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第5話 遠足計画!

「毎年恒例の遠足の場所決まったぞー」

 今は5時間目。お昼ごはんの後ということもあり睡魔に襲われる時間帯にも関わらず誰一人寝ていないのは、前に立っている先生が夏芽先生だからだろう。寝たら死ぬという雪山で遭難した時に使う言葉が今浮かんでいる。

「おおー! 遠足どこっすか!!?」

 相変わらず馬鹿でかい声で話す尾崎君。とてもうるさい。

 美城高校では毎年始業式始まってすぐに遠足がある。新しいクラスの仲を深めるために日帰りでどこかへ出かけるのだ。

「落ち着け。今年は緑丘公園だ。飯盒炊爨とかレクレーションするぞ」

 緑丘公園というのはこの学校から少し遠い町にある大きな公園だ。主にキャンプをするところで、飯盒炊爨する道具は一通り揃っている。大きなアスレチックコースが子供に人気で家家族連れが多いイメージがある。

 毎年だいたい同じようなところでやるためテンションが下がるやつもいるが、いざ現地に行けば皆テンションがすごく高いのでなんだかんだ楽しいイベントである。

「そこでだ。レクレーションはクラス全体でやるんだが、飯盒炊爨は5人1組になって行う。クラス全員で30人だから6班に分かれる。というわけでくじ引きだ」

『またかよ!』

「あ?」

『何でもないです!』

 相変わらず威圧的で怖い夏芽先生。このクラスは夏芽先生が絡むと急に大人しくなるな。

「じゃあまた学級長の時と同じでくじ引きするから、引いた班で集まって適当に話し合ってくれ」

「何を話し合うんですか……」

「えっとな、とりあえず班長決めろ。……そのほかは適当に恋バナでもしとけー」

 決めることは班長しかなかったようだ。そして、最後の確実にいらないよな。そんなことを思いながら教卓に置かれたくじを引いていく。今回は出席番号順とかではないので皆自由に前に行き引いていく。俺も後の方になってからくじを引いた。引いたくじを開けるとそこには4班と書かれていた。

「雪斗は何班だった?」

「4班。風神は?」

「俺は2班。離れたなー」

 そう言うと、風神は自分の持っていた紙を俺に見せた。風神と離れたのは正直ショックだ。気軽に話せるのが風神ぐらいしかいないコミュ障のつらさよ。

 風神と離れたと分かった今、重要なのは誰が同じ班になるかだな。変人ばかりのこのクラスにもまともな人は居るのでできればそこに当たりたい。

「ねえ、冬樹4班なの?」

「え?」

 不意に下の方から声がした。声のする方を見てみると目に入ったのはきれいな金髪と青い瞳。かなり小柄なため、渡島さんが近くに来ていたことに気づかなかった。

「あ、渡島さんも?」

「うん。よろしく」

 どうやら1人目は渡島さんのようだ。渡島さんは学級長で少しだけ打ち解けてきているしこれはありがたい。

「4班の集まるところに来てくれる?」

 どうやら呼びに来てくれたらしい。

「分かった。わざわざありがとう」

 風神に軽く挨拶してから渡島さんの後をついて行く。


 4班が集まっているところへ行くと、そこにいたのは野崎さんだけだった。

「話すの初めてだよね? 野崎秋葉です。よろしくね、冬樹君」

「うん。よろしくね野崎さん」

 とても柔らかい物腰と笑顔で律儀に挨拶してくれる野崎さん。自己紹介の時から可愛いと思っていたけど近くで見ると更に可愛い。

「えっと、私と秋葉と冬樹……あと2人は?」

「ちぃーす! 俺っすよ☆」

 声のする方に目をやると、クラス一チャラくてチャラい尾崎君がいた。今日も明るい色の髪をワックスで決めている。ヘアピンを留めているためチャラさが増している。

「えぇ……尾崎なの……」

「もー、あーちゃん! そんながっかりしないでほしいっす!」

「あーちゃん言うな」

 どうやら渡島さんとは顔なじみなようだ。尾崎君が渡島さんの頭をなでると、渡島さんが嫌そうにそれを振り払う。少女漫画でよくある頭ポンポンを見ているはずなのになんのときめきもないのが不思議だ。

「あきっちも一緒なんすね!」

「あはは……相変わらずその呼び方なんだね」

 野崎さんが苦笑いを浮かべながら言う。さっきから聞いていると、どうやら尾崎君は人のことをあだ名で呼んでいるようだ。渡島さんの場合、愛羅だから「あーちゃん」。野崎さんの場合、秋葉だから「あきっち」なのだろう。

「そして、ふゆぽん!」

「ふゆぽん?」

「冬樹君のことっす!」

「なにそのゆるキャラみたいな呼び方!?」

 俺の名前を知ってるんだなと思ったのもつかの間。渡島さんや野崎さんよりなんだかとてもゆるいあだ名をつけられてしまった。なんとか阻止したいところだ。

「あ、あの尾崎君。そのあだ名はやめてほしいというか……」

「冬樹。尾崎は一度あだ名をつけたら相手がなんと言おうと呼び続けるからあきらめるのが一番よ」

 努力する余地はなかった。

 渡島さんにとても冷めた目で言われてしまうと、渡島さんも相当言い続けてきたんだけど直してくれる気配は全くないぞと伝わってくる。


「ところで、残り1人は誰なのかな?」

「もうほとんど班でかたまってるけど……」

 教室を見渡してみるともうほとんどの班がまとまって班の役割などを話していた。5人で1班なのであと1人この班のはずなのだが……。

「ふふふふふ……。ようやく気づいたようだね! 最後の1人は僕だよ!」

 謎の高笑いと中2病くさいポーズを決めながらこちらに来たのは、イケメンオタクの鶴島君。

「いや誰も気づいてなかったわよ。ってかもっと早く来なさいよ」

「え……、渡島さん、そんなに俺のこと待っててくれたの……?」

 本人が言ってるわけではないけど「トゥンク……」という効果音が聞こえた気がする。

「そんなわけないでしょ、死んできなさい」

 ゴミを見る目で容赦な罵る渡島さん。それに「ありがとうございまーす!」と言う鶴島君は全力でスルーさせていただこう。

「つるやんも4班だったんすね!」

「よろしく頼むよ! 尾崎君!」

 高らかに笑いながら尾崎君と鶴島君は握手をする。2人とも美形なので並ぶと絵面はきれいなのだが性格的に考えてなかなかえげつない組み合わせな気がする。

 最後の1人が鶴島君だったということで4班全員がそろった。うん、そこそこ濃いっすね。


「4班はこの5人なんだね。えっと、さっそくだけど班長決めようか?」

 野崎さんが遠慮がちに提案して、4班の話し合いが始まった。

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