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01 不気味な護符




 悪の魔法使いザウロスを倒し、囚われていたマケラを取り戻して、ダイケイブから帰還した翌日、俺は休暇をもらっていた。朝、タリアの店に出て行ったのだが、タリアから一日休むよう促されたのだ。




 そこで俺は、本日の休暇を使って、家探しをすることにした。


 いつまでも宿屋暮らしの根無し草では疲れがたまる。タリアの店からほど近い風呂付きの家が希望だ。




 しかし、この村のどこに行けば空き家物件の情報が入手できるのかわからなかった。そこで俺はダイケイブ行きの報告も兼ねて、ベアリクの職場を訪ねた。




「やあプッピ!生きて帰ってきて本当に良かった。」


 ベアリクは目を細めて俺の両肩を叩きながら言った。


「魔術師の肌着をありがとう。おかげで無事に帰ってこれたよ」


「肌着は返さなくていいよ。俺は使う機会がないからね」


 俺は礼を言った。


「ところでベアリク。俺は家を借りたいと思っているんだけど、どうしたらいいだろう?」


「家か……。俺の知り合いが空き家を持っているが、その家はあまり便が良くないしなぁ。なんなら俺の家に一緒に住むかい」


「いや、遠慮するよ」


「力になれなくて済まんな。……ところで、ダイケイブはどうだった?土産話でも聞かせておくれよ」




 俺はダイケイブの探索行について、ベアリクにかいつまんで話して聞かせた。そしてザウロスを倒したのは良いが、完全に息の根を止められなかった事を話した。

 ミスリルの矢を受けて倒れたザウロスが、油断している隙に突然、砂の塊に変化し、吹いてきた風に乗って舞い散っていってしまったこと、その後に不気味な護符が残されていたことを話し、ベアリクにその護符を見せた。




「これは……。ちょっと俺の手に負える品物じゃないな」


 護符を手に取ったベアリクは、虫眼鏡で護符を見ながら言った。


「何か念のようなものが込められている。呪われた護符のようだ。……プッピ、どうしてこいつを持ち帰ってきてしまったんだ?」


 なんとなく、そのまま放置してはいけない物のような気がしたのだが、持ち帰ったのは間違いだったか。


「つい持ち帰ってきてしまったんだよ。そのまま置いておいたら、ザウロスが復活してしまうような予感がして」


「いかにも。この護符はザウロスの復活の鍵だと思う。この護符が残っている限り、ザウロスはいつか息を吹き返すだろう。しかし、かといって、護符を処分してしまうのも、適切なことなのかどうか、俺には判断がつかないよ」ベアリクは言った。


「どうしたらいいだろう」


「わからん。少なくともこの場で燃やしたり捨てたりしないほうが良いと思う。領主様に相談してみたら?」


「……そうだな。近日中にマケラ様の屋敷を訪問することにするよ」




 重い空気を変えたいのか、ベアリクが急におどけた調子になって聞いてきた。


「あんたが無事に帰ってきて、タリアは泣いて喜んだろう?」


「ああ。涙を流してたなぁ。」


「もう結婚しちまえよ。あんたがあの薬草屋の主人になればいいじゃないか」


 確かに、俺の帰還をタリアが涙を流して喜んでくれたことは、嬉しかった。しかし結婚などまっぴらごめんだ。俺にも好みというものがある。俺は、タリアのように肝っ玉の据わったタイプに尻に敷かれるよりも、もっと淑やかでおとなしそうな女が良いのだ。……タリアの外見は決して嫌いじゃないのだが。


「ベアリク、前も俺にそう言ってたよな? 俺はタリアのことはなんとも思っちゃいないぞ。勘弁してくれ」


「口ではそう言っててもな、あんたらお似合いだと思うぜ」


 ベアリクはニヤニヤしながらそう言った。




「いろいろありがとう。空き家探しは他をあたってみるよ」


 俺は礼を言い、ベアリクの職場を後にした。




 空き家を探す手立てが思いつかず、結局俺はタリアの店に寄ることにした。店は、急患もなく落ち着いている様子だった。カウンターでタリアの末の妹タータが帳簿をつけていたので、声をかけた。


「やあタータ。忙しいかい」


「今日は今のところ平和な一日よ。昨日はお疲れ様でした。また土産話を聞かせてね」タータは俺にウインクしてみせた。


「タリアはどうしている?」


「今はお使いに出ているわよ。何か用事がある?」


「いや、そうしたらタータに聞きたいんだけどね。俺、いつまでも宿屋暮らしじゃあ疲れるので、どこか適当な空き家があったら借りたいと思っているんだ。このへんで空き家がどこにあるか、どうやって探したらいいかな?」


 タータは少し考えてから言った。


「このへんは村の中心部だし、空き家があるって話は聞いたことないわね。……ねぇ、良かったらうちに住まない? 離れが空いてるわよ」


 タリアの家なら、この店から近いので立地的には適当だが、やはり年頃の女ばかりの所帯の家の離れに俺が住むのはどうかと思う。


「いや、気持ちはありがたいけど、遠慮しておくよ。悪いよ」


「悪くなんかないわよ。うちだったら通勤にも便利だし、離れにはお風呂もついてるわよ。それに、うちは女ばかりだから、男性がいてくれると何かと助かるわ」




 タータと話しているうちに、タリアが用事を済ませて店に戻ってきた。タータがタリアに事情を話した。


「プッピが家を探してるんだって。だから、うちの離れに住めば? って話してた所なの」


「良いじゃない。プッピ、今日からうちの離れを使いなさいよ」


 タリアは荷物を片付けながら言った。


「しかし、なんだか悪いよ」


「悪いことないわよ。家賃は給料から引かせて貰うし、プッピが近くに住んでいてくれたら、私達もいろいろ助かるわ。……うちに住みなさい」




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