライフルのように真っ直ぐななっておらず、途中で段差が付いてしまっている訳だ。

 

  銃床(ストック)の中心には楕円系の空間があり、間にはなんのために使うのか分からない一本の柱が立っている。

 

  ミランダは右手でグリップを確かめるように何度か握ると人差し指を引き金(トリガー)に軽くかける。もう片方はグリップの前の、銃身(バレル)に突き刺さっている弾倉(マガジン)の手前に添えた。

 

 準備万端だ。後は――タイミングを測り、撃つチャンスを見極めるだけだ。

 

  身体を地面に突っ伏すと、腹這いに左側に進み、ハンヴィーのフロント部分の所まで近づいたらしゅぱっと態勢を片膝立ちに変える。

 

  ちらっと銃口を出すと左目を閉じ、右目でスコープを覗くと前方を見据えた。きらりとエメラルドの瞳が光る。


(さてと〜? どうなってるかな〜?)

 

  ニヤリと嫌な笑みを浮かべると、舌を出し乾いた唇を舐め潤す。ミランダいざ銃を構えたり、直面に立ち会うと性格が変わるタイプなのだ。


  ここからだと、半壊した塀の後ろに四、五人隠れていることが確認できた。しかし、いずれも銃だけを突き出しているだけでヘルメットも見えない。位置的な問題もあり他のを狙うのは難しいだろう。


 すると、自分から直線上に銃口をこちら側へ向けている兵士を一人発見した。


(お、やっと見つけたー。さっき銃弾を放った恨み晴らしてやる)

 

  実際、その対象が自分に被害を与えたのかは不明である。

 そもそも、誰が自分に銃撃を与えようとしたのかも分からない。が、今のミランダにとってそれはどうでもよかった。

 とにかく斃したい。それだけである。


 ・・・・八つ当たりだった。


 迷彩柄のヘルメットを頭に被っている。

 ここから撃てる部位としたら顔面である。目に当たったら最高だ。もしくは額が眉間。とにかく脳に傷さえ付ければ十分だ。

   

 安全装置(セーフティー)を外し、狙いをつける。


 彼我との距離は約800m。有効射程範囲内だ。チャンスは一回のみ。武装兵士は腰くらいまでしかない塀から顔だけを覗かせ、警戒しているのかきょろきょろと辺りを見渡している。


 牽制射撃をしたとして、相手は恐れ身を隠すか、それか逃げだすか。それとも反撃しようとして半身を出すか。

 無論ここは戦場だ。逃げ出すなんて弱者(チキン)がやる事なので、その可能性は低いと思うがその時はその時だ。

 大体が後者の方を選ぶだろう。

 だとしたら、どうにかして全身を現してもらわないと困る。

 そうすれば少しでも身体の何処かに当たる確率は増えるものだ。


 さて、どうしたものかと思考を巡らす。


 実はミランダは他にも銃器を備えているのだ。今はヴィントレスだが、ミランダがいる隣には大きなバックパックが据えられ、周りに三つの銃器が乱雑に重ねられていた。


 一つはアサルトライフルであるHK416。


 一つはM203グレネードランチャー。


 そして最後の一つはマシンガンのP90。


 いずれも、死体となってしまった同じ隊の武器を受け持っただけである。何か使い道がある筈だと踏み、行動に起こしただけなのだ。


 こんないい武器を放っておくのは勿体無い。宝の持ち腐れ。武器は使ってからこそ意味がある。


 右頬を銃身に更に密着させ、スコープの向う側にいる敵に狙いを引き絞る。


 蒼く透き通る空に浮かぶ太陽は燦然と煌めき、この惨憺たる戦場に光を齎してくれる。


 砂煙が一瞬巻き上がり、そしてすぐに空気に溶ける。


 風を肌で感じつつ、銃口を少し斜め右に移し、調節する。


 狙撃者(スナイパー)はどの銃よりも遠く離れた位置から銃弾を放つ。そうすると、様々な力が働くため狙い(エイム)を敵に合わせただけだと中りはしないのだ。


 重力、引力、コリオリの力、風の抵抗・・・・。

 また、自分のいる位置、場所、環境変化による風力の差からも把握し計算。数値化しそれに応じて自分も行動しないといけないため、すぐに順応し、対応していかなければいけないのだ。狙撃は高度な技術が必要とされる。


「ふーー」


 短く息を吐き、どくどく脈を打っている心臓を落ち着かせる。何度か深呼吸をくり返した。


 そして、瞑目すると目を開け、的を見つめた。


 緊張の一瞬である。


 ――人差し指に力を入れ――引き絞った・・・・っ!!


