もふもふは触りたくなる。
さて、今日はギルド会議の日である。ギルド会議で、リアはいつものようにのんびりとユニークスキルを行使しながら、その場にいた。相変わらず《竜雷》と《風音姫》と、ギルドマスター以外は気づいていない。
リア・アルナスは、じーっと、《兎姫》の事を見ている。まじまじと見ている。
(もふもふ、触りたい。触ったらばれるけど。獣人族の国行こうかな。それとも召喚獣作る? でも召喚獣は、なんかルーンがまだ作るなって言ってたし、私もそこまで欲しいわけでもないし。でも、もふもふは触りたい)
リアは、もふもふを触りたいと考えていた。
ちなみにこの世界、《召喚術》のスキルも学べば手に入る。前世の記憶で取得方法も分かっているのだが、他のスキルを磨く事の方が重要で、中々手を出していない。
リア、もふもふを触るためだけに獣人族の国に一度行ってみようかと考えだす。
(でもエルフの女王様みたいに勘が鋭い人いたら面倒だしなぁ。……《兎姫》の耳を軽く触って反応見て遊んでみる? でもばれそうだしなー。《兎姫》のもふもふいつか触りたい)
本人とはかかわりたくないけれど、耳だけ触りたいという我がままなリアであった。
リアがその場にいる事に気づいていない《炎槍のロス》はリアの事を見つけられない事が悔しくて仕方がないらしい。リアの事を知っているゲンとルノに話しかけている。ギルドマスターが《姿無き英雄》がこの場にいるといってから何度かギルド会議は行われたが、《炎槍のロス》はリアを見つける事は出来ず、それにイラついているようである。
「《姿無き英雄》はどこにいるんだ」
「参加はちゃんとしているわよ。貴方も……そのうち見つけられるんじゃないかしら。レベルが上がれば」
「……まぁ、無理な気もするがな。あいつレベルどんどん上げていっているから」
自分の話をさせているのがリアは嫌なのだが、此処で反応を示せばこの場にいることがばれる恐れもあるのでただ聞いているだけである。
(ゲンさんたちが余計な事言わなきゃいいんだけど。……《兎姫》も私が話題であることに興味深々なのか、耳がぴくぴく動いている。触りたくなる)
リア。じーっと、見ている。
(獣人の知り合いいたら触るんだけど。ネアラが獣人族だったら触り放題だったのに)
ネアラは義妹であるし、リアの事も知っているので、ともしそうであったならなどと馬鹿な事をリアは考えている。
というか、ギルド会議に参加する度にもふもふ触りたいと《兎姫》の耳と尻尾は凝視されていたりする。そんなこと《兎姫》はもちろん気づいていない。
「レベル高位者であるのならばレベルは上がりにくいだろう。ならば追いつけるはずだろう」
「いや、《姿無き英雄》はちょっと……いや、大分おかしいから上がりにくいはずなのに、上げるのよ」
ルノはリアの事を思い起こしながらそんなことを言う。
(今もこの場にいるだろうけど、リアちゃんって本当考えてみればおかしいのよね。普通レベルはどんどん上がりにくくなって、それに比例して上がらない事が普通になっていく。《超越者》になれないものが多いのに、《超越者》に至ってからも、無茶ばかりして経験値をどんどん積んでいる。私も強くなるために努力はしているつもりだけど、リアちゃんほどは出来ていないもの)
ひたすらに経験値をどんどん積んでいる。リアはそういう人間である。毎日毎日、寝ている間の事も考えれば、一秒も無駄にせずにMPを消費し続けている。そして自分より圧倒的に上な《ホワイトドラゴン》と戦ったり、大陸を横断するのに船を使わずに横断したりと、そういう無茶をし続けているからこそのレベルの上がり具合である。
「そこまで……なのか?」
「ええ。そこまでの人物なのよ」
「そうだな。だから追いつけるかは怪しい。追いつけても見つけられるかもわからない」
ゲンとルノの言葉に、《炎槍のロス》は悔しそうな顔をしている。《竜雷》と《風音姫》が言うという事はそれだけの人物だと《炎槍のロス》にもわかっているのだ。
とはいえ、
(自分の事話されるのなんかやだなー)
と、会話の話題の主は嫌そうな顔を浮かべている。しかし耳ではその会話を聞いていても、目は《兎姫》のもふもふを見ている。
「そういえば……《炎槍》は、学園の闘技大会に来賓として呼ばれているんだよな?」
「……ああ、そうだが、それが?」
「いや、俺達の弟子というか、面倒を見ている者もいるんだよ」
ゲン、リアが通っている事を思ったが、ごまかすためにティアルク・ルミアネスの話題を出した。
三学期にリアの通う学園では闘技大会と呼ばれるものが行われる。互いの強さを競い合う大会といえばいいだろうか、そういうものである。そこで良い成績を残せば将来も安定したりもする。色々なところからスカウト要員が来たりもする。《炎槍》は来賓として呼ばれていた。
ちなみに全校生徒が参加しなければならない大規模な大会である。リアはもう初日で適当に負ける気満々である大会だ。
(あー、《炎槍》がくるのか。ばれないだろうけど、ばれないように細心の注意をしなきゃ)
リアは会話を聞きながらそんな事を思うのであった。
その後、普通にギルド会議がなされて終わった。ちなみにリアはほぼ、視線は《兎姫》のもふもふに向けていた。




