闇ギルドVS爆炎の騎士 ①
さて、闇ギルド所属であった少女ナキエルを《爆炎の騎士》ラウルは引き取った。しかし、それは闇ギルドに了承を得ての事ではなく、自らの子飼いであった少女を巡って、闇ギルドは行動を開始するのであった。
(みたいな感じのモノローグがつきそうだよね。しかしあれだね、ラウルはこれで生きられるかなー?)
闇夜に紛れて闇ギルド所属のギルドメンバーたちは動いている。それをリア・アルナスは面白そうな顔をしてみている。
《姿無き英雄》と呼ばれる絶対的強者にとって、自分の存在を悟りもしない彼らを殺す事なんて容易である。リアはやろうと思えば、彼らを一瞬で殺す事ぐらい出来る。
だけど、する気はない。
(ラウルがこの世界で生きていくのに十分かどうか、それを確認するために利用させてもらおうか。それでラウルが闇ギルドをつぶせるならよしだし、潰せないなら私が終わってから潰せばいいもんね)
憐れ、闇ギルドのメンバーはどちらにせよ潰される事がリアの中では決定しているらしかった。
リアにとって、正直ナキエルがどうなろうともどうでもいい。だから、ナキエルが殺されようが、裏切りものとして拷問されようが……ちょっと気分が悪くなるのでいつもなら助けるが、今回はラウルがこの世界で生きていけるか確認するという重要な事があるため助ける気は一切なかった。
(ラウルは本人に自覚があろうがなかろうが、この世界に《爆炎の騎士》の姿で来た時点で《超越者》であり、この世界で良い意味でも悪い意味でも注目される存在になってしまった。だから、たった一人の少女さえ守れないっていうなら、この世界で生きていくのは難しい。だって《超越者》なんて騒動に巻き込まれていくものだもの。ラウルが大切にした人が狙われ、人質にされる事だって十分にありえるもの。そこで、殺せませんとか、守れませんとかそれじゃあ駄目だもん)
そう、自覚があろうがなかろうが、ラウルは《超越者》としてこの世界に落ちてきてしまった。この世界で生きていかなければならなくなってしまった。だからこそ、この世界で《超越者》として、強者として生きていく覚悟が必要なのだ。
(ラウルに人を殺す覚悟は持てるかな。殺さずになんて甘い事を言っていたらこちらが殺されてしまうような世界で、駄目だって自覚してくれればいいんだけど)
ひっそりとその場に一人とどまりながらリアはじっと、闇ギルドのメンバーが消えていった方を見る。
ギルドマスターが貸したラウルとナキエルの住まう家がある場所を見つめる。
(別に近づいてくる気配って、これソラトじゃん。何やってんのあいつ)
気配を探っていたらソラトの気配を知覚し、リアはそちらに近づいた。
「ソラト」
「あ、やっぱリアちゃん居た」
「何してるの。闇ギルド居るから、ばれると厄介」
「ばれないようにするって。なんかあったら逃げるし。それよりさー、ギルドマスターに聞いたんだけど、あの男ってちぐはぐなんだって? リアちゃんが、気にする相手でリアちゃんの特別な相手がそういうのって気になってさ。そもそも昔の知り合いっていうけどいつの?」
ソラト、会ってもいないラウルの事をリアが気にしている存在だからと気になり過ぎである。
「……ずっと、昔」
「ずっと昔って? 俺リアちゃんが男の事気にしているとかやだー!!」
「煩い。只の友人。生まれる前」
「生まれる前? リアちゃん生まれる前の記憶とかあるの!? 流石リアちゃん、他と違う。大好き!」
「はいはい」
さらっと前世の事を言ってもソラトは態度を変える事もなく寧ろキラキラした目でリアを見ている。
「でもなんでその友人そんなちぐはぐなの?」
「……ラウルは現実ではない仮想世界であの姿だった。死んでもよみがえり、何度でも繰り返せる遊びの世界の姿がアレ」
「んー? ええと、リアちゃんの前の世界では仮想世界とかがあって、そこで仮の姿で遊べたってこと? なにそれ、すげー」
ソラトは普段からバカっぽいが、頭の回転は速いのでリアの少ない説明でもなんとなく理解したらしい。
「だから、現実の厳しさを知らない。人を殺すもしたことない。レベル高いだけ」
「それってすぐ死にそうじゃない?」
「ん。だから、闇ギルドの襲撃は放置。これ、対処出来て、生きていける覚悟が出来たら……。私は、ラウルと友達にまたなる」
「その時は俺にも会わせてよ」
「駄目。ソラト、絶対面倒な事する」
「リアちゃんの手を煩わせる事はしないって。リアちゃんに気にされているのはむかつくけど」
ソラトは相変わらずにこにこと笑っている。
対してリアは無表情のまま答えているが、リアのそんな表情を見てもソラトはにこにこしている。
そんなこんな話し込んでいたら、大きな音がした。どうやら戦闘が始まったらしい。
「始まったみたいだけど、リアちゃんどうするの?」
「ん。見る。ソラトは帰れば?」
「んー。ま、そうだね。俺が居たらリアちゃん見守るのも大変でしょう? 明日も学校だし一旦帰るよ。リアちゃんも遅くならないようにね」
「ん」
ソラトはリアから聞きたい事が聞けたから満足したのか、リアに促されるままに帰っていった。そしてリアはまた《何人もその存在を知りえない》を行使して音のした方に向かうのであった。




