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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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前世の夢を時々見てしまう。

 リア・アルナスは転生者である。地球という星で生まれ、その世界で生きていた少女。前世の記憶を持ったまま、異世界に転生するなどという事を前世のリア・アルナスは想像さえもしていなかっただろう。そんな非現実的な未来を想像出来るはずもない。

 想像さえもせずにこの世界にやってきて、だけれどもリア・アルナスはこの世界が前世からよく知っていた世界で良かったと思ってならない。そもそも、前世の記憶がなければ、リア・アルナスは《超越者》には決してなりえなかった。前世の記憶があったからこそ、彼女はこの世界におびえた。この世界がどういう世界か知っていたからこそだ。前世の記憶がなければ、現在のリア・アルナスは決して形作られる事がなかった。きっと、おそらく、《姿無き英雄》などという強者にはなりえなかった。ただの一介の少女としてこの世界で埋没していっただろう。

 前世の記憶があったからこそのリア・アルナスなのだ。

 リア・アルナスにとって、地球での記憶というのは特別である。それがなければきっとリア・アルナスは、今のリア・アルナスには決してならなかったから。この世界で生きている時間は、もう既に地球で生きていた時間に迫ってきている。もうそれなりに時間が経過してしまっていても、昔の記憶はよく思い出してしまう。

 リアは眠るときも《ユニークスキル》を行使し、自分の周りに結界を張っている。リア・アルナスはそこが見えないほどに、臆病である。どんな時でももしかしたら何かが起こるかもしれないという可能性を考え続けている。そしてそういう可能性を考え続けているからこそ、彼女は強者でありえた。

 そして今日も彼女は、結界の中でひっそりと眠りにつく。

 眠りについた中で、昔の夢を見る。時々リア・アルナスが見る昔の夢は、生まれる前の、地球で暮らしていた頃の記憶である。

 死ぬまでの数年間、リア・アルナスはひきこもりであった。VRMMOの《ホワイトガーデン》の廃人プレイヤー。何故ひきこもったかといえば、ただ単に色々上手くいかなかったからというだけである。前世からコミュ障であったリアは、外に出る事を嫌っていた。ただゲームの世界に浸り、ずっと、《ホワイトガーデン》の世界にずっと居た。現実での生活よりも、ゲームでの生活がメインとなっていた。そんな廃人のひきこもりである。

 外に出る事もなく、閉じられた世界で生きている。そしてその《ホワイトガーデン》の世界にずっと憧れていた。リアは現実での知り合いは全然いなかった。ほとんどひきこもっていたから。でも、《ホワイトガーデン》の世界での知り合いの方が多かった。

 その世界が全てで、ラウルもそ仲良くしていたうちの一人だ。《ホワイトガーデン》のトッププレイヤーの一人として生きていたリアの、《ホワイトガーデン》での知り合いは沢山いた。

 その仲間たちと一緒に過ごした日々は、リアにとっての大切な日々だった。ゲームは、いずれ終わってしまうものだからこそ、こんな楽しい日々もいつかはなくなるだろうとは考えていた。だけど、まさか、久しぶりに出かけた先で事故死するとは考えてもいなかった。

 リアは、オフ会というものに一度もいった事がなかった。何度も何度も誘われたけれども、一度も参加したことはなかった。外に出るのが、億劫だったからというのもあるが、もう少ししたら、後からと……そんな風にずるずる伸ばしていた。

 のんびりとしてゲームばかりしている日々。だけれども充実していた日々。

 ひたすらゲームをし続けていた。イベントをこなして、最前線にいた。ゲームをしていない時間なんて食事をとるか、トイレに行くか、そういう時ぐらいで。寧ろゲーム内にいなければ「どうした、珍しい」などという事を言われていたぐらいである。

 充実した日々。楽しかった日々。

 それが終わって、この世界に生まれ落ちた。

 車に轢かれたと思えば、気づけば、動かない身体で、見知らぬ場所にいた。

 何がなんだか分からなくて、恐ろしかった。現実だと受け入れてからもただ恐ろしかった。恐ろしくて仕方がなくて、そんな中で前世で転生ものの話を思い出した。ゲームをしていたプレイヤーがそういう世界に転生する物語。それを思い出して、確認してみたら《ホワイトガーデン》に類似した世界だと分かった。

 自分が知っている世界だという事に安堵したと同時に、恐ろしくなった。それは知っていたからこそ。《ホワイトガーデン》の世界がどれだけ恐ろしいのか。ゲームだったからこそ、あれだけ何も考えずに特攻していけた。死んでもやり直す事が出来たけれど、この世界はそうではないから。

 そしてこの世界でも、彼女は相変わらずコミュ障だけれども、心配してくれる義父や義姉がいて、昔から親しくしている幼馴染がいて、ドラゴンの友人がいて、……あとは前世の友人とも再会する事が出来た。

 


 前世の記憶を時々夢を見る。リア・アルナスはその頃の日々を懐かしいと思う。だけれども今の、生活を、リアは気に入っている。




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