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世界でもっとも危険な地帯

・・・黄金三角地帯(ゴールデントライアングル)


それはタイ、ラオス、ビルマ(ミャンマー)の国境が接する一帯を指す。

三か国の領土内でありながら、それらの国の自治権の及ばぬ特殊地帯である。


ここは世界のヘロイン生産量の実に90%近くを産出するといわれる。

世界一の極悪人と呼ばれた麻薬王の支配する麻薬王国なのだ。

彼は麻薬利権で得た莫大な資金と強力な軍事力を持つ独裁者である。


かつてこの地帯の治外法権性を利用して、カジノを経営しようとした実業家は変死体になって発見された。

事件は闇に葬られたが、もしかすると麻薬王に対して何か粗相(そそう)があったのかもしれない。


「見てはいけない。聞いてはいけない。話してはいけない」


それが黄金三角地帯(ゴールデントライアングル)を支配する法なのである。。


その世界有数の危険地帯に、空手バックパッカー子弟・トミとタカが足を踏み入れようとしていた。。


・・・・・


ある朝。


腰がすっかり重くなった私達もついに動き出す決断をしました。


決断などというと大げさに聞こえますが、沈没状態から抜け出すには、精神的に踏ん切りをつける必要があります。

それほどチェンセンの生活は快適でした。


ゲストハウスから借りたバイクでの旅です。

チェンセンからメーサイまでは川沿いの一本道です。その道に出たタカがバイクのエンジンを掛けて、待っています。


「師匠。オッケーです。そろそろ行きますか」


バイクの後にまたがり出発です。


今日も天気がいいです。

こういう日のツーリングは快適そのもの。

道路はきれいに舗装されていますので、お尻も痛くならない。

タイはバイクで旅するのに向いているな・・と感じました。


川沿いの道を走り続けます。


「お。タカ!ストップ、ストップだ」


「押忍。何ですか?」


タカがバイクを停車させる。


「タカ。見ろよ。ここから先はゴールデントライアングルだ。世界一の危険地帯だぞ。気を引き締めろ」


「押忍!」



バイクをしばらく走らせるとメコン川沿いに公園があります。

そこでバイクを停めて、なかなかに美しい景色を眺めていると・・・!!


「お兄さんたち、いっしょに写真を撮らないか?ゴールデントライアングルの記念に」


山岳民族の衣装を着た子供たちがわらわらと近寄ってきました。


あたりにはカメラを持った西洋人観光客もたくさん居て、子供たちにお金を払って記念写真を撮っています。


「師匠・・本当にここが世界で最も危険な場所なんですか?なんか普通の観光地に見えるんですけど」


「うん、まったく普通に観光地になってるね。先年、麻薬王が投降したとは聞いていたけど、ここまで観光地化しているとは思わなかったなあ。。」



・・・・



「タカ、あっちがラオス。こっちがビルマだ」


「この川の向こうがもうビルマなんですか。あっちの方なんか川幅5mもないじゃない。川浅いしこれなら歩いて簡単に渡れるじゃないですか」


「うん。そうすりゃ、メーサイまで行かなくてもビルマに行けるんだけどね。でもほら、あっちは軍事政権だからさ、入った瞬間に銃殺とかあるかもよ」


「・・・・メーサイから入りましょう。。」


「しかし、せっかくだから眺めのいい場所で休憩したいよな。ここらで一番眺めがよさそうなのは・・・やっぱりあれか」


高台にある建物を指差します。


「師匠、あれは?」


「ホテルだな。ああ、Iホテルだ。5スターホテルだぞ。後学のために行ってみるか」


「え、入れるんですか?」


タカは高級ホテルと聞いてすこしひるんでいます。身長2mの空手家相手に全然ひるまなかったくせに、妙なところでひるむ男だ。


しかし私は昔から高級ホテルは泊まらずに休憩場所としてよく利用しておりました。ひるむことなど何も無い。


「お茶でも飲もうや。何、お茶だけでもこっちは客なんだから、遠慮することない。堂々とすればいいんだ」


さすがにバイクで乗り付けるのも何なので、バイクは外に止めて歩いてホテルに行きます。

いかにもバックパッカーといったいでたちの私達を見てドアボーイはちょっと躊躇しておりますが、私がギロッと睨むと仕方なさそうに扉をあけます。


「上のほうにテラスが見えたろう?あそこに行けばきっといい眺めだぞ」


テラスに上ると、テーブルがいくつも置いてあります。

そのうちのひとつに腰掛ける。


まわりを見回すと、いかにも金持ちそうなヨーロピアンの老夫婦といった連中ばかりです。

あきらかに私達は彼らにとって異分子に違いありません。

最初はみんな横目でちらちらとこちらを見ていますが、やがて路傍の石ころのように扱うべきと判断したのか、無視します。


「見たかタカ。世界中どこでもそうに違いない。どこでも一番見晴らしの良い場所にはこういう金持ち専用の空間があって、そこから下々を見下しているもんなんだ」


「押忍。たしかにみんな何かスカしてやがりますね」


「まあ、そう言って怒るのもいいんだけど、ちょっとあっちを見てみろよ。ここから見えるゴールデントライアングルは、さっきまで見てたのと眺めが違うだろ」


高台にあるこのホテルのテラスから見える風景は、まさに絵を描くなら、あるいは写真を撮るならこの場所しか考えられない・・・というグッドビューです。

それを独占しているのが、このホテルなのだ。


「本当だ・・・きれいですねえ。。」


「な。覚えておくと言い。どこでも一番の景色が見えるところにはこういう建物が建っているものなんだ。そういう風景が見たければ、こういうところに来ればいい。何も金持ちに独占させておく手はないだろ?」


さきほどから見事に私達を無視しておりますウェイターを、呼びつけます。


「ウェイター!」


呼ばれれば彼らもしかたありません。


「何かご用でしょうか?」


「ポット・オブ・ティーを頼む。何かケーキはある?」


「パンケーキがございます」


「じゃ、それ。ふたつね」


うやうやしくお辞儀をするウェイター。


わたしが旅で得た教訓のひとつは、高級レストランやホテルでは、少々でかい態度をしたほうが良い・・・ということです。

こちらは主人。向こうは使用人。身分の差をハッキリさせること。

やたらえばり散らすと言うのとはちょっと違うので注意が必要ですが、要は堂々とした態度をとり、サービスは受けるのが当たり前ということ。

彼らはそのために存在しているのですから。

そしてチップはケチらずに渡すこと。


ウェイターやホテルの従業員にサービスしてもらって、ペコペコアタマを下げる人がいますが、それはナメられます。


たとえば外国のレストランなどでは、まず見かけで客を値踏みします。

私なんかはその時点で、「下層客」と判断されますので(笑)ひどい席に案内されることがある。

そういうときは憤慨したという態度で怒るべきです。

席に座らずにいかにも憤慨したという態度で、帰ろうとすること。


大抵は責任者が飛んできて謝罪したうえで、良い席に案内されます。

また以後のサービスの質が変わる。


最高の眺めを楽しみながら、私達は紅茶とパンケーキを食べて豊かな気分に浸ります。

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