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第2章〈機械じかけの金糸雀〉⑵

今回は帰省中に携帯から投稿しているので添削がおそろそかになっているかもしれません。量も少なく、読んでくれた方々には申し訳なく思っています。

12日までこのようなたちが続くとは思いますが、可能な限り更新は続けていこうと思っております。

『環境同化』


俺の得意とする魔法の一つ、『気配遮断』と同じ空間干渉系の魔法の一つだ。


自身の周りの空間に干渉することで自然と一体化し、限定的なものではあるが、自身の肉体を空間そのものに擬態化する。


色彩を擬態化する生物は世の中にたくさんいるが、自分の性質そのものを変えることで擬態化するのは、ごく限られた魔術師ぐらいのものだろう。


この魔法、やっぱり中央にいた時は殆ど役に立たなかった。


いや、正確に言うのならば人口が多い所では使い道がなかったのだ。


自然と一体化する魔法である以上、無理な環境で使用すればあっという間に干渉区域が決壊してしまい、自身の存在は元に戻ってしまう。


大量の人工物と複雑に姿を変える街並みは、到底『自然な環境』とは言い難い。


数歩あるけば自分のすぐ側にある物質は全く別のものになるし、動かないでそこの物質と同化した所で殆ど意味がない。


その為、中央ではこれを使うことはなかったのだ。


そういう点では、今この瞬間程この魔法を使うのに適したタイミングはないだろう。


周りはどこを見ても、砂、砂、砂ばかり。


強風と砂の足場では普通、歩くのにも一苦労する場面だろうが、俺はというと、その風に乗って砂と一緒に飛んでいたりする。


『水が』溺れることがないように、砂に近い何かになっている自分は足を取られることも、風に視界を遮られることもない。


正に干渉魔術さまさまである。


因みにこの魔法、しっかりと機能させるためには、自分の認識が必要不可欠であり、環境が良くても心理状態が不安定だとまるで効力を発揮しない。


というわけで、自分を砂だと認識しなくてはならなくてはいけなかったりする。


俺は砂……俺は砂……俺は砂……


誰がどう見ても危険人物である。


巻き上げられた砂に混じり、とんっ……とんっ……と舞うように大地を駆け抜ける。


半刻程駆け抜けた後だろうか、ようやく周りの環境に僅かな変化が訪れ始めた。


視界に映ったのは無数に打ち立てられた黒塗の建築物。


棒状のそれは、一体何のために打ち立てられたのか。


数百年の時を経てもなお、姿を変えないその姿は何者かの意思を感じさせる。


これが見えてきたってことは、アンダーへの入り口はすぐ側ってことだ。


黒塗のそれらの近くまで飛び込むと、自分の視界にもう一つの変化が現れる。


人!?


驚いたがあり得ない話ではない。


実際、ここにいる自分も含め、アンダーへと何かを求める者は少なくない。


目を凝らし、その人影を確かめる。


視界に映ったそれをなんと表現するべきだろか、目に映った人物はひたすらに走り続ける。


両手にはそれぞれ何かを抱え、大事そうに抱えたそれを必死に運びながら、時折後ろを確認し、また走り出す。


後ろには更に二つの人影、明らかに先頭の人物を追っている。


それは側から見れば明らかに絶望的な状況であった。


先頭の人物は明らかに速度で劣ってた、それもそのはずだ、両手にはなにやら大型の荷物を抱えているし、後方の連中は連中で、自分程ではないにしろ砂の上を走っているとは思えないほどの速度だったのだ。


視界を塞ぐ砂塵によって、詳しく見ることは叶わず、彼らの事情も知らなかった自分だが、自分の中の本能がそれを無視することを拒否していた。


息を大きく吸って手を胸に当てる、そしてまるで呼吸するかのように一言だけあの文言をーつぶやいた。


「シフト」

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