色々目をつけられていますね。
ティアルク・ルミアネスは、学園の中で目立つ存在である。
それはなぜかと問われれば、彼が中途半端に色々隠しているからというのが一番の理由であろう。彼は情報を隠している。実力を偽るのであればそれ相応の態度を見せればいいというのに実力は隠さないという、よくわからない状況を作っている。だからこそ、周りから疑いの目で見られるのである。
現状、ティアルク・ルミアネスが何者か知っているのはリア・アルナス、ソラト・マネリ、後はこの学園の学園長ぐらいだろうか。
《竜雷》と《風音姫》の弟子。そして世間で知られている中では最年少の高ランクといった認識だろうか。
尤も最年少の高ランクは《姿無き英雄》リア・アルナスなのだが、全てを隠している彼女の事を認識しているものはまずいない。次の高ランクである《炎剣》ソラト・マネリについてもリア同様に隠しているため誰も認識していないというのが現状である。
(あ、学園長が頭抱えている)
その日、リア・アルナスはいつも通り《何人もその姿を知りえない》を行使してのんびりと過ごしていた。最近、エマリス・カルトに絡まれる事も多くなり、それにうんざりしていたリアはうろうろしながら面白い情報を探していた。
その中で見つけたのは、頭を抱えている学園長である。学園長は人間で、レベルは百未満だが、人間にしてはレベルが高い方だろう。《超越者》にはぎりぎり至っていないが、十分に強者に分類される存在だ。
年は四十代ほどだろうか。引きしまった体を持つ青髪の男性だ。
「……生徒会と、レクリア様の護衛と、アーガンクル公爵家からの問い合わせか」
そう、問い合わせが来ていたのだ。リアは学園長が見ている書類を覗き込む。そこに書かれていたのはティアルク・ルミアネスについての問いあわせである。
少しでも調べれば彼はボロが出るほどの情報操作しかしていないのだ。それに加えて疑われるような真似を平気でやっている。故に彼は何者であるのかと問い合わせが来るのも当然である。
(うわー、まだ入学して一年も経ってないのにもう既にこんなにボロボロとか。絶対に三年間隠し通すとか無理だって。いや、でもハーレム主人公が目立つだけ目立ってくれればこちらを気にすることもないだろうし私としてはラッキーかな)
そんなことを考えているリアは堂々と学園長室の中にいる。
もちろん、学園長は気づくこともなく頭を抱えている。
(学園長もかわいそうに。ハーレム主人公なんて騒動の種が居るってだけで大変そう。あとは今はおとなしいけど過去あり主人公っぽいのもいるし、私としては三年間退屈しなそうでいいけど、学園長は大変そうだ)
そんなことを呑気に考えながらも、絶対に上に立つ立場とかなりたくないなーという気分にリアはなる。
上に立つ者は、それ相応の苦労をするものである。何よりも目立つ。誰よりも注目され、誰よりも知られてしまう。
そんな恐怖しか感じないものにリアは立ちたくはなかった。
(学園長もハーレム主人公の事は知っているとはいえ、《竜雷》と《風音姫》の弟子の存在を隠しているのに下手に喋っていいのか悩んでいるみたいだし。本当大変。というか、ハーレム主人公はこんな風に学園長に迷惑かけている自覚あるのかな? 多分ないよね。あったらあんな能天気にのほほんとしていられないだろうし。ハーレム主人公は学園生活を満喫しているつもりみたいだけど、学園長大変だよ? 普通の生徒として学園に通いたいっていうのならもっと平凡に擬態すればいいのに。とりあえずゲンさんとルノさんに軽く言っておくかなー)
ティアルク・ルミアネスの事を考えながら、学園長を見ているリア。相変わらず学園長はリアの存在には気づかない。
(というかこれ、今年一年そもそも持つかな。持たない気がするな。折角ゲンさんとルノさんが気をまわして普通の生徒として学園に通わせてもらっているっていうのにさ。それにしても普通の生活をしてみたいからとか、学園生活を経験したいからって理由で学園に入るのがまずわからないかな。私みたいに資格が欲しいとか目的もないみたいだし。この学園の生徒って将来のために必死になっている人がほとんどで、成績一位とか取ると将来有利なんだよね。それなのにハーレム主人公っていう存在が気まぐれに居るせいで一位の座を取れない生徒達もかわいそうに。目的もなく学園に通われてもはた迷惑だよね)
学園の成績優秀者は優遇されるものなのだ。成績がトップクラスというだけでも勧誘は来る。
(……ハーレム主人公はギルド所属で、卒業後もギルドで働くつもりだろうけど。テストとかでも一位とっていたし、多分勧誘来るでしょ。ややこしい事になりそうな予感しか第三者の私の目からみてもしないのに、よく厄介ごとに自分から突っ込んでいくなぁ。成績をそれなりに抑えておけば勧誘も何もないだろうに)
相変わらずリアは学園長を観察しながら思考している。
そんなこんなじっと見つめて考え事をしていれば、こんこんっと学園長室がノックされた。入ってきたのは、学園長の秘書である。
「学園長様、また、お手紙が」
「またか……おいておいてくれ」
今度はなんだとでもいう風に眉を潜めていった学園長は、秘書が手紙を置いて去った後にその手紙の中身を見る。リアも後ろからそれを覗き込む。
「……獣王・サガラからの手紙だと」
(獣人の国の現トップさんかぁ。あそこの獣王も会ったことはないけれど中々強いって噂なんだよね。一度拝んでみたいかも。獣人の国っていった事ないし行ってみたいな。でもエルフの女王様の時みたいにばれるかな)
狼狽える学園長とは対照的にリアは普段通りである。
そして読み進める。盗み見る事に全くの抵抗をリアは感じていない。
(エマリス・カルトが獣王の関係者っていうのは確定か。それにしてもハーレム主人公は流石。周りに侍らせている女子生徒たちが揃って権力者とか、なんなんだろう。ハーレム主人公故にそうなるの? それにしても学園でも外でも注目され過ぎだなぁ)
手紙に書かれているのはエマリス・カルトが獣王の関係者だという事が書かれている手紙と、そのエマリス・カルトの傍に居るティアルク・ルミアネスに対する問い合わせだった。
その手紙を盗み見たリアは、学園長は大変そうだなと考えながら相変わらずマイペースに呑気なのだった。




