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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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出会いについて語ろうか 

 「ソラ兄は……、リア姉と何時であったの?」

 リアの家。

 そこにはいつも通り、リアの姿はない。

 代わりにそこにいるのは、リアの義妹であるネアラと、当然のようにその場にいるソラトである。

 この部屋は確かにリア・アルナスの家だ。しかし、ここに彼女が居る事は驚くほどに少ない。いや、居たとしてもネアラ達が気づいていないだけという可能性ももちろん高いわけだが。

 ネアラもリアの義妹になってからそれなりに時間が経っているので、もうリアがそういう性格であることを理解していて、リアが居ないものを当たり前として受け止め、自由に暮らしている。

 「んー。俺とリアちゃんの出会い?」

 「うん。リア姉と幼馴染って言っていたでしょう? というか、リア姉って、昔からああなの?」

 リアは自分の過去を語らない。いや、過去だけではなくそもそも口数が多くない。義妹という立場に居ながらネアラはリアの事を知っているとは言えない。基本的にリアがこそこそと隠れて生活していて、同じ家で生活している割に会話を交わしていないというのももちろんあるのだが、たまたま一緒に居たとしてもリアは基本的に何も語らない。

 ネアラとしてみれば、《姿無き英雄》と呼ばれる最強の一角である義理の姉ともっと仲良くしたいと思っていたし、強くなりたいと誓った身として純粋に憧れを抱いていた。

 (……まぁ、リア姉は世間が言う《姿無き英雄》ほどかっこよくはないけれど。そもそも性別が違うし。世間一般的に《姿無き英雄》って男って噂の方が大きいし。姿見せずに色々起こしててかっこいいって言われているけどリア姉は怯えているだけだし。……なんであんなに強いのにあれだけ心配性なんだろう)

 リアの事を考えながらネアラは何とも言えない気持ちになる。

 リアは臆病だ。驚くほどにおびえという感情をもっている。沢山の事を心配している。

 だけれどただ臆病なだけではなく、”誰にも負けない強さがあれば死なない”というそういう結論に至っている戦闘狂でもある。正直ネアラはリアは変わっていると思う。

 そもそも《超越者》に至っている存在は基本的に自信にあふれている。その身の強さを持ってこの世界を生き、歴史を刻んできた生きる英雄。そんな存在でありながら、堂々としていないリアは変わっている。

 「そうか! 俺とリアちゃんのなれ初めを聞きたいか!」

 「……うん」

 ソラトのテンションの高さに呆れた顔を見せながらネアラは頷く。

 「俺とリアちゃんは、八歳の時に出会ったのだ!」

 「もっと昔からの知り合いかと思っていた」

 ソラトがいった言葉に、ネアラは驚いた顔を見せた。

 「俺だってもっと昔からリアちゃんの事しっておきたかったよ! リアちゃんにもっと前から会えていたら、俺はリアちゃんと一緒に強くなろうとしたし、リアちゃんとこんなにレベルも開かなかったのに!!」

 「……ええと、リア姉って八歳の時点で既にあんなのなの?」

 「そう! リアちゃんは超凄いからな。リアちゃんは元々孤児院にいたんだって。それでなんか外で魔物を狩っていたのをギルドマスターが見つけて引き取ったって言ってたけど」

 「はい?」

 ソラトはリアの自慢話をするようにリアの話を嬉しそうに語る。が、言われた内容が正直ネアラには理解出来ない。意味が分からない。何を言っているのだとそんな風に感じてしまうネアラである。

 (リア姉八歳。孤児院に居た。そして魔物を狩って……いや、おかしい。孤児ってそういうものじゃないでしょう。八歳で外で魔物を狩っていたって……え?)

 常識的に考えてリアの昔はおかしい。子供が外に出て魔物を狩っていたなどと、信じられない話である。が、ソラトの目を見る限りそれは本当なのだろうとネアラは理解して何とも言えない気分になる。

 「びっくりするよな。でも実際本当みたいだ。第一俺、はじめて会った時リアちゃんにこてんぱにやられたし」

 「……そうなの?」

 「そう。俺あの当時ちょっと他の子供達より強くてさ、調子に乗ってたら、こう、一瞬で意識を刈られたというか」

 ソラトはそういいながら懐かしそうに目を細めている。

 「ギルドマスターが俺の父さんと友人で、それでリアちゃんと引き合わされたんだけど最初リアちゃんと戦えって言われた時、小っちゃい子相手に楽勝だって思ってたのにさ。情けなく一撃っていうな」

 「……リア姉は、その頃からリア姉だったんだね」

 「そうだな。というか、リアちゃんは本当昔から全然変わらないから」

 ソラトの目から見てみてリア・アルナスという存在は本当に昔から変わらない。

 「でも孤児でそれだけ強いって……」

 「その辺は俺も詳しく知らないけど、なんかリアちゃん昔からあんな感じで強くなりたいって孤児院抜け出して色々やってたらしいからな。あとリアちゃんが居た孤児院って結構酷い所だったみたいで、リアちゃんが引き取られた後、職員入れ替えとか色々あったみたいだけどな」

 軽い調子で言っているが、育った孤児院の環境が悪いというのは孤児にとって悲惨な事である。

 (そんな状況で、強くなることをめざし、危険なのに魔物を狩りにいっていた……?)

 ネアラは話を聞いて唖然としている。リアが変わっている事ぐらい承知だったが、そんなに幼い頃からそうだったとはと……。

 「……リア姉ってやっぱりおかしいね。でもあんなのだから、《超越者》にあの若さでなれたんだね」

 「そうだなー。リアちゃんは凄いんだ。俺もリアちゃんに出会う前からもっと頑張ってたら今頃《超越者》だったかもな」

 「……ソラ兄はそのうちなれるでしょ」

 「当たり前。ならなきゃリアちゃんがずっとこの世界で長い間生き続けるのに俺が傍に居れないってことになるし」

 キリッとした顔をして断言したソラトを見ながら、ネアラは《超越者》やそれに至れるほどの強者というのは変な人しかいないななどと考えていたのであった。





 

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