課外実習 2
リアはジューヤ・ノリス達に冷たくあしらわれながらも特に何も感じてはいない。
馬鹿にされる事よりも、リアにとってみれば実力を知られる事の方が一番の問題であった。隠れてのんびりと生きたいのがリアの願望であり、学園生活に対するリアの感じている意味は卒業して薬師の資格を取るというそれだけである。
しかし、そんな事情知るわけもないエマリス・カルト以外のメンバーはいら立ちを感じているようである。
強者であるかどうかというのは、何処までも重要な事で、特に強さを求める学園の中で弱者の立場は弱い。
「……リア・アルナスが居ると邪魔だ」
「足手まといだからしばらく……」
「死ななければ……」
「それならば……」
そして夜中に先輩四人がそのような会話をしていたのも、徹夜を決めていたリアはちゃんと把握していた。
大物を狩って実力を示したいとか考えているであろう彼らは、リアを足手まといとしか見ていない。この課外実習において、弱者と強者を一緒の班にするのには意味があるのだ。それでもやっていけるだけの力があるのか。単体ではそれほど力を発揮できなくてもリーダーとしての能力が高ければそれはそれで評価されるものである。
学園内で弱いとされているとはいえ、少なからず学園に入るだけの実力があるのだからこういう場合は足手まといとしてみるよりも利用する方が断然良い。
リアは実力を隠しているとはいえ、《調合》スキルはあるし、隠蔽中でもそういう役には立てる。
(んー、おいていく気かな? それはそれで私はやりやすいから別にいいんだけど。正直こうして皆で動くよりも単体行動の方が私好きだしなぁ。んー、その場合私の評価は下がらないし)
リア、聞き耳を立てながら寝たふりをしている。
(不自然ではないようにネアラとか見つけて保護してもらったってことにすればいいだろうし。私を放っておいてくれるなら、自由に色々観察できるしそっちの方がやっぱいいよね)
リア、おいていかれる会議を聞きながらそんなことを考える。
エマリス・カルトはぐっすり眠っている。リアのいるテントが開かれる。見下ろされているのを感じながらリアは呑気である。
「……呑気なものだな、本当に何故このような生徒がまだ学園にいるのか」
「こういうものは学園の評価を下げる。さっさとやめてもらうためにも……」
などと口にしている彼らの声は聞こえているが、リアは起きようとも思わない。
彼らは風属性魔法でリアを浮かすと、移動させるのである。ただ死なれても責任が生じるからか最低限死なないように周りに結界を張るぐらいはやったようだが、随分離れた場所までおいていかれたのをリアは感じた。
「仮にも学園の生徒なのだから、あと一日ぐらい生き延びるだろう」
とそんな言葉を言い残して去っていったあとリアはむくりと起き上がった。
(テントの場所はわかるけど、平然と戻ってもアレだし。というか、普通に帰ったら色々ボロが出るしなぁ。とりあえずは……大分離れたところにおいてくれているみたいだし、アレだね、驚いて起きて誰かを探してさまよったとかそんな感じの設定にしてうろうろしようかな?)
リア、相変わらずマイペースである。
リアはここからすぐ去ってももし様子を見に来られた時にあれなので寝転がる。上を見上げる。星が輝いている。それを見ながらリアはスキルを行使する。自分の身体を浮かせたりしながら、魔力を消費する。それだけでもレベルを上げるための経験値になるからだ。
リアはのんびりと空を見上げる事も好きである。
魔物のいる森に一人おいていかれたというのにのんびりしている。
そうしていれば、見知った魔力が近づいてくるのをリアは感じた。
「……リア姉、何しているの?」
それは、リアの義妹にあたるネアラである。ネアラはギルド側で課外授業に参加していた。何かあった時の要員であるネアラは森の中をうろうろしながらリアを見つけて驚いている。
「……星見てる」
「いや、そういうことじゃないから。なんで一人でいるの? 班でっていってなかった?」
「私、足手まとい、ここ、放置」
「は?」
「だから、しばらくしたら……うろうろする」
ネアラ、リアの言葉に固まる。
「いや、リア姉が足手まといなら皆足手まといだよ。というか、リア姉を足手まといって……。おいていかれたって、妾……私、報告しなければならないんだけど」
「……報告、なしでいい」
「よくない! 仕事だからちゃんとやらなきゃ」
「報告したら……、霊榠山に一人で放り込む」
「やめて! 目が本気で怖い」
「本気」
じーっと、リアは寝ころんだまま慌てるネアラの事を見ている。
ネアラは頭を抱えたくなった。
(……仕事だからちゃんと報告したいのに。リア姉絶対に本気だし……。というか、本当リア姉の事を足手まといって、《姿無き英雄》相手にそんなこと言うとか……)
はぁと溜息を吐きながら色々考えたネアラは結局こう答える。
「……じゃあ、報告しない」
「ん。それでいい」
「リア姉、どうするの?」
「ユニークスキル、使う。観察して、遊ぶ」
「……そっか。まぁ、リア姉なら大丈夫だね。というか、リア姉がこれなら、ソラ兄も同じ目にあってる可能性、ある?」
「ん、あるね」
「うわぁあ……それはちょっと」
ネアラはまた頭を抱えるが、リアはそんなこと気にせずに、しばらくしてユニークスキルを使って去っていくのであった。
(ああ、もう、リア姉を足手まといっていって自由にするとか……。リア姉だからまだよかったけれど……。でも他の人ならアレだし、注意すべきチームって報告はいるけれどその場合はリア姉の事は……どうしよう)
ネアラもはぁとため息を吐きながら、考えても仕方がないとその場を後にした。




