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    青き絵描きの少女 1-4


「間違いない。たとえ小さな絵の小さな一部分だとしても色がなくなるという事象は彼らの仕業だ。」


「やっぱりそうなんだ・・・。」

「今の時間は学校に誰もいないか?」

「もうそろそろ20時をまわるくらいだからおそらく誰もいないと思うけど・・・・もしかして今から学校に行くの?アリスちゃん!」

「当たり前だ。前にも言っただろうこの世界にはナイトメアを力で消滅させる自警団が存在する。一日以上置いてしまえば確実に撃破されるだろう。アキのような一般人が今まで気づかないのはそういうわけだ。さあ一分で仕度を済ませろ。私もついていく。すぐに出発だ!」

「は、はい!金属バットとかいる?」

「いらん。」



 アキは軽い仕度をさせられそのまま部屋着のまま学校へまでの道を自転車で駆けて行く。時刻は二十時五分。アキやハルが通う学校の名は県立紅葉高等学校。自宅から一番近く、徒歩で通えるほどである。もちろん自転車を使えばもっと早く着く。紅葉高校は最近まではどこにでもあるような普通の高校であり、一昔前のネットでの評価も中の中と普通。部活動もこれと言って目立ったものはないしだからといって栄光の時代がなかったわけでもない。野球部が甲子園に行ったこともあるそうだ。約30年も昔の話だが。

 しかし最近は勉強の得意な生徒や運動が得意な生徒が県外から入学するようになり、高校も6年前から勉学や部活動に力を入れ始めた。それの影響か勉強の内容や補習などが増えてアキたちの世代は少し迷惑をしている者も少なくない。なぜこんな特徴もない小さな高校に集まるのか多くの者は理解しかねた。そして時刻は20時16分。

 アキの自転車が自転車一つ無い学校の自転車小屋にポツリと止められた。そこで気づいたのだが、職員室にまだ白い明かりがついているではないか。



「うげ。まだ学校にいるよ・・・」

 アキは職員室から一番遠い二学年の昇降口に足を進める。こんな時間だ、職員室に残るのは一人二人くらいのはず。先生がいることは予定外の事ではない。問題なのは戸締りが完璧で学校の中に入ることが出来ないという最悪のパターンだが・・・。昇降口はまず一番戸締りが重要な箇所。閉められて当たり前。アキは昇降口に向かいながらもダメだったときの事を考えていたが、二年昇降口のドアはあっさりと開いた。

「あれ?あいてる。 ぶ、無用心だな!」

 喜びは一瞬で、すぐに頭は教師の仕事の手抜きに意識が向く。

 昇降口のドアをゆっくりしめようとするが、紅葉高校は60年前からある伝統ある学校。途中立て直されたこともあったようだがそれでも年数はそこそこかかっているようで昇降口の扉は今この暗闇では気持ちの悪い不協和音を響かせた。その音を聞いたアキは夜の学校を不意に意識してしまい背筋が冷たくなっていった。そんな時、背筋が一瞬にして凍りつく声がきこえる。



 あ・・・・・・き・・・・・・あ・・・・・・・き・・・・・



 自分の名前を呼んでいる?。アキは後ろの昇降口のガラスドアに手をかけていつでも逃げられる体勢に自然となる。重心は完全に後ろ。アキはもうすでに逃げる寸前である。

「だ・・・・・だれ!!?」



 あ・・・・・・き・・・・・・あ・・・・・・き・・・・・



 勇気を振り絞って声をかけるがもう帰ってしまいたくなった。しかし、少女のこととあの約束を思い出す。これを乗り越えさえすれば祖父そして弟も私の元へ帰ってきてくれる。私は知る必要がある。と自分に言い聞かせ続け恐怖と戦う。アリスという少女のほぼ幽霊に近い存在と仲良くなっている事実がアキの恐怖心をゆっくり削いでいった。アキは6つならぶ下駄箱一番右端の声のする方向へ忍び足で近づく。


