課外実習の班とか。
「よろしくな、アルナス」
さて、リアの目の前で笑顔を浮かべているのが誰であるかというとティアルク・ルミアネスのハーレムメンバーの一員ともいえる少女、エマリス・カルトである。
犬の獣人である彼女も、あのハーレム主人公の親しい友人なのだから何かしら秘密があるのではないかとリアは睨んでいる。もちろん、それがあっているかどうかは今の所定かではないが。
(この国の大貴族の娘に、エルフの女王様の親戚って考えるとカルトが一般人とは思えない。あとハーレム主人公の親友のアキラ・サガランも)
リア、よろしくなと友好的なエマリス・カルトに対して頷いてじっと見つめるだけである。相変わらずコミュニケーションをとる気はない。
ちなみに、あとの班のメンバーは上級生が組み込まれるようになっている。
リアは実際は《ギルド最高ランク》所持者の、《超越者》であり、《姿無き英雄》であるがそんな事実学園では知られておらず、リアは無口な落ちこぼれと思われている。バランスを取るためにもクラスでも強者であるエマリス・カルトと同じ班なのであろう。
じっとリアに見つめられているエマリス・カルトは少し困っていた。基本的に明るく、積極的に誰にでも話しかけに行くエマリス。彼女は人と仲良くなることが得意である。
が、そんなエマリスにとってみてもリアは仲良くなることが出来ない難しい存在である。
少しでも人とかかわる気があるなら友好的に話しかければ仲良くなる事もできるだろうが、このリア・アルナスときたら全然仲良くする気がない。
ぼっちがデフォルトであり、ぼっちであることも悲観していなければ人とかかわらずにのんびりとすることを好んでいる。
「アルナスは実習は不安だったりしないか」
ふるふると首を振る。
「魔物がいるんだが」
頷く。
「上級生が話しやすければいいな」
頷く。
「……えーと」
じっと見つめる。
「なんで、見ているんだ」
動かない。
「何か変な所でもあるか」
ふるふると首を振る。
「じゃあ、なんで」
ふるふると首を振る。
「……えーと」
リア、全然口を開かない。親しいものたちの前以外ではいつでもどこでもこんな感じのリアである。
喋る気は全くないが、心の中ではものすごくしゃべっていたりもする。そんなリアである。
しかしリアが実際どんな人間であるかも知らないエマリス・カルトはどうコミュニケーションをとっていけばいいのかわからないとその尻尾をしゅんとしている。
リアはその尻尾を見ている。
(もふもふ。触りたい。どさくさに紛れて触れるかな。仲良くはなりたくないけど、もふもふは触りたい)
リア、我儘である。エマリス・カルトと仲良くなろうとは思っていないが、その尻尾は触りたいらしい。
リアが尻尾を狙っているなどと欠片も考えていないであろうエマリス・カルトは困っている。多分、リアは尻尾を触らせれば一言ぐらいは喋るかもしれないが、そんなリアの感情をエマリスが知るはずもない。
(つまらなそうな実習。でもとりあえずの目標はもふもふを触ることにしよう)
なんか勝手に目標を立てているが、やっぱりエマリスが知るはずもない。
これから上級生の先輩が来ることになっているが、それまでこの雰囲気なのかとエマリスは尻尾をしゅんとさせている。
「ア、アルナス」
視線を移す。
「アルナスは戦闘が得意ではないよな」
頷く。
「じゃあ、何かあったら助けてやるから」
頷く。
「え、えーと」
やっぱりさっぱり会話が続かない。
エマリスがどうしようかなと困っている中で同じチームの先輩たちがやってくる。
学年から二人ずつ。計六人の班が課外実習の班である。
二年生の先輩は男二人。三年生の先輩は男女で一人ずつという内訳であった。
「君たちが同じ班か。私がリーダーのジューヤ・ノリスだ」
そういったのは三学年の赤髪の女性の台詞である。彼女がリーダーであるらしい。リア、彼女の言葉にも視線を向けるだけである。そして相変わらずの無表情。
「……リア・アルナスとエマリス・カルトだな。ステータスを見せてもらっていいか」
二人のステータスを見る。リアのステータスを見て眉をひそめたのは、リアのステータスがこの学園全体でいうと低いからだろう。
他の先輩三人もリアを厳しい目で見たのは同様であるが、リアは全然動じない。怯えもみせずに相変わらずの無表情。
それが益々癪に障ったのだろう、「足手まといになるなよ」といって彼らは去って行った。
残された二人。
「……アルナス、大丈夫か」
頷く。
「大丈夫、私が守るから」
頷く。
そんな会話(?)を交わすのだった。
ちなみにリアは、
(守ってもらわなくても問題は全然ないけど、まぁ、ステータス偽装しているし頷いておこうかなー)
と呑気だった。