見つかって、会話をする。
リア・アルナスは今日も今日とて、こそこそと生きていた。
もうすぐ課外実習という学園においての重要行事があるというのに、リアにとっては心躍るものではない。他の生徒たちにとっては、重要でも、リアにとっては特にどうでもいい行事。
リアは《姿無き英雄》と呼ばれる《超越者》にとってみれば、殺し合いが日常的なものだ。自分から危険に飛び込んでいき、強さを貪欲に求めた存在。そんな存在にとって、そういう行事に対して大きな関心もないのである。
(うーん、課外実習かぁ。森に行って魔物を狩るだけとか面白くないなぁ。どうせなら霊榠山であるならルーンに会いに行けたのにさ)
霊榠山は間違っても一般人が入れるような場所ではない。第一、ギルドランクSSの《炎剣》が頂上までついていくのが無理というぐらいの場所である。普通に生徒たちの課外実習の場所に選ばれるわけがない。そんなことしたら確実に死人が出る。
ちなみにこんなこと考えながらもリアは《何人もその存在を知りえない》を行使しながらも、のんびりと魔物狩りをしている。
(霊榠山なら何気ない態度で班から離脱して、ルーンの元へいって遊んで戻るとかそんな感じできたんだけどなー)
課外実習は班での活動になる。正直リアにとって一人で行動したいという思いの方がある。
(あ)
のんびりと魔物を狩っていれば、見知った気配を感じてリアは少しはっとする。
視線の先には、《風音姫》ルノ・フィナンシェリが居た。
自分よりもレベルが高く、《何人もその存在を知りえない》を行使してきても気づいて行動を起こしてくる存在。そんな存在に遭遇したという事実はリアにとってちょっと嫌な事である。
急いで離脱したい気持ちもあるが、下手にスキルを使って逃げればここにいた事はすぐに悟られてしまう。どうか、このまま気づかずに通り過ぎてくれればいいがと思ったのだけれども。
「リアちゃん、またこそこそしているの?」
「………」
「いるのでしょう?」
ルノはそういって、知らぬふりをし続けたいリアに向かって近づき、その体に手を触れる。
「あ、やっぱり」
「……こんにちは、ルノさん」
触れられて姿を現したリアは不機嫌そうな表情をする。尤も仮面をしているため、その表情はルノには見えないが。
「リアちゃん、何しているの?」
「……いつも通り、魔物狩ってただけです」
「ふふ、魔物狩りを自然にしているとか、本当にリアちゃんは面白いわね」
「強くなりたいなら、当然」
リアの行動の源なんて、如何に強くなれるかどうかである。強くなる事を求めるが故に、危険な場所にも突っ込んでいく。ルノはリアを見ながら笑う。
「リアちゃんは本当に、どんどん強くなるね」
「当然」
「……ティアルクは、学校でどう? リアちゃんに負けた後変わった?」
「んー」
リアはその問いに少し考える仕草をする。
(ハーレム主人公が私に負けて変わったかどうかか……。そんなにずっと観察しているわけではないからわからないけれど、正直言ってよくわからないよね。いつも通りにしか見えないし、相変わらず学園で友人たちと楽しそうにしているし)
リアは学園で誰かと仲良くする事に意味を特に感じていない。友人はルーンと、ラウルぐらいしかいないし。幼馴染のソラトとはそれなりに交流があるものの、遊ぶとかより強くなるために行動をするのがリアである。
いつもスキルを行使し、レベルを上げるための努力を欠かさないリアからしてみれば正直な話、ティアルク・ルミアネスは遊んでいるだけにしか見えない。
「変わってない思います」
「そう……。レベルが伸び悩んでいたようだから、リアちゃんと戦った事がきっかけになればいいと思っていたのだけど」
「レベル、70ぐらいなら頑張れば伸びます。伸びないっていうのはそれ相応の無茶をしていないってだけです」
「……それはリアちゃんだけよ? レベルが50超えたらレベルは上がりにくくなるものよ? というか、リアちゃんはどうやってレベルを上げているの? いつの間にか私も追いつかれそうだし」
「スキル、ずっと使う。あとは、暇な時、ずっと戦う」
「ずっとって、今も?」
「ん。《空中歩行》は使ってる。あとは、私は寝てる時も、基本スキル使っているから」
「……それ、魔力切れならないかしら? 常に魔力が満タンではないみたいになっていると思うのだけど」
「最初は一晩使ってたら途中で魔力枯渇になってました、けど。今はもうなりません」
「……それ、なくなった時はどうしていたの?」
「MP回復薬を飲みます。それの、繰り返しです」
リアのやっていることなんて本当にそれだけである。ずっとスキルを使い、暇なときはいつも戦っている。それの繰り返し。
魔力がなくなれば回復薬を飲み、使い続けている。
そもそも寝ている間にスキルを使用するというのも神経を使う事なのだが、リアはさらっとやっていたりもする。魔力枯渇状態は危険状態でもあるし、皆滅多な事ではそんな状態にまではもっていかない。そんな限界までMPを使う事はない。
が、そこはリアである。
幼い頃から無茶しかしていない。その無茶が普通になっている。
そんなわけで今のリアが居る。
「……そう。私もやってみようかしら。レベルが伸び悩んでいるのよ」
「ん。いいと思います」
「リアちゃん、まだ魔物狩る? 一緒に行かない?」
「一人で、行きたいです」
「そう。じゃあ、またね」
「はい」
そしてリア・アルナスは《風音姫》と別れるのだった。




