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36 呪禁の護符




 夕刻になり、俺とタータは大聖堂に戻った。儀式は終わっており、ルベロとラモンが迎えた。


「お帰り。呪禁の護符が完成したよ」ルベロがそう言い、俺に一枚の護符を手渡した。


 大きさは手の平ほどで、聖なる印紋が刻まれ、いにしえの文字で何やら書かれている護符だった。


「この護符がこの世にある限り、ザウロスは本領を発揮できぬ。そして、この護符を使えば、ザウロスの護符を処分することもできる。ザウロスに対して、対抗する力を持つ護符じゃ。どうか大事に持ち帰り、ドゥルーダにわたしてもらいたい。」


「ルベロ様、ありがとうございます」俺達は礼を言った。


 聖堂を出ようと踵を返したときに、ルベロが俺を呼び止めた。




「プッピよ。お主にだけ話があるのだ。ちょっと残ってくれぬか」


 俺は了解し、聖堂に残った。ラモンとタータは先に外に出て行った。




「お話とは?」俺は聞いた。


「祈祷師の仕事は、人の念を感じ取る事だと、わしは今朝話したね。そこでだ。ラモンと共に儀式をしている間に、わしにはいろいろな事が見えてきたのだよ。それをお主に伝えておこうと思ってな」ルベロは言った。


 そして、話を続けた。


「ザウロスは今、新たに宿主となり得る肉体を探してこの世界のどこかを彷徨っておる。そしてザウロスはな、お主のことを相当憎んでいるようだ。ザウロスは、復活したのちには、お主に報復しようと企んでおるようだよ。……そこで聞きたいのだが、プッピよ。お主は、この世界の人間ではない? 違うか? どこか、別の世界から来たのかい?」


 なぜわかるのだろう。この老人、本当に只者ではない。


「はい……。ルベロ様に誤魔化しは通用しないと思うので、正直に言います。そのとおりです。私は別の世界からやって来ました。……なぜ、わかるのですか?」


「人は誰でも、生まれてからずっと、沢山の念を浴びて生きておる。誰もがじゃ。念を放って、念を受けて、人は齢を重ねていくのだ。そして、わしにはそうした念が見えるのじゃ。


 たとえばラモン。彼に今日一日、儀式に付き合ってもらい、いろいろな事がわかった。彼の生い立ち、彼の人生、何から何まで、わしにはお見通しなのじゃよ。ラモンが話したわけではないぞ。わしには見えるのだ。それから、たとえば、あの娘様。タータという名かな。彼女は、あんたの事を好いとるようじゃなぁ。……まぁそれはさておき、わしには全てお見通し、という事さ。


 でもな、お主はな、見えんのじゃ。……そりゃ、少しは見える。しかし、お主の年齢に見合った物が、何一つ見えんのじゃ。まるで白紙じゃ。……わしが考えるに、お主は元々この世界の人間では無いのだろう。恐らくじゃが、お主は、どこか別の世界から来た。その世界は、この世界とは全く違う場所じゃ。だからわしには見えんのだ。そして、お主がこの世界に来たのは、きっと今から半年も前という所だろう。……ちがうか?」


「……全く、その通りです。ぐうの音も出ません」


「そうじゃろう。……しかしわしはな、お主の正体を暴こうなどと野暮な考えでいるわけではないぞ。これ以上詮索はせん。安心せい。それよりも、心配な事があるのだ。


 ザウロスはな、お主のように念が少ない肉体が大好物なのだ。そういう肉体は、操りやすいからな。下手をすれば、ザウロスはお主の身体を乗っ取りに来るかもしれん。しばらくの間、気を付けることだよ。暗がりを一人で歩いてはいけない。ザウロスに心を囚われることになるぞ」


「はい。わかりました。気を付けます」俺は言った。




「ところでな、もう一つ気になることがあって、聞きたいのだ」


「なんでしょう?」


「お主には、双子の兄弟がいるか? お主と同じように、別の世界から最近やってきた、双子の兄弟じゃ。……いや、わしにはよう見えんから、聞くのだが」


 シンの事か? この老人、そこまでわかるのか。


「おみそれしました。確かに、います。正確には兄弟ではないのですが、私と瓜二つの人間です」




 ルベロは俺の返答を聞き、目を落として腕組みをした。


「そうか、やはりか……。わしにはよく見えんのだ。だから、間違っているかもしれんが、一応言っておくぞ。……そのお主と瓜二つの人間は、すでにザウロスの餌食になっているかもしれんぞ」


「何ですって?!」


「わからん。よく見えんのだ。しかし、胸騒ぎがする。そのお主と瓜二つの人間とは、連絡がとれんのか?」


「はい。実は、連絡がとれません。今どこにいるかも不明です」


「出来る限り、早く探し出すことだ。もしやすると、その人間は、すでにザウロスに体を乗っ取られたかもしれん」





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