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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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ネアラの憧れと覚悟

 ネアラ・リルアは、決断を迫られている。元リルア皇国の皇女にして、今は只のネアラ——……いや、《姿無き英雄》の義理の妹になっている時点で普通とは言えないだろうが。

 ネアラは、強くなる事を求めた。

 それは過去の出来事があるからだ。両親が亡くなり、居場所を失った。自分に力があれば、母親の事を守れたのではないか、そう最近ネアラがよく思うのは、リア・アルナスという義理の姉を見ているからだ。

 十代にして《超越者》になりえた少女。前例のない事を成し遂げたリアならば、もし、例えばネアラと同じような立場であったとしても自分の場所を勝ち取る事が出来ただろう。リアが自由でいられるのは、リアが強者であるからだ。強いからこそ自由でいられる。自分の意見を貫き通すことが出来る。

 ネアラは自分の守りたいものを守れるように、強くなりたいと願った。そしてそれはネアラが踏み出せば十分に到達できるほどにネアラには才能があった。

 でも、それは踏み出すという事は、他の物を置いていくというそういうことになるのだ。

 何かを手に入れるためには何かを捨てなければならない。世の中全てが手に入るほどに都合よくできているわけではない。

 ネアラはなろうと思ってもすぐに《超越者》になれるわけはない。だけれども、いずれなれるだけの才能を持ち合わせている。いつか、ネアラは《超越者》に至るだろう。このまま順調に強くなっていったのならば、でもそれは……。

 「……長い時を、生きていくっていう事」

 寿命が延び、種族の限界を超える。それは、人の枠からはみ出してしまうという事に他ならない。今、ともに過ごしている友人は、そうなればネアラよりもずっと早く老いていく。その死を見続けなければならなくなるという事なのだ。

 でもネアラにとって、強くなりたいという思いはだからといって諦められるものではない。

 (リア姉や、ソラ兄みたいに、強くなりたい……。強くなれたら、全てが守れる。いや、全ては無理かもしれないけれど、強くなれたらきっと……)

 強さに憧憬を、ネアラは抱いている。強くなれたらとずっと考えている。ネアラはその生い立ちから強さを求めていた。そしてリアに救われて、リアの義理の妹となって、圧倒的な強者である人を間近で見た。

 《姿無き英雄》は決して噂通りの人ではなかった。決して困っている人を助けようとする英雄ではなかった。決して……他人を思いやり、助けてくださる方ではない。

 現実では、《姿無き英雄》は、リア・アルナスは決してそういう存在ではない。決して皆が憧れるような性格はしていない。誰かが困っているのを放っておけないからと誰かを助けるようなそんな人でもない。強く堂々とした人では決してなくて、寧ろ、《臆病者》の称号を持っているぐらいだ。人を助ける理由も全て自分勝手。決して人のために行動を起こしはしない。

 だけど……、

 (……そんな人だろうとも、憧れてしまう)

 それでも、憧れてしまう。あの自由な生き様に。あの強さに。

 (私はあのようになりたい。あんな風に強くなりたい……。《超越者》になったら様々な人を置いていく事になる。友人たちも離れていくかもしれない。だけど……なりたい)

 悩んで、悩んで、人を置いていく事が嫌だと思って、友人たちと離れる事を怯えて、でもそれでも考えてみるとやっぱり強くなりたいとネアラは考える。その気持ちはネアラにとって紛れもない真実である。心の底から感じている思いだ。

 その思いは、真実で。だからこそ、ネアラは、《超越者》に至りたいと思う。

 (……友人たちを置いていったとしても私は強くなりたい。そう思うから、色々と不安はあるけれど、それでもなりたいから)

 自分は冷たい人間なのかもしれないともネアラは思う。ネアラは、友人たちと一緒においていく道よりも、自分が強くなる道を選ぼうとしている。周りを置いていったとしても、強くなり、生きていきたいと。

 (覚悟しなきゃとリア姉はいった。私にそれだけの覚悟があるか分からないけれど、それでもそうなりたいから。リア姉は私なら《超越者》になれるといったけど、本当になれるかもわからないけど、とりあえず私は《超越者》を目指す。強く、強くなるんだ。……そう、なりたいから)

 なりたいと、心の底から願うから自分の気持ちを偽らずに、進みたいとネアラは思った。だから、立ち止まらない。立ち止まって、あきらめてしまったら、自分が憧れているリアたちの弟子だと胸を張れる存在ではなくなってしまう。

 (《姿無き英雄》と《炎剣》の弟子だって胸を張って言える存在に私はなりたい)

 それを、ネアラは心から考えている。どうしようもなく思っているから、あきらめたりなんてしない。

 (……頑張る。頑張って、リア姉たちにみたいに強くなる)

 ネアラは改めて、それを決意するのであった。




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