表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/61

虎の威を借る

夕方になると、チェンマイは大変涼しくなります。上着を着ないと肌寒いこともあるくらい。


「さて、どこに行こうかなあ」


「押忍。まあ、とりあえず出かけましょう」


ホテルのエレベーターに乗ると、そこに貼ってあるポスターに目が止まります。


「あ、これなんかどう?」


「なんすか?これ」


カントーク・ディナー・・・チェンマイの名物のひとつですが、私はまだ行ったことがありませんでした。

古都チェンマイを京都に例えるなら、懐石料理みたいなものでしょうか。

タイの古典舞踊を観ながら、チェンマイの伝統料理を食べるツアーを、このホテルで受け付けているようです。



早速フロントで申し込むと、すぐにバスが出るからそれにのれ・・・と。


ホテルのミニバスには、すでに西洋人の客が何人も乗っています。

それにあわてて乗り込むと。。


「トミー先生!こっちこっち。こっちに来て下さい」


ビルです。


「ああ、君もカントーク行くんだ」


ビルのそばに行くと周りにいる若者たちが席を空けます。


「どうぞ座ってください、先生。ホテルで知り合った連中と行こう、って話になって。先生も誘おうかなと思ってったんだけど、部屋聞いてなかったし。ちょうど良かったです」


・・・本当かよ。。

と思いましたが、まあいいや。


バスが動き出します。


「彼らが、同じホテルに泊まっている連中です。おい、こちらは日本のカラテマスターのトミー先生とタカさんだ」


こういうときに西洋人というのは実に気さくに笑いながら、握手してきます。ビルのほかにもう1人の白人男性と女性。ふたりとも若くてどうやらカップルのようです。


そして黒人の学生風の女の子ふたりぐみ。友達同士で旅行に来ているようです。ひとりは、ちょっとゴツい感じの女の子ですが、もうひとりは華奢でメガネを掛けた知的な美人です。その彼女が・・・


「こんにちはトミー先生。イギリスから来たエミリーです」


「こ、こんにちは。。」私、ちょっとアガってしまいました。


黒い顔にクリクリとした大きい目。ニコッと笑うと白くて小さな歯が並んでいます。超カワイイ!


エミリーの顔に見とれていると横から、白人カップルの男のほうが


「ハイ!先生ワタシはイギリス人のジョンです。ワタシもカラテ、日本でやってたよ。ヨロシク」・・・日本語です!


「あ、日本語できるんだ」


ビルも意外そうな顔で彼の顔を見ます。


「ハイ。日本のK大学に留学してたです。そのときカラテ習ってました」


ジョンは身長は190cmはあるでしょうか。体重は100kgゆうにあるでしょう。強そうだ。


ビルが・・・一体何を話している?・・・とジョンに尋ねます。


ジョンがかいつまんで話すと、「それなら、トミー先生に教えてもらうといい」

とか言い出します・・・余計なことを!


ジョンの金髪でちょっとデブな彼女と、エミリーの連れの女の子が顔を見合わせてWOW!とか言ってるし。。。



「ジョン君は大学の空手部に入ってたの?」


「いえ、**会館の道場に行ってました」


・・・**会館・・・(汗)・・・マズイ。。。それはマズイ。


「あの・・ビル君は**会館でどれくらいやったのかな?」


「オス。今年茶帯貰いました。それで国に帰って、いまイギリスの**会館に居ます」


・・・ますますマズイ。


**会館というのは、とにかく強い空手の名門です。

知らない人は「なんだ、黒帯じゃないのか」と思われるでしょうが、**会館の現役茶帯なら我らが中川先生の出す、なんちゃって黒帯の何倍も強いでしょう。(ましてや私は運動不足のデブ)


・・・こんなのと組手やらされちゃタマラン。


弟子の手前・・・いや、そんなのはもうとっくに地に落ちているからいいとして、エミリーちゃんの手前、恥をかくのは避けたいものです。


・・・ハッタリだ!何かハッタリで逃げる突破口を見つけなきゃ・・・


「K大の近所で**会館といえば、先生は誰?」


「オス。○○師範です」


「ああ、※※支部か。じゃあMとか知ってる?」


ジョンはびっくりした顔で


「し・・知ってるんですか?Mセンパイを」・・・突破口みーつけた♪


「知ってるも何も、Mは僕の後輩だよ」


これは半分本当。半分ハッタリ。


Mはいちおうは私の中学の後輩ですが、別に一緒に空手をやっていたわけじゃないです。

お互い地元では顔見知りではありますし、今でも会えば挨拶くらいはするでしょうが、それほど親しかったわけでもありません。

ただ彼が**会館でかなり活躍した選手になったのを知っていたので、名前を出してみただけ。


「あの恐ろく強いMセンパイのセンパイなんですか?・・・オス!失礼しました」


ジョンは心底Mにビビっているようです。

と同時にMの先輩だという(ハッタリだけど)私に対しても畏敬の念を持ったようです。


・・トミー先生と戦ってみろ・・・と無責任に言うビルに「やめろよ」とだけ言うと、すっかり恐縮した表情で座席に控えます。

やりとりはずっと日本語でしたから、ビルたちは分けが分かりません。

私は心の中で言いました。


・・・Mよ。勝手に名前出してスマン!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