「幽霊なんかじゃないよね?いたとしても仲良くなっちゃえばいいんだ!」

 むちゃくちゃな思考や発言が自分を恐怖から遠ざけていく。



 あ・・・・・・き・・・・・・あ・・・・・・き・・・・・



 下駄箱から勇気を振り絞り顔を出すもそこには何もない。しかし声がやむことはない。

「一体どこから・・・・・?」

 恐怖で曲がっていた腰がゆっくりと元に戻る。今度は恐怖よりも探究心が勝る。この声はどこから?そう思い、アキは辺りを見渡す。周囲を見渡していると声は真横にある学校の今月の目標や新聞、部活動の成績などが飾られている掲示板から聞こえているような気がしてアキはそこを覗き込む。ふむ。いつもと変わらない掲示板・・・・・。

「アキ。遅い!」

「うぎゃあああああああ!」


 なんとアリスがあの地下室の絵から移動しこの掲示板の紙の中でアキに話しかけていた。

「うるさいぞ! お前が出て行くとき私もついていくといっただろうが・・・」

「アリスちゃん?アリスちゃんなの?どうしてそこにいるの!」

「私は元々絵だ。紙から紙への移動はわけないさ。」

「そういうものなの?」

「とにかくここを離れるぞ!この学校の一部に明かりがついていた、お前も見たろう。人がいる証拠。そして先のお前の叫び声が聞こえた可能性がある。」

「わ、わかった。」

 アキはすこし焦りを感じその場をはなれんと靴のまま美術室へと向かおうとする。そんなアキをアリスは呼び止める。

「まて。私もつれていけ。」




 紅葉高校第一教室棟一階の職員室。そこにいた男性教師が謎の叫び声に気が付いていた。

「なんだ今の声・・・・帰っていない生徒?そんなはずは・・・」

 アキの叫び声は60メートル以上はなれた職員室にも聞こえてしまっていた。残業をしていたメガネの男性教師は懐中電灯を握り職員室の扉を開ける。懐中電灯の明かりが職員室前から左右の廊下へと流れたその瞬間。そこで電灯の光が白い動くものを捕らえた。

「今のは・・・!?」

 それを見逃さなかったメガネの若々しい男性教師は職員室を出てしかたなく帰宅前の最後の見回りを開始した。




 「アキ。これか?色のなくなったという絵というのは。」

 二年昇降口を進み美術室への近道である中庭を通り第二教室棟奥から一つ手前の第二美術室に二人はやってきた。取られた色の部分を再び塗りつぶした部長のその絵をゆっくりと床におろし、アリスとともに観察をはじめていた。

「そう。私達美術部部長の絵。ここの中央の丸い部分から流れるように左下までが消えていたの。」

 アキはそう言うと一部が破られ欠けた学校新聞を口で咥え、家から持参した小さいライトをつけながら、例の部長の絵を再びよく観察する。咥えている学校新聞は掲示板に張られていたものを引きちぎってきた。アリスは新聞上でぱらぱら漫画のようにカクカクと動いている。

「間違いない。色を食うナイトメアの仕業だ。なくなった色は何色だったか覚えているか?」

「確か・・・青・・?だったかな?」

「ふむ。それではこの学校にほかに”目立った青いもの”はあるか?」

「青いもの?たくさんあると思うけど・・・・え~~と、しいていうなら私のクラスに青い花が飾られてたかな、でもそれがなんなの?」

「今すぐそこへ向かえ。理由は道中で話す。」


「う、うん。わかっ・・・」


 その時、美術室に誰かが駆け込む音がして振り返ると廊下に自身の持つライトよりも数倍の明かりが広がったのにアキは気づく。確認すると大きな明かりはさらに大きくなり、この美術室に向かっているようだった。

