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人間性の欠落

「・・・あ!あれ。師匠、あれを見て!」


「ん?・・・なんだ?」


見ると土砂降りの雨の中、おそらく10歳に満たない腰にサロンを巻きつけただけの裸の少女が、軒下で雨宿りしている人たちを相手に物乞いをしています。


しかも驚いた事に、その少女は素っ裸の赤ん坊を抱いているのです!

この雨の中で。。


「ああ、あれは物乞いだな。しかしひどいな。親はどこかで見てるんだろうけど」


「師匠!それどころじゃないよ!あれじゃ赤ん坊が死んじゃうよ!」


言うなりタカは雨の中走り出します。


「なーにやってんだあ!おまえはあ!!」


駆け寄るなり少女を赤ん坊ごと抱きかかえ、軒下に避難させます。少女はびっくりして怯えている。


「プレディ!スジャータ!タオルだ。タオル持って来い」


あわてて、プレディも走りよりタオルで赤ん坊の身体を拭きます。


スジャータが少女にシンハラ語で何か(おそらく怖がらなくて良い・・といったこと)を言ってます。


「赤ん坊が冷たい・・・これはヤバいぞ。。。」


タカは赤ん坊を抱きしめて自分の体温で暖めます。


しばらくそのまま・・じっと抱きしめていると。


何か貧相なサリーを着た女が恐る恐るタカに近づいてきます。


「プレディ。その女が多分母親だろう。言ってやってくれ。100ルピーやるから雨がやむまで子供に物乞いさせるなと」


私が言うとプレディが女に伝えました。

女は許しを乞うように手を合わせ頭を下げます。


タカは女に赤ん坊を手渡し、雨宿りするよう指図しました。。。


やがて雨がやみ、晴れ間が覗くと女は赤ん坊と少女をつれて去っていきました。


タカは非常に不機嫌になっております。


「なんなんだ、あれは!あれでも母親か?あいつは雨の中子供が歩いているのを黙って見ていたのか!」

ショックを受けているようです。


・・・が、しかし。


実はショックを受けていたのはタカばかりではありませんでした。


私は、あの少女が赤ん坊を抱いて雨の中を歩いているのを見て、別になんとも思っていなかったのです!

スリランカの物乞いとは、ああいうものだと。。。


私は以前に怪我をして腐りかけた足を見せての物乞いを見た事があります。

ここでは物乞いは命をかけてやるものです。


「どうだ?私は今、死にかけている。哀れと思うなら恵んでくれ。。。」


これが普通と感じておりました。


先ほどの親子にしてもそうです。赤ん坊が死にそうだ・・というのを人に見せて物乞いをしていたのです。おそらくあの母親は「今日はなかなか良い収入になった」と思っている事でしょう。


私はスリランカで、そういう感覚に慣れてしまっていた。


人間としての普通の感覚・・・タカのように赤ん坊を何とかしなければ・・という意識が根底から欠落していたのです!


これは怖いことです。。。


キャンディの太陽もずいぶん西に傾き、日差しはゆるやかになっております。

香辛料とココナッツの匂いのする風が吹いている。。


「タカ。。」


「押忍、師匠」


「そろそろ、スリランカでの保養は終了だな。。」


「押忍」


保養といいながらスリランカでもけっこうあれこれドタバタしていましたが、ここまでは次に訪れるタイでのドタバタ活劇の、ほんの前哨戦に過ぎなかったということは、このときはまだ知るよしもありませんでした。

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