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32 地震の後




 気が付くと俺は森の中にいた。しばらくの間、ぼんやりと周囲を見回して過ごした。




 結局、元の世界には戻れなかったようだ。システム再起動と同時に、俺は元の世界に戻り、シンはこちらの世界に入ってくる、そういう段取りだったはずだ。しかし、目を覚ました俺はまだアリアンナ街道の北の森にいる。……失敗したのだろう。




 スマホを取り出し、SMSを確認したが、新着メッセージは入っていなかった。


 俺は体を起こし、立ちあがった。カラスの鳴き声が聞こえる。小鳥のさえずりも聞こえる。大地震の直後のはずだが、森の中に、大きな変化はみられなかった。


 作戦が失敗したというのに、ハリヤマから何も連絡が入らないのはどういう事だろう。気になった俺は、SMSを起動した。


◇『失敗か? 連絡ください』


 メッセージを入力して送信ボタンをタップする。すると、しばらくして、“送信失敗”というエラーメッセージが表示された。


 もう一度送信ボタンをタップする。……同じ事だった。“送信失敗”のエラーメッセージ。


 どうやら、SMSは死んでしまっているらしい。


 一時的な事なのか、完全に死んだのかは、まだわからない。




 地図アプリを起動してみた。アプリは、アリアンナ街道の北の森を現在地として表示していた。問題なく作動しているようだ。他のアプリも試しに起動してみるが、特に問題が発生している様子はなかった。SMSだけが動かない模様だ。再起動後に、何らかのトラブルがあったのかもしれない。そもそも、システム再起動と同じタイミングで起こったあの大地震は何だったのか? 地震と、俺が元の世界に戻れなかったことは、何か関係があるのだろうか。




 とにかく、元の世界に戻れなかったのならば、旅の続きをしよう。


 そう思い、俺はラモンとタータのいるキャンプへと戻り始めた。


 歩いているうちに完全に夜が明けて、朝の光が辺りを眩く照らし出した。


 俺は森を抜け、アリアンナ街道に戻った。そして、キャンプに到着した。


 ラモンとタータが俺を見つけて叫んだ。


「プッピ! 無事だったのか。 どこにいたんだ? 探したぞ!」ラモンが言った。


「良かったー。プッピがいたわ」タータが言った。


「すまんすまん。ちょっと早起きして散歩に出ていたんだ」俺は口から出任せを言ってごまかした。


「心配したわよ! 地震もあったし……。怪我はない?」タータが言った。


「ああ、どこも怪我をしていないよ。そっちこそ大丈夫だったかい」


「二人とも大丈夫だ。それにしてもでかい地震だった」ラモンが言った。


 俺は二人に心配をかけた事を謝り、再び旅に復帰した。




 我々は朝食を摂り、キャンプをたたんで、バクタを目指して馬車を発進させた。



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