課外実習の準備で忙しい生徒会をのぞいてみる。
もうすぐ学園では課外実習というものが行われる。この行事は学園において重要なものである。
アルフィルド学園は、この世界で生きていくための術を学ぶ学園。強くあろうとする生徒たちが集まる学園。故に優秀で、自ら高見にいたろうとしている生徒たちばかりが溢れている。
一般的な評価として、レベルの低い生徒を偽装しているリアだって学外の者たちから見れば学園に入学するだけの実力はある存在とみられるものである。
この学園で優秀だと噂されるものたちは、後に世界に名をあげるものも多くいる。そして、そんな存在になることにあこがれて、学園の生徒たちは励んでいる。
――――すぐ隣に、自分たちと同じように勉強している《姿無き英雄》の存在には誰も気づきはしない。もうすでに生徒たちにとっては十分だといわれる《超越者》に至りながら、もっと強さを求めている存在。それが、リア・アルナスである。
さて、リア・アルナスは現在、生徒会を観察して遊んでいた。
「今回、ギルドからは十名ほどの高位~中位のランク者がやってくる。失礼がないようにしなければならない。何か起こるとは思えないが、今回は不安要素もあるからな」
筋肉会長はまじめな顔をして生徒会のメンバーに言い放っている。ちなみに高位~中位とは大体C~A、高くてもSランクぐらいしか課外実習における見回りの仕事にはつかない。SS、SSS、Xランクは基本やらない。
仕事としてはいないが、生徒として《姿無き英雄》と《炎剣》が存在しているとしったらギルドの依頼を受けている冒険者たちは自分は必要ないのではないかとも考えそうだ。
「不安要素とは? 何かあるのかい?」
能天気に言い放つのは生徒会メンバーの一人、ジルベルト・アシュイエである。
「……ティアルク・ルミアネスのことですね、マルス」
副会長であるアイディーンがそう告げれば、マルスはその通りだとでもいう風にうなずく。しかし、他三名はティアルク・ルミアネスを何故不安要素にするのかわからないといった様子である。
リアはその会話を聞きながら、生徒会室の外で《空中歩行》のスキルで浮いている。魔法を使って盗み聞きをしながら笑っているのは中々良い性格をしている。
(やっぱり生徒会では筋肉会長と氷の副会長が別格だね。ハーレム主人公って一目見ただけでも違和感感じてしまうぐらいに色々とあれだよね。ある程度強い人ならきっと誰でも違和感には感じるもんね。しかし筋肉会長以外に無能なのかな? まだハーレム主人公のことわかってないのかって思うよ。少し)
つぎはぎだらけで少しでも叩けば埃が出てくるようなそんな存在がティアルク・ルミアネスである。かまをかけてもそれに騙されそうである。
しかし生徒会長はまだ学生であるし、調査をするのにも限界があるのだろう。
(諜報員かって疑ってたしなー。あんなわかりやすい諜報員がいたらすぐクビになるのは目にみえているよ)
諜報員とはプロである。潜入し、調査する、そんなプロ。相手に一切悟らせることがなく、その場になじむものがやるのが当然である。寧ろ敵さんにバレバレな諜報員とか使えなさすぎる。
「ティアルク・ルミアネスってあのハーレム野郎だよな? 何かあるのか?」
「………警戒する必要、あるのですか?」
クノ・ミズトランとファン・ポトーナは不思議そうに問いかけた。まったくもってわかっていない。
「あいつは不思議な奴だ。何かを隠しているのは確定している。しかしそれが何かわからない。悪い奴ではないと思うのだが……」
「マルスがそういうのならそうでしょう。私も個人的に調べてみてアレが学園に害をなすとは思えません。しかし、何か騒動を起こすかもしれないとは感じられました。学園に入学してから半年という間にこの学園で一躍有名になっている生徒ですから」
マルスの言葉にアイディーンが同意して告げる。その認識は正しいといえるだろう。ティアルク・ルミアネスは転生者であるリアが主人公っぽいと思うほどに、そういう属性を持ち合わせている。
そもそもティアルク・ルミアネスがレベルが高い理由をゲンとルミから聞いているリアはより一層ティアルク・ルミアネスは騒動の元だと思っている。自分より圧倒的な魔物に襲われ、そしてその魔物に偶然がいくつも重なり合って勝利した。そんな経験をしており、なおかつ現状周りの親しいものたちが何かしら権力を持っていたりわけあり風であるというのだから何か起こらないとは逆に思えない。
(っていうか、筋肉会長たちはレクリア・ミントスアがエルフの女王様の血縁だってことももしかしたら知らないかな? 一番可能性がありそうなのは、ミントスアかアーガンクル関係かな? エルフの女王様の血縁と、この国の大貴族の娘ってだけで色んなフラグが立つからなぁ。でも私が知らないだけで他も何かしら抱えてそうだしな。あれだけ要人とか重要人物を周りにはべらせれるハーレム主人公って半端ない)
改めてティアルク・ルミアネスの主人公具合に驚くリアである。
「アイディーンがそういうならそうなのだろう。それにしてもあの少年がか。何かが起こる可能性はどのくらいあるんだい?」
ジルベルトの言葉に、アイディーンは一瞬だけ彼に視線を向けて面倒そうにため息を吐く。
「どのくらいなどわかるはずがないでしょう。あくまで、起こるかもという可能性の話です。私たちは彼を知りません。彼が何かを隠していることはわかりますが、それが何かを知らなければ結局どうも動きようがないのです」
「警戒する、だけはできるがな。実のところあいつが何者なのか、何を隠しているのかがわからない状況ではギルドの方々に告げるべきかも悩み所だ。あくまで俺とアイディーンが見て違和感を感じるというだけだからな」
「マルス、監視を一人でもつけておけば何かあったとき対処できませんか?」
「それもそうだな。あとは――」
課外実習の準備や話し合いは大体、マルスとアイディーンで完結する。他の生徒会が無能というわけではないが、圧倒的に生徒会と副会長の力が強いのである。
(ハーレム主人公は生徒会に目をつけられてて流石だな。それにしても筋肉会長と氷の副会長はなんだかんだで仲良いなぁ)
話を聞き終えたリアはそのまま、誰にも気づかれることなくその場を後にする。