 刹那、パシュッと空気の抜けるような音とともに空薬莢が右に大きく飛び、地面に何回かバウンドした。


 静かだ。静かすぎて放ったのかも分からない。


 身体はちょっとの振動で収まった。


 スコープ越しに前方を見る。すると、武装兵は目から血を吹き出しながら頭をがくんと仰け反らせ、倒れていく姿を見送った。


 ミランダは見事にたった数センチの的を射抜いたのだ。


「よしっ!」


 ガッツポーズを決める。やっと一人目だ。

 もうあの武装兵は再起不能だろう。戦場には戻れない。この調子でどんどんと数を減らしていきたい・・・・のだが、そうそう上手くいくはずもなく。その途端に銃弾の驟雨が押し寄せる。ハンヴィーのボディーを激しく打ち付け、地面を抉った。

 咄嗟に身体を隠したため銃傷は負わなかったが、先程までのと明らかに相手の射撃が一層濃くなっているのが分かった。仲間の一人を殺されてそれが火種となり、彼ら(?)の殺気に火をつけたのだろうか。


 どっちにしろ、いつまでも足止めを食らってちゃ前にすら進めない。戦況はますます過激になってきてるだろう。早くこの戦いに終止符(ピリオド)を打ちたいものだ。しかし、この戦いが終わるのはどちらかが降服するか、殲滅させられるかの二つだけだ。


 早く家に帰りたいなーと心の中でぼやく。


 その前に、まずは自分の状況をどうにかして打破しなければならない。打開策を練らなければいけなかった。


 腕を組み、胡座(あぐら)をかく。銃撃が金属にあたる音をバックに考え始めた。


(今自分の手元にあるのはアサルトライフル、単発式のグレネードランチャーにマシンガン。どれも込められてる弾数も少ないし、マガジンも今装着しているのだけ。

 グレネードランチャーに関しては一発分しか手に入れられなかったし。さて、どうしようかなー・・・・)


 うーんと頭を悩ませていると不意に、鼓膜を打ち破るような銃撃音が止んだ。なんの前触れもなく。

 金属同士がぶつかり合うあの甲高い金僕音も消失していた。


(? どうしたんだろう・・・・)


 不思議に思ってると今度はザッザッザッザッという音がどんどんと大きくなってきていた。

 何事かと感じていたら、すぐにそれは跫音だと気付く。

 ヴィントレスを地面におくとアサルトライフル――HK416を手に取り、後方へ飛び下がると銃口を左右に振りながら、何時両サイドから現れてもいいように、構えた。


 どくどくどくどくどくどく。


 長遠距離は得意だ。でも中遠距離だとどうなるか分からない。銃弾がどれくらいの速さで飛ぶのかを知っている。だからこそ、このたった数メートルの長さが恐いのだ。防弾チョッキを備えてるとはいえ、他の部位はがら空き。その部分に銃撃を一発でも当たれば、この後の自分の命はないだろう。


 あの銃撃音が止んだってことは、塀にいた武装兵が自分の許に数人攻めてきてるということになる。


 それこそ挟み撃ちにされて、自分は死ぬ。


 足音は刻一刻と迫ってきている。時間の問題だった。


 目を光らせる。全ての動きを見逃さいように。すぐに反射的に撃てるように。人差し指に力が籠った。


 ――瞬間、フロントの所から影が差し、瞬きすら与えぬ与えぬ速度で・・・・。


  バンッ!! と一発の号砲が鳴り響いた。



読んでくださりありがとうございました。

他の小説も製作中なのでお待ちくださいm(_ _)m

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異世界 ラブコメ
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