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静子さんの事務所兼自宅へ行く

翌朝。


ホテルの前でたむろしているトゥクトゥクをつかまえて、タイ語のネームカードを渡します。


「よし、タカ乗れ。いくそ」


「押忍」


チェンマイ中心部から橋を越えて、少し郊外に出ると、そこはもう田園とやしの木、バナナの木。田舎の風景が広がります。

タイの第二都市とはいえ、チェンマイはバンコクに比べて田舎情緒がある。風は涼しいし、天気もよし。なかなか快適なドライブです。


「はあーー。。師匠。なんかのどかでいいですねえ」


「うん。ちょっとスリランカの田舎の風景に似ているけど、あっちはどこに行っても緊張感があるからなあ。それにくらべてここは落ち着くねえ」


しばらく行くと田舎の集落が見えてきます。トゥクトゥクはその中に入ってゆきます。


「もうじき着くぞ。あ、ほら。あの家だ」


一軒の高床式の古い民家です。


同じような家が何軒も並んでいて、家の周りには何羽ものシャモが放し飼いにしてあり、親鳥のあとをひよこがいっぱいついて歩きながら、地面をついばんでおります。


民家の脇から立ち木に張ったロープを使って洗濯物を干す若い娘がいます。

華奢で浅黒い肌ですがなかなかに整った顔立ち。


「おーい。オーム」私は娘に呼びかけます。


娘はこっちを見て目を細め・・・


「え?トミー?OH!サワディーチャーウ!いつ来たの?」


満面の笑みです。チェンマイこそは微笑みの町だ。


「昨日チェンマイについたんだ。静子さんはいる?」


「シズコは今、買い物に出かけているけど、お昼までにはもどってくるわ。上って待ってて」


「じゃあ、そうさせてもらう。あ、こっちはタカ」


「押忍。タカです。サワディーカップ」


珍しくタイ語であいさつするタカ。若い娘なのでちょっと緊張気味?


「サワディーチャーウ」


とびきり素敵な笑顔で挨拶するオーム。


民家の風通しの良いバルコニーのようなスペースにちゃぶ台のような机を置いて、コーラを出してもらいます。


「私は洗濯のつづきがあるから、用事があったら呼んでくださいね」


「ああ、ありがとう」


オームはまた下に降りてゆきます。



「師匠、オームちゃんの『チャーウ』って、あれなに?」


「チェンマイの女性の方言だね。タイの標準語の『カー』と一緒なんだけど、あの『チャーウ』ってのカワイイだろ?」


「かわいいっすねえ。。。」



ここからも庭先で洗濯するオームの姿が見えます。あたり一面が緑。聞こえるのは風の音と鳥の声。

のどかです。こんなのどかな旅はひさしぶりだ。。

いつのまにか私は横になって、うたた寝をしていました。


ザザザザアーーー・・


クルマのタイヤが地面を削る音で目が覚めました。


・・・かえってきたな・・・


見ると、一代のジープがけたたましく庭先に入ってきます。


「タカ。戻ってきたようだ。静子さんだ」


「押忍。ああ、あのクルマですね」


タカもどうやら眠っていたようで、目をこすっています。


クルマが停車すると、オームが歩み寄り、私たちの来訪を告げている様子。

クルマから降りてきたのは、カーキ色のタンクトップに軍用のカーゴパンツと軍靴を履き、無造作に伸ばしたソバージュの髪。


まるで戦場から休暇をとってやってきた歴戦の兵士のような風貌の化粧気の無い彫りの深い顔だち。日本人には見えません。


民家の上から下を見下ろしている私たちを見定めて、軽く手をあげにこりと笑います。

カッコイイ。。私が生まれてから今まで知っている中で最も「カッコイイ」女性。それがこの静子さんです。 

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