「杞憂」
僕の名前は星宮翔。
高校生になり中学までとは違ってちゃんとした過ごし方をしようと考えていた。
と言っても中学までの過ごし方と大きく変わるわけじゃないけど、義務教育ではなくなり学校を休み続けたら退学になる。
だから今までより学校を休むことだけは控えることを第一目標に頑張って行こうと決めていた。
「目指せ欠席三十日以内!」
僕は声高らかに叫んだ。
いきなりの大声にこっちを見る生徒が多い、なんか照れちゃうな。
体をくねくねしていると肩をぽんぽんと叩かれる。
叩かれた方を向くと知り合いの顔が見える。
「朝から元気だなホント、俺にも少し分けて欲しいくらいだ」
彼の名前は宮本克也、小学校の頃からの付き合いでとてつもない腐れ縁ってやつ。
小さい頃から悪さをするにしても先生に怒られるにしてもほとんど一緒だった。
「あれ、おはよう克也。始業式に間に合うなんて明日は槍が降ってくるんじゃないかな?」
「その槍は全部お前に刺さると嬉しいんだがな。俺からしたらお前が時間通りにが来ていることに驚きを隠せない」
へぇ、言ってくれるじゃないか。僕だって高校生になって少しは改めようって考えになったのになんてひどいことを言うんだ。
僕は歯をギリギリと鳴らしながら恨めしそうに克也を見るが、こうして会話していることがザ・高校生みたいな感じがして表情が緩む。
その行動に克也は不思議そうな顔をした。
学校までの道を歩きながら駄弁る。うん、やっぱり高校生活を満喫しているみたいだ。
「時間通りに来たってことは翔も何となく理解しているのか」
唐突な話題に驚いたが、言いたいことはなんとなく分かっている。
「うん、退学だけは勘弁したいよね」
僕と克也は手を取り合った。
まあいざとなったら言葉で伝えなくても僕らにはアイコンタクトがあるからそこまでひどいミスをしたりはしないと思う。
先生に怒られているときに話を合わせるために覚えたんだけどね。
「欠席が多いと退学ってことは遅刻が多くても退学ってことでしょ?」
坂を上りながら僕はまだ見えないであろう学校がある方向を眺める。
「まあそうだろうな。授業に参加できない遅刻をしまくったら単位落として進級できなくなるかもしれないしお互いに気を付けないとな」
克也からの言葉に僕は言葉を失う。
今まで授業をまともに受けたことなんてないのにそんなの無茶苦茶すぎるよ…!
「高校ってものすごく恐ろしいところだね、気を付けないと」
こいつは何を考えているんだ?何をどう考えたら恐ろしいって考えになるんだ?
どういう思考回路をしているのかやはり分からない。
「っと、もうすぐ校門だ。さっさと行くぞ」
克也は話を切り上げ足早に上っていった。
「あ、待ってよー」
僕も慌てて後を追いかける。
けど、校門を通り抜ける前に僕は足を止めすぐ近くの桜の木を見ながら大きく深呼吸をした。
今日から始まるんだ、僕の高校生活が!
御高覧頂きありがとうございます、幻花と申します。
1話1話は短く、読みやすくしていきたい、をモットーに頑張っていきますのでよろしくお願いします。