課外実習3
リア・アルナスが単独行動を開始しているころ、ソラトはといえばおとなしく班のメンバーに付き従っていた。リアの班のメンバーたちとは違い、ソラトの班のメンバーはソラトをいくら置いていきたくてもおいていかないようにしている良識人であった。
普通ならそこに感謝するべきなのだが、ソラトとしてはおいていってもらったほうが動きやすかったのでがっかりしていた。本音を言うとソラトはリアがつれてきた謎の男--ラウルに会いたかった。
ここにギルドのメンバーとして参加しているらしい存在に接触したかった。
ソラトとリアはそれなりに昔からの知り合いである。しかし、ソラトはリアの古い知り合いだというラウルのことを知らない。いつであったのかも分からない。
そもそもだ、レベル150だというのに色々とちぐはぐであるらしいという噂は聞いており、ソラトとしてみればラウルはわけのわからない存在である。ソラトはあまり人の事を気にしないリアが気にしている存在について、知りたかった。
(リアちゃんが気にしている男って、なんかやだ。リアちゃんがわざわざギルドマスターに頼むような男……)
ソラトは不機嫌そうな表情である。
ソラトと同じ班のメンバーたちは、いつもイラッとしてしまうような笑みを浮かべているのに、不機嫌そうなソラトになんともいえない表情である。普段はなよなよとした風に見せているとはいえ、《炎剣》と呼ばれている存在である。メンバーはどこか寒気を感じて、それを気のせいだと頭を振る。
(あー、考えても仕方がないんだろうけど、一度あってみたかったんだけど)
会う機会がないとは思えないが、はやめにリアの旧知の中らしい存在にあっておきたかったソラトである。
(課外実習も今日で終わりだしな。はぁ)
ため息を吐くと、ソラトは不機嫌そうな表情をしまった。
いつものへらへらした顔に戻ったソラトに班のメンバーはどこか安堵したように息を吐く。
「次はどこにいくんですかね?」
ソラトがそう口にしたとき、大きな音が鳴った。何事かと、彼らが視線を向ければ、土煙が遠くでまっていた。
さて、場所は変わる。
「ふふふ、そんなのでいいのかしら? もっと、もっと本気を出しなさい。あなたの本気はそんなものではないでしょう?」
「なんなんだ! お前は!」
全身黒装束の不気味な格好をした女が居る。その女は、ティアルク・ルミアネスに向かって話しかけている。
ティアルク・ルミアネスの他の班のメンバー達は、総じて気絶してしまっている。今、意識があるのはティアルク・ルミアネスと女だけである。
「私は強いものと戦うのがすきなの。ねぇ、もっと本気を見せなさい。貴方は強いのでしょう?」
「何を言っている……」
「知っているわよ。その年でギルドランクAなんてものを所持しているのでしょう? ねぇ、もっと私に見せて」
ふふふと笑った女は、女の言葉が確かであるのならばだが、強いものを狙ってここにやってきたようだ。ティアルク・ルミアネスの事も把握しているらしい。
「闇の刃を生み出しましょう(Wollen wir Klingen der Dunkelheit erzeugen)
それは光をきりさくもの(Es schneidet Licht)
深い深い闇の力は、全てを切り裂く(Die Macht der tiefen tiefen Dunkelheit schneidet alle)
《闇刃》(Dunkelheitsklinge)」
女が詠唱を口ずさむ。現れるのは、黒い丸い塊。そこから、何かがあふれ出す。目に見えない速さで表れたそれは、気絶しているティアルクの班のメンバー達を狙っていた。
「《光の壁》(Wand des Lichtes)!」
あわてたように守るために魔法を行使するティアルク。
《闇刃》はそれではじかれる。女は楽しそうに笑っている。
「ほら、本気を出さないと、後ろの子たちが死ぬわよ?」
「お前……っ!」
班のメンバー達に手を出されると知ったティアルク・ルミアネスは怒りをあらわにして女をにらみつける。
二人の戦闘の場。そこに介入できるものは居ない――というわけではない。
(戦闘狂の女ねぇ……流石ハーレム体質って思うべきなの? これ、絶対あとからほれられるパターンな気がするんだけど。それにしてもこの女、中々強いね。レベルは七十二かぁ。年は私より四つ上。うん、強いね。ソラトに迫るぐらいじゃない? ギルドには所属していないみたいね。《闇ギルド所属》って書かれているけれど……んー、この年でそういうのに所属しているってことは、そこ育ちかな? これでハーレム主人公が勝ったらたぶんハーレム所属案件でしょ。でも負ける可能性も高いんだよねー。その場合は、んー、人が死ぬのも目覚め悪いから、それだけ手出しして、この危険な子はラウルにでも引き渡せばいいかな? レベル150だし、戦い方がちぐはぐでもなんとかなるでしょう)
リア、命を賭けた戦いのようなものを見ながらも相変わらずのマイペースである。《空中歩行》で宙に浮いたままのんびりとその様子を見ている。
それから決着がついたのはすぐだった。