「誰か来たみたい!」

「アキがあんな大きな声を出すからだな。ひとまずここは無理に動かず待機だ。」

 でも懐中電灯が照らされる前に誰かが美術室に駆け込む音がしたはず。ライトは先生で間違いないとすると美術室に駆け込んだのは別の誰かってことに・・・?。

「アキ。光は隣の部屋に入ったようだぞ。そのままやり過ごしてアキのクラスへ急ごう。」

「う、うん。」

 まあいっか。気のせいということもあるしね。

 アリスの描かれた学校新聞を丸めて手で押しつぶさないように気をつけながら美術室をあとにする。次に向かうのはアキの在籍しているクラスである1年D組の教室。第二教室棟を抜け出すことに成功したアキはそのまま下ってきた階段をまっすぐ最上階である三階まで駆け上がる。道中は月明かりだけのほぼ真っ暗の状態。目が暗闇に慣れてきたと言ってもやはり見え辛く階段で足を躓きそうになる。

「この学校は大きな美術室が二つもあるわりには、何も描かれていない名前だけのキャンパスだらけだったな。」

「まあ・・・。紅葉高校の美術部員は学校にいる生徒の約4割を占めるの。だからキャンバスも多くなっちゃうのよ。」

「ふむ。では、何も描かれていない理由は?」

「紅葉高校の美術部に入るにはひとりひとつキャンバスを購入しなくてはならないの、まあ美術部に入るための最低条件みたいなものね。でも、キャンバスを買った後は、つまり入部した後は美術部の活動は自由参加。この学校は部活動に基本属していなくてはいけないルールがあるから、自分のしたいことがある人は自然と美術部に流れてくるってわけ。」

「ふむ。真剣にやっている本当の美術部員を冒涜するような行為、いや制度と言うべきか。」

「自由だといっても才能のある人には絵を描いて欲しい。特に私のバカな弟!」

「なるほどおじいさんの血を引く彼には絵を忘れて欲しくないと。そういうことだな?」

「まあ、そういうこと。そうこうしているうちについたよ。私のクラス1年D組の教室。」


 三階。のぼってきた階段は第一教室棟一番端の階段。階段を上がってきた場所から右側には入ったこともないまあまあ広い教室。そして左側には一年の教室が並ぶ。手前からA、B、C、D。ここだ。一年二年三年すべてAからGクラスまであり、三階が一年、二階が二年、一階が三年となっているため一年D組は三階廊下のほぼ中央に位置する。

 ゆっくり教室の中を覗く。教室の中は月明かりに照らされ夜にしては明るいと言えるほどだったが教室後ろの掃除用具入れの隣に飾られている青い花にはその掃除用具入れの影が花瓶と花にかかっているため重要な色についてはわからなかった。アキはアリスにも見せるように少し下側が丸まった学校新聞を広げ教室のほうにむける。

「やはりな。気配がするぞ。」

「え!?例のナイトメア?」

「花はどこだ?見えん電気をつけろ!」


「電気電気・・・」

カチッという音と同時に教室の明かりが照らされる。

「つけたよ。まぶしっ・・・。花の場所は確か後ろの掃除用具入れの横に・・・!」

 教室の明かりをつけるとずっと暗闇になれていた目に明かりがひどく染みる。アキは再び掃除用具入れ横の花瓶に注目すると教室の明かりをつけたはずなのにそこには未だに黒い影が残っていた。青い花の青がその黒くうねる影に少しづつ飲み込まれていっているその光景にアキは立ち尽くし静かに注目する。

「もしかして・・・あれが?」

 掃除用具入れほどの大きな黒い影から赤い二つの光点が中央で輝いたのが二人には見えた。

「アキ!ボケッとするな伏せろ!!」

「きゃああ!」

 まるで蛇が獲物に飛びつくように黒い頭を伸ばし牙を向けアキ顔のすぐ真上をを通過した影は黒板の端を噛み砕いた。おそらくアリスの呼びかけがなければ今頃この黒板のように影に砕かれていたことだろう。


「う、うそでしょ・・・?」

「アキ。ひとまず退散だ。」

 焦り恐怖を感じたアキに冷静な口調で話しかけるアリスの声がアキのマイナスの感情が噴出す穴なる箇所に栓をする。アキは立ち上がりその場所を走り去る。

あんまり見てもらえないんだね・・・・。泣


よし、今日は誰かに評価されるまで書いて書いて書きまくるか!?

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